芥生 修一

字を書いて生きられるところまで、生きようと思います。主に、短い文を書いていますので、お暇があるときにでも覗いていってくださると、大変嬉しいです。

芥生 修一

字を書いて生きられるところまで、生きようと思います。主に、短い文を書いていますので、お暇があるときにでも覗いていってくださると、大変嬉しいです。

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  • 【短編小説】芥

    短編小説を集めたものです。すべて、書き散らし。どの順で読んでも、変わりありません。

最近の記事

【短編小説】「靉靆」

はしがき  見慣れた天井だった。カーテンを開ける。見慣れた景色だった。右手を見てみる。やはり、治らないペンだこがあって、中指の左半分だけ爪が割れている。  今日という良き日に、今日という忌み日に、私はどうしていいのかわからない。腕を思いっきり伸ばしてみる。そして、「今日は良い日だ」と好青年のように笑顔を作ってみる。  しかし、嫌な頭痛は一向に治まらないのです。はぁ。溜息がちらり。灰のくぐもった顔で、胸のあたりをおさえる。潤んで、そのまま涙が出てしまいそう。はらり、と落ちる雫

    • 【小説】幸せを考える (書き散らし)

       私は、幸福が分からずにいました。或いは、不幸になるために生まれてきたのかもしれない、と思うほどでした。幸とは、自然に感じるものでしょうか。それとも、探しに行くものでしょうか。いつも側にあるのでしょうか。それとも、限りがあったりするのでしょうか。私は全く理解できずにいます。  例えば、私、人から大切にされたことがないと思っているような、いけない人格の持ち主でした。多くの命とともに私の人生はあったのに、まるでそのことをなかったかのように語ってしまう、そんなだめな人間なんです。

      • 【短編小説】芥-3.空の鳥

         埃っぽい部屋があった。しかし、机も本棚も整頓された状態で、荒れた様子はなく、使われていた当初の部屋にそのまま薄い灰のヴェールを被せたようであった。一歩部屋に入ってみると、陽の光で埃がぱらぱらと舞って光った。つんと、知らない匂いが鼻の奥を刺した。辺りを軽く見回す。端から端まできちんと揃えられた本。少し日焼けした三枚の写真。まだ奥に続く扉。それから、一冊の日記が机の隅にあった。なんとなく手にとって、流すように数枚めくっていると、ふと目に留まる頁があったので読んでみることにした。

        • 【短編小説】芥-2.猿の幸福

          はしがき  桜が舞った。一枚、遠い地の水面に張り付いた。きっと、何かはわからない  楓が落ちた。一枚、遠い地の花畑に迷い込んだ。きっと、何かはわからない  何かが崩れた。一枚、遠い地の私の元へやってきた。きっと、何かはわからない  それがきっと、自然なのでしょう 猿の幸福  ある一人の女性がいました。その女性は、寝ても覚めても、死ぬことばかり考えていました。朝起きて、どこで死のう。昼食を食べながら、どうやって死のう。ベッドの中で、いつ死のう。それまでよかった成績は一気

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        • 【短編小説】芥
          3本

        記事

          【短編小説】芥-1.致死量

          芥1.致死量  もう随分、昔の話です。  「心の病」とやらを患っていました。しかし、あれは、心が辛いなどという、そんな曖昧で、ぼんやりとしたものではなく、リアリスティックにいうと、単に脳の病気でした。意に反して、生物的にふさわしくない思考になってしまったりだとか、活動性が失われたりだとか、とにかく人間の臓器の病気であって、根性でどうにかなりそうな感じでは全く無かったのです。  また、あれは患ったものにしかまるで理解できないというような、排斥性に似た何かを持ち合わせており、実

          【短編小説】芥-1.致死量