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世一の勉強部屋

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noteは本当に勉強になる。 こんな勉強部屋を少し前までわたしは知らなかった。 少しずつ増やしてゆきます。スキしてくれた人は覚悟して。 本当はキチンとお知らせとお礼をすべきところ…
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2022年9月の記事一覧

【詩】往生際

初夏に作った梅シロップを 1cmだけ残したままにしてるのは 瓶を洗うのが面倒だからじゃなくてですね ただなんかここにきて 飲み切るのが惜しくなったというか 一粒ずつ梅をあらって 布巾でちまちま拭いていた あの手間を思い出すと 一番とっておきの日に飲み切りたくなりまして 往生際がわるいでしょう 清水の舞台的なところから 飛び降りるようなことは 決してできない性分でしょう もう今日は 夏の最後のひと絞りって感じの雲が浮かんでた そうかもうこれで おしまいなんだなあ

【小説】同乗者の実体

 タケは見かけによらず怖がり屋だった。  一緒に行った花火大会の帰り道で、脇から飛び出してきた猫に野太い悲鳴を上げた。つい笑ってしまった。猫だよ、と伝えると、タケは恥ずかしそうに、こういう暗い道が駄目なんだよ、と言った。  意外に可愛いな、と思い、その一件で別れることはなかったけれど、結局お付き合いは長く続かなかった。  そんな彼とSNSを通じて再会したのは、大学三年の夏だった。 「味は最高の店なんだけど、薄気味悪い場所にあるんだよ。しかも夜しかやってなくて、一人で行くの