腰部疾患の下肢、臀部症状を考えていくにあたって①
こんにちは。
最近、下肢の症状や臀部の症状に悩まされているのはこの私です。
毎回シリーズ性にしようと思ってもすぐに違うことを書きたくなって一貫性がないなって思っているので今回は何回かに渡って下肢症状や臀部痛について記事を書こうと思います。
(色々意見をいただきたいですね。)
まずは神経から理解しよう。
神経の解剖を理解できていなければ、この後の下肢や臀部の症状について考えていけないので簡単に解剖をおさらいしていきましょう。
中枢神経と末梢神経
画像のように神経は、主に中枢と末梢神経という括りに分かれています。
まず『中枢神経』は、頭部にある脳や延髄などを含めるものと、L1より近位にある脊柱管内を通っている『脊髄』という組織を含めて中枢神経と言います。
もう一つは、『末梢神経』です。
末梢神経は、先ほどの脊髄から細く細かく枝分かれした神経のことを指します。
皆さんがイメージがつくのはこんな図ではないでしょうか。
中央の太そうな神経の束から両サイドに細長い神経たちが分かれて、時には束になって分かれて出ているのがわかります。
先ほどの『脊髄』からL1より遠位になると、細い神経の束がいくつも存在し脊柱管の中を走行していきます。これを馬の尻尾のように細い線維が束になっている姿と似ているので『馬尾神経』と言います。
脊柱管内にあるから『中枢神経』と間違えそうになりますが、この『馬尾神経』は末梢神経にあたります。
あと、脳(中枢)から枝分かれする『脳神経』と言った神経も末梢神経に含まれます。
テーマが腰部疾患における下肢や臀部痛の話に繋げていきたいので
腰椎部でこの末梢神経がどうなっているかを見ていきましょう!
神経孔から出てくるんだけど、、、
腰椎部は基本的に馬尾神経が分かれてしていって各腰椎(上の腰椎と下の腰椎からなる)の神経孔というところから神経根が脊柱管外(椎間孔外)へ出ていきます。
L3/4の椎間孔であれば、L3の神経根が出てきます。
しかしながら(後述しますが、)ヘルニアってL3/4ならL4の神経根が圧迫される!って習いますよね。
解剖を理解しないまま、こう習うので結構理解できていない人が多い気がします。
なぜ、このような認識になるのか解剖図を見ていきましょう。
こちらの図ではL4を取り除いて、馬尾神経部分を露出しています。
こう見ると、L4/5の椎間板の高さから馬尾神経の横から、細い神経が出てきているのがわかるでしょうか?
これはL5神経根の線維です。
よって、L4/5の椎間板の高さですでにL5の神経が分かれていることになります。
つまり、ヘルニアの出てくる位置によってはL4/5の高さでもL5神経根を圧迫する可能性があることがわかります。
これを踏まえて、椎間板ヘルニアの病態について理解を深めましょう。
腰椎椎間板ヘルニアの種類
非常にわかりずらい模式図で恐縮です。
これは、椎体を上からのぞいている図と思ってください。
基本的にヘルニアの出方には上の4つのTypeに分かれるとされています。
・正中型:文字通り椎間板が脊柱管に対してまっすぐ後方に突出や傍流するType
・後外側型:椎間板が真後ろというよりはやや外側寄りに突出or傍流するType
・椎間孔(内)外側型:椎間孔付近に突出or傍流するType
・椎間孔(外)外側型:椎間穴の外側にヘルニアが突出or傍流するType
この中でも、後外側型が70%と非常に大きい割合を占めています。
脊柱管内、椎間孔近くの神経の位置関係をおさらい
L4/5の高さの椎間板を輪切ってみた模式図です。
馬尾神経は中央に行くほど遠位の神経線維が走行しています。
上の図からも分かるとおり、椎間孔より外のレベルでは、近位のL4の神経根の線維が通過しています。
よって、ヘルニアが突出・膨隆する位置によっては圧迫される神経が異なることが分かると思います。
神経根症状・馬尾症状
