『夕暮れ 【前編】』
普段の日常が特別な日常に変化していく心を彩る物語
目次
1章 「空」
2章 「観葉植物」
3章−1 「川合」
3章−2 「川合」
4章−1 「向日葵」
4章−2 「向日葵」
5章
いきなりの告白に僕の思考と身体が一時停止した。
「それから私は変われたんだと思う。やってみる前から諦めるんじゃなくて、やってみたらできるかもしれない。私も佐助くんみたいになれるかもしれない。って」
僕は何も返答することができず、好きだとかそういった感情とはまた別の不思議な感情に襲われていた。
「だから、ありがとう。って伝えたくて」
青彩の目はまっすぐに僕を見つめ、語りかけてくる。僕はその目と合わせる勇気がない。青彩からの勇気を振り絞った告白に僕は応えられなかった。そして、いっときの感情に任せて告白をしようとしていた自分を惨めに感じた。
「そっか、初めて知ったよ」
初対面同士が狭い空間で2人きりで何も会話が生まれないような気まずい雰囲気が流れていた。
「この後、どうしよっか?」
僕は話を逸らしてしまった。すると、
「私、今日は帰るね」
「わかった」
青彩の言葉に頷くことしかできない。青彩は振り返ることなく、どこかへ行ってしまった。僕はその背中を見つめることしかできなかった。
街は夕陽でオレンジ色に染めあげられて、最後に見た青彩の背中はなぜか俯いて悲しそうだった。
僕だけが暮れてしまうオレンジの世界に取り残されてしまった。
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