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『尻~その真白き双丘の狭間で~』
私は短気な父が嫌いであったし、許せもしなかった。
とうに亡