基本的に馬尾神経が圧迫された場合には、『両下肢の痺れ』が主訴として出てくるパターンが多いとされている。
神経根の圧迫で出てくる症状は、神経根の支配領域の感覚低下や、筋力低下、反射の減弱や消失が起こると言われています。
各神経根の担当している感覚、筋力、反射の一覧です。
この辺りは頭に叩き込んで臨床で検査をするように意識しています。
脊柱管狭窄症について
次は脊柱管狭窄症の病態についておさらいしていきます。
原因は様々ですが、男性の場合であれば成長期に腰椎分離症があり、その後年齢を重ねた時に腹筋群の筋力低下などが起こってくると腰椎の滑り症(分離滑り症と言います)が起きて、結果的に脊柱管を狭窄させてしまったり、女性であれば筋力低下や組織の変性によって滑り症が起こります。(いわゆる腰椎滑り症による脊柱管狭窄症が起こる)
また、狭義の意味合いで言うと、脊柱管の後方にある黄色靭帯の肥厚による狭窄症が一般的とされています。
脊柱管狭窄症の分類
・馬尾型(14%):両下肢の痺れ、陰部の痺れ
重症だと膀胱直腸障害
馬尾型の脊柱管狭窄症(絞扼性)は、後方にある黄色靭帯などが肥厚したりして馬尾神経自体が絞扼されることで症状が発生します。
構造的に脊柱管の形態が狭くなっているパターンでも生じる可能性があるためMRIが撮影できる施設ではMRIで脊柱管の形態を確認して見ると良いと思います。
・神経根型(70%):神経根型は、脊柱管の外側が狭くなり神経根が圧迫されて下肢痛が出現します。
・混合型(15%):馬尾型と神経根型が合併しているタイプの狭窄症です。症状は両方のタイプの症状が混合してでます。
特徴的な身体所見:『間欠性破行』
脊柱管狭窄症で有名なものが歩くと下肢痛や痺れが出てきて、座ったりすると症状が楽になると訴えることはよくあるかと思います。
これは、立位でいると腰のアライメント(骨盤が前傾すると、腰椎が伸展し、脊柱管のスペースが狭くなります。)が変化して
馬尾神経が圧迫されやすくなります。
圧迫される状態が続くと、神経症状が出てくるのは容易に想像が付きますね!
座ることで、骨盤は後傾するのでそうすると脊柱管は逆にスペースが広くなります。そうすると、馬尾神経への圧迫力が低下するため症状が軽減してきます。
鑑別しなければいけない疾患
末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)です。
間欠性破行を体する疾患のうち13%程度はこの疾患といわれいます。
動脈の閉塞により症状が起こるため歩くと下肢の痛みが誘発されます。
ただし、脊柱管狭窄症のように姿勢性(アライメントの変化)で症状が誘発されるわけではないので座っても症状が楽になるわけではありません。
合併症として、糖尿病(DM)や動脈硬化などの内科的疾患がないかどうかは問診で聞くように心掛けています。
ABIという検査(ankle brachial pressure index)
PADなどを精査する検査にABIというものがありますので紹介します。
ABI(足関節上腕血圧比)検査は、両側の上腕と足首の血圧を測定してその比(ABI)を計算し、比較的太い動脈の内腔が狭くなっていないかどうかを調べる検査です。ABI検査の正常範囲は1.00~1.40、境界範囲は0.91~0.99です。ABIが0.91以下で閉塞性動脈硬化症などの末梢動脈の病気が疑われます。
ABI検査は、動脈硬化(血管の老化など)の度合いや早期血管障害を検出することができます。
脊柱管狭窄症の診断のアシストツール
病態を理解し、疾患の特徴を掴むことが診断(私たちコメディカルは診断はできませんが!)の一助となります。
最後に脊椎脊髄病学会から出ている脊柱管狭窄症のアシストツールを紹介します。
こちらの票を使用してもらい当てはまるものにチェックをしていきます。
合計点が7点以上になったら腰部脊柱管狭窄症の可能性が高くなります。
問診時に参考にしてみてください!