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指先一つを僅かばかり動かす仕事でもよい、何かをしている人は幸福である。

実地に呼吸を飲み込め


何かしていなければならぬ。そして、今やっていることに一心にならねばならぬ。仕事に全心身を打ち込んで、それを完成さすことに愉快を持つようにならねばならぬ。

苦しい時、くしゃくしゃする時でも、何か、とにかく、一生懸命に仕事をしているならば、知らず知らず時間が経って、その難関を知らず知らず通過することができるものである。ジッとしていて考えてばかりいるのあ、かえって、その苦悩をますばかりでなんにもならない。

どんな平凡なこと、小さいこと、たとえば、指先一つを僅かばかり動かす仕事でもよい、何かをしている人は幸福である。

それから、物事はすべて、たたみの上の水練ではダメであって、実地に一々あたって見なければ、真に呼吸は飲み込めるものではない。せずにおって、いくら道理に通じ、論説にたくみであっても、

なんにもなるものではない。実地に行うにあたって、かならず、何か霊的にも得るところ、悟るところが出来てくるのである。だから、絶えず、どんな小さい仕事をしていても、それを務めて重大視し霊的に意義づけて、何か、そこに発見発明するところがなくてはならぬ。せずにいては、決して、真に会得されるものではない。

まず為せよ。ぶっつかれよ。つぎに、省み考えよ。そして、よりよき方法、よりよき道を悟れよ。

かくて、為す、省みる、悟る、という三段階がつぎつぎにくり返されて、人間は無限に向上してゆくのである。

このことを、より多く、より短時間に積みかさねて行って、はじめて、普通人よりもすぐれ、抜きん出ることができるのである。

大抵の人は、同一事を悟るまでに、長い時間と無駄な手数とを常に要しているから始末が悪いのである。だから、幾度も幾度もおなじ愚をくり変えして悔いず、悟らず、より早き方法のあることに、いつまでも気づかないのである。

『信仰覚書』第五巻 出口日出麿著

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