松本市旅行記。ブックカフェのスコーンうなぎライ麦パン珈琲
前記事参照で、まぁなんせ松本にいった。
松本のブックホテルに、街のツアーがあったため参加した。
街の歴史等を教えてくれるらしい。この温泉街には、室町時代に遡る歴史がある。武士が傷を癒やした時期を経て、その後色街として栄えた文化があったようだ。最盛期の人が大量に歩く様子を想像するが、今の退廃的な姿から想像するのは難しい。
だが、過去の景色を思い馳せるのは楽しい。どんな風景だったのか、ここで生まれたらどんな人生だったのか。そのようなことを考えるのは楽しいのだ。
この地には、寄り合い温泉みたいな機能がある。共同浴場と呼ばれていた。銭湯などとは違い、組合に入った人だけが入れる風呂。さらには、温泉。初めて見た。こういった文化もいずれなくなっていくのだろうか?守り続けていくべきなのかも含めて難しいところ。
チェックアウト後は、松本市街に出た。
まず目指したのは、友人に教えてもらったブックカフェ「栞日」
ここがべらぼうに素敵だった。都内ではありえない、商売っ気のない広い空間。都内のこの手の店は、そこそこゆとりのある都内の独身男女あたりをターゲットにしたであろう買えと恣意的なディスプレイ(高級文具とか、妙に高いキャンドルとか)に少し疲れてしまうが、片やこちらは素敵なもののみで埋め尽くされている。営業成り立つ?と時折心配になることも。余計なお世話太郎。
あと、スコーンがアホほど美味しい。なんなんだ。パイともデニッシュパンとも、クッキーとも違う、絶妙なサクサクザクザクした層は。結局のところプレーンが最強だったのだが、全種類買った。その他の焼き菓子も、小麦粉に溺れそうになっていなければ、買いたかった。しかしながら、現地で空間をディップに食べる方がしあわせ度が高いに決まっているんだ。また来る一択だ!と未練の糸を断ち切った。
その後は、松本駅方面のうなぎ屋を予約している。一人で前日予約してまでのうなぎだ。我ながら、結構な本気度が感じられる。なぜかうなぎの口になってしまって前日からロックオンうなぎ。
へと向かう途中に気になるパン屋さんが。
松本にはパン屋さんが多い。水がうまいからだろうか。たまたまだろうか。パン屋ハンターのわたしはどこに行ってもパン屋を調べるが、パン屋をよく見かける気がした。
キニナルが、スコーンを買ってしまった。初日にはクッキーも買っている。許容小麦粉量を超えているし、うなぎの予約に間に合うか不安になってきた。と通り過ぎた。
のだが、どうしても気になって店まで戻ってきた。スーツケースを引いているのに!
そうしたらここが大当たりご当選である。
我が嗅覚!ナイス!
何が大当たりかというと、まず安い。そして、こだわりの石窯パンがすごい。国産ライ麦を使用しているらしい。国産ライ麦100%のパンなんてまず拝んだことがない。うえに160円って意味がわからない。
狭いお店に敷き詰められたパンと、おじさんの手書きの文字。
近隣の人であろうお客さんが、「よかった!あった!」といいながら最後の食パンを手にとった。
こういうとき、買う予定はなかった食パンが急に欲しくなって悔やむものだ。
嗚呼、私のほうが先に店にいたのに。
焼きたてのライ麦ブレッドなど数点を買って店主に話しかける。
「一人だからもうたいへん。忙しい(笑)」とのこと。
値上げしよう。ECもやるんだ。インスタもどうです?そんなおせっかいな気持ちになるが、このままでいてほしいという思いもあるし、正直何かできるわけでもないし、このまま地域の人に愛されていくんだろう。
うなぎ様はというと、スタート時間も指定の二部制予約のみ。ふらりと訪れた人が断られていたので、予約をしておいてよかった。どでかいワインセラーがあるので、ワインとうなぎのペアリング推しなのだろうか。郷に行っては、だ。うなぎに合う白ワインを注文する。
うなぎ。
はい王。王です。
香ばしいサクッと感と、ふわふわの身。ご飯にかかるタレの量も絶妙だ。ベチョってないし、全部の米にほどよくタレの味がする。なんならタレご飯でいいのではと思う私にとって、この塩梅は重要である。
話をうなぎに戻そう。
うなぎがブリンブリンだったので、泣きながら食べた。白ワインが旨さを引き立てる。魚やもんな。そうか。ワインは米には合わぬが、うなには合う。
しかし一つ難点が。隣にいたおじさん3人組。
勝手な推察だが、代議士のおじさんと接待の企業2人なんじゃないかな。代議士のおじさんが、定期的に日本の未来を憂う発言を繰り返し、今のロシア情勢とヨーロッパや、過去の日本の景気などの講釈をたれている。
向かいの2人はつまらなそうにふむふむ聞いていて、話題を展開することはない。
代議士おじさんは、憂うばかりだけど、お前何したんかい。という気持ちになって不快感がすごかった。こういう人が失われた30年を形成したんやないかい。憂い続けて話は全く盛り上がらないまま、この3人は去っていった。憂いながら食べるうなぎは美味しいのだろうか。よくわからない説教をされながら食べるうなぎは美味しくないだろう。美味しいものは楽しい話をしながら食べてほしい。
そんなこんなで、朝から食い倒れ。街中に素敵なお店が多く驚いた。もういっちょ楽しみたいと思い、電車を1本ずらしてウロウロと。
気になっていた喫茶店に。
松本は喫茶文化でもあるらしい。古き美しい建物の魅力がそのまま残る、文化の香りがする店だ。コーヒーはめちゃうまかったが、さすがに腹パンで飲みきれなかった。胃のゆとりがあるときに再訪したい。
もう無理だと思っていたのに、武家屋敷通りみたいなところで、地元のクラフトビールがドラフトで飲める的な店があったので、頼んでしまった。だって天気もいいんだもん。歴史の街並みで、晴天に、ビール。最高やないか。最高シチュエーション、せっかく感。飲みきれないけれど。おなかが空きたい。
まだうろつきたい気持ちは残るが、ここは退却を選択した。どうせ、カフェくらいしか行くところがなく、飲み物はもういらない。大人の時間の潰し方は、飲むか食うしかないのだ。近所のイオン(っていうかジャスコ)で丸一日潰せていたあの頃は一体何をどうしていたんだろう。あの頃よりも買えるものも増えているのに時間は潰れない。しかし時間が経つのは早く、もう一年の1/3が過ぎようとしている。どういう科学?誰の陰謀?こわいよう。こわいよね。
帰宅後に食べたパンはこれまたべらぼうに美味しかった。
ふあふあでずっしりで麦の味がする。都心の高いだけで思い出に残らないパンと4象限で対極に位置する素晴らしいパン。究極のパンかも知れない。高くて美味しいものは東京では簡単に出会えるからね。
食べてばっかりじゃん。最高じゃん。文化的な香りがする街だな、と思ったのにも関わらず、ほとんどが食のはなし。最高な松本。
栞日で買った本はサラッと読み切れて、清々しい読後感だった。さらさらと流れていく言葉たち。松本の清流のようだね。