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【象徴としての天狗(山エッセイ)】
相模原市の緑区と八王子市の境にある小仏城山。
正式な山の名前は城山で、日本中にある地名の城山と同じようにかつては山城があった。甲州街道の要所として関所が置かれていたこともあり、令和となった今では電波塔と茶屋とたくさんのベンチが置かれている。小仏城山を象徴するものと言えば天狗だ。
小仏城山には木彫りの天狗が置かれていて、天狗は小仏城山を訪れるハイカーたちを暖かく(?)見守っていた。
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しかし、天狗は長年に渡り風雨にさらされ続けていた。天狗の神通力を持ってしても自然の力には抗えないのか、雨による侵食を受け続けた天狗はついに2021年に倒壊してしまった。
![](https://assets.st-note.com/img/1653974970322-CM55lttLPm.jpg?width=1200)
登山を始めてから、小仏城山は何度も何度も訪れた。陣場山から高尾までの縦走路の間にあるので、ちょうと休憩をするのに都合が良い。
天狗を見るために登ったことは一度もない。景色を見ようとすると自然と目につく位置にいるので、小仏城山を通る度に「お、今日もあるな」くらいに思うだけだった。
ところが天狗は消えてしまった。
当たり前にあるはずだったものが、ない。
いつ行っても山頂にあって「今日もあるな」とただ通り過ぎるだけなのに、天狗がいなくなったと知った日は妙な悲しみを感じたものだった。
木彫りの天狗はただそこにいてくれるだけで良かった。山道の途中で通り過ぎる時に、天狗の姿を見つけるだけで安心感があった。象徴として存在する偉大さとでも言えば良いのだろうか。まるで大仏みたいだ。ただそこにいるだけで安心感を人に与える存在。
それが消えてしまった。
先日、陣場山から高尾山まで歩いていた時に「そうか、もう天狗はいないのか」と、思い出して、また一抹の寂しさを感じた。
ところが山頂には新たな天狗の姿があった。
木彫りの天狗は新しく、より凛々しく厳しい顔つきとなって帰っていた。
天狗を見に小仏城山を登ることはこれからもきっとなくて、山を通り過ぎる途中で「お、今日もあるな」と思って眺めるだけ。
それでも天狗は小仏城山を象徴する存在だから、ただそこに置かれているだけで嬉しい。
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