レシピ10:ロールモデルとともに歩む
1. 尊敬する人物は?
「尊敬する人物は誰ですか?」
学校の先生から聞かれて、困った記憶もあるかもしれません。
なんとなく知っている有名人の中から、いちばん凄そうな人を選んでみたり、適当にお茶を濁した人もいることでしょう。
「尊敬する人物」というと、一般的には、偉大な功績を残した英雄や、歴史を変えた偉人たちの名前が挙がります。
ランキングでいつも上位を飾るのも、次のような偉人たちの名前です。
「レオナルド・ダ・ヴィンチ」
「スティーヴ・ジョブズ」
「アルベルト・アインシュタイン」
…etc
いずれも世界を変えた偉大な業績を残した偉人たちです。
ミュージシャンや同僚、ライバルなどに敬意を払い、リスペクトすることはあっても、「尊敬する人」として名前を挙げることは稀なようです。
つまり「尊敬する人は?」という質問は、人生の模範とする人物像を尋ねているのです。
いわゆる、ロールモデルです。
2. ロールモデルとは
「ロールモデル」とは、ビジネスの世界では、以下のように定義されています。
・上級者のスキルや行動スタイル、習慣などを模倣することで、個人の成長を促進するしくみ
・上記の模倣の対象となる人物
要するに、古い言葉ではありますが、「お手本」のことです。
「妹たちのお手本になりなさい」
「上級生をお手本にして、勉学に勤しみなさい」
古き良き時代のホームドラマでよく見かける光景です。
現代のビジネスにおいても、あまり大きな変化はなく、職場の先輩や成績優秀者などが、ロールモデルとして推奨されることが多いようです。
ロールモデルを持つことのメリットは、なによりも「自身の目標がわかりやすい」こと、そして「ゴールまでの歩き方がわかりやすい」ことにあるでしょう。
なにせ、目標はそこにいて、真似すればいいんです。
こんなにわかりやすいことは、ないでしょう。
明確なゴールイメージこそ、行動力を生む原動力でもあります。
われわれも、ロールモデルの持つ、この「わかりやすさ」を利用してみるとしましょう。
3. ロールモデルの調理法
【手順1】尊敬する人物を思い描く
人生の模範となる「尊敬する人物」を思い描きましょう。
可能であれば「批判すべき点もあるけど、やっぱり凄い!」というギャップ萌え的人物よりも、素直に心酔するような人物を思い描くと良いでしょう。
私が「尊敬する人」と聞いて、すぐに思い浮かぶのが、以下のお二人です。
鍵山秀三郎 先生(イエローハット創業者)
仲真紀子 先生(心理学者、北海道大学教授)
もちろん、自身が崇拝しているのであれば、織田信長や平将門、ゲーデルといった過去の偉人でも構いません。
さらにいえば、著名人である必要すらありません。
素直な気持ちで「この人は凄いな」と思う人であれば、誰でもいいのです。
その想いが真剣であればあるほど、効果はあります。
【手順2】尊敬する理由を特定する
次に、その人物に惹かれる理由を探ります。
尊敬するからには、理由があるはずです。
それを特定します。
たとえば、私が鍵山先生、仲先生に敬愛の念を抱かざるをえないのは、その「謙虚さ」が理由だと考えています。
直接お会いしたとき、そのお人柄に触れて「この人は、なんて謙虚な人なんだろう!」と驚愕したのを覚えています。誰かの能力の高さに舌を巻くことはあっても、人間性の高さに衝撃を受けたのは、後にも先にも、このお二人以外にはありません。
同様に、たとえばディアナ・アグロンを尊敬するならば、恵まれた外見を与えられながらも、甘んじることなく努力を積み重ね、自己実現を果たした姿を挙げることができるかもしれません。
このとき、チェックポイントが2つあります。
① 行動や態度が理由になっているか?
尊敬する理由は、行動や態度といった行動特性である必要があります。なぜなら行動特性しか模倣できないからです。
なぜ、世界一のお金持ちになれたのか、その行動原理や、周囲の人々に対する態度など、偉大な業績を生むに至った過程に注目しましょう。
「世界一のお金持ちだから」とか「外見が好き」といった理由では、憧れの対象になったとしても、ロールモデルとしては役不足です。
② 自分の本心かどうか?
「みんなも尊敬しているから」といった理由ならば、その人物から学ぶことは、ほとんどないでしょう。
自分自身が尊敬するからこそ、そこで選び取った行動特性に意味があるのです。
「取るに足りない人を選んだら、カッコ悪いし…」などと他人を気にせずに、自身が素直に「凄い」と思った気持ちを大切にしましょう。
【手順3】選び取った行動特性をロールモデルとともに追求する
上記手順で抽出された尊敬する理由は、われわれが最も大切にしたいと考える行動特性でもあります。
いわば、われわれが生きる上で根幹となる基本理念、人生の精髄ともいえるでしょう。
その行動特性は、われわれが疑いなく「良い」と認めるものです。
尊敬する人物の行動特性だけにしておくのではなく、自分自身の行動特性にしてしまいましょう。
そのためにも、便利なのがロールモデルの存在です。
目指すべき行動特性を兼ね備えた最高のお手本が、われわれの目の前には存在しています。
いわば、同行二人。
これから険しい道を歩む上において、なによりも心強い先達ではないでしょうか。
私自身も、私淑する先生方の面影を胸に抱きつつ、謙虚にして驕らず、精進を重ねていきたいと考えています。