シェア
薊詩乃/Azami Shino
2023年6月6日 22:46
(前話はこちら)「問題はこの人間をどうするかだ、そうだろう」肝が冷えるほど低い声で、蜚蠊が言った。「人間。君はなぜここに来たのだ。ここが我々の聖地だと知って、たとえばわしを踏み潰すために、この地に足を踏み入れたのではあるまいな」黒猫、鴉、蜚蠊に睨まれたまま、少年は動けなかった。声も出せなかった。第一、声を出したところで彼らに通じるのだろうか。そもそもなぜ人語を話しているのだろうか……。