短編小説読書メモ9本目~宮部みゆき『三鬼 三島屋変調百物語四之続』から第一話
今回は、短編というよりも中篇。
宮部みゆきさんの『百物語』シリーズの4巻から第一話『迷いの旅籠』。
死んでしまった人にもう一度会いたい、という誰もが一度は抱くだろう願いが、今回の物語ーーー聞き手おちかのいる現実パートと、語り手おつぎの語る怪談パート双方をつなぐ通奏低音になっている。
江戸から流れてきた絵師によって、死者がこの世に戻ってくる「迷いの旅籠」と化した離れ家と、その結末。
死んだ人の時間は止まっても、生きている側の時間は流れていく。死んだ人がかりに本当に戻ってきたとしても、この世に居場所はあるのだろうか。
あかり祭りや、巨大な灯籠に仕立てられた家、旅籠に集う死者たちなど、情景描写が映像として浮かび上がってくるかのようだった。
やはり宮部さんは話の運びかたが上手い。
ストーリーテリングの技は学びとりたいところ。