【感想】ドラマ『ライオンの隠れ家』
『ライオンの隠れ家』を見た。
全11話にかけて、2024年の秋ドラマでは間違いなくベスト級のドラマであると確信させられた作品でありました。
物語の概要としましては、市役所で働く兄の小森洸人と自閉スペクトラム症の弟、美路人が平穏な生活を送り暮らしている中で、突然現れた‘‘ライオン’’と名乗る少年から物語が始まります。
ライオンくんという男の子の正体を描きつつ、兄弟として家族としての在り方を問う作品となっています。
本作の肝となるテーマとしては、弟の抱える自閉スペクトラム症やライオンくんのネグレクトによる問題といった社会問題を焦点に当てており、あらゆる視点から考察することが出来る構造となっています。
『ライオンの隠れ家』という作品では、脚本はオリジナルであり、物語の展開や小森兄弟、ライオンくんたちの会話のやり取りはとても自然体であり、世界観からは温かみが感じられます。
様々な要素が組み合わさり、馴染むことによって、本質的な作品の良さが伝わるものがあり感動を覚えるものがありました。
ドラマ内でも、アート展でみっくんが絵を描くことになって、マイク音でみっくんがパニックになったところをすかさずライオンくんが心を落ち着かせる為にゴーグルを彼に渡してサポートしたりと、小さなライオンくんも洸人やみっくんとの暮らしの中で自然な思いやりと優しさを持つ子へと成長している姿にも感動を覚えました。
『ライオンの隠れ家』の3話でのみっくんが自分の好きな動物の絵を楽しく描き、動物に‘‘命の色’’を宿し描くシーンはじーんとさせられるものがあり、自分の好きを貫くみっくんの才能と姿勢には学ぶべきことがたくさんありました。
彼が自分の世界で輝ける居場所を見つけて、こうして活動しているところは胸を打たれる思いでした。
洸人が見ず知らずのライオンと出会って彼を引き取るまでの長い期間には、不安から深い家族愛へと変わった言葉を‘‘疲れるな’’の一言で集約させた表現に痺れるものがありましたし、今なお感銘を受けました。
ライオンくんの母である愛生が偽装死を実行する為に作った嘘の供述や隠匿行為などは犯罪に値するだろうが、フィクションに限らず、これは実際の社会通念でも警察や行政機関に頼っても、恐らく出来ることは限られているだろうし、国が全身全霊をかけて被害者を守れるだろうかという疑問があり、複雑な事情を抱えているということも考えさせられました。
橘愛生が夫からのDVを逃れる為に偽装死を選んだことを知り色々考えながら、被害者である愛生やライオンくんが何故、苦しい思いを抱え逃げて隠れ、肩身の狭い生活をしなければいけないのかと感じましたし、事の発端は、加害者である橘省吾が元凶だし省吾の存在が憎く感じたりもしました。
愛生が偽装死を選ばざるを得なかった本当の理由、警察や児童相談所にも助けが呼べないほどのDV被害により追い詰められていたのだろうかと思いつつ、洸人の言う‘‘ほかにももっと選択肢はあっただろう’’はその通りだと思いました。
物語はあらゆる過程に移りながら、ようやく平穏な日常を取り戻し、洸人やみっくん、ライオンたちが公園で楽しくパンを食べる姿は微笑ましいし、多幸感が溢れるシーンは今でも記憶しています。
だが、ある日、洸人がみっくんを迎えに来ることなく、連絡を返さないところから急に不安を感じさせられました。
洸人が思う、本当の幸せというのは何かを考えさせられたし、その答えを自らが見つけ出した。
『ライオンの隠れ家』での最終回は、小森兄弟、ライオン くんが、それぞれ歩むべき道を見つけて自立していく姿に心を打たれラストは思わず泣いてしまいました。
2024年の秋ドラマの中で一番好きなドラマ、それは『ライオンの隠れ家』だとそう実感させられました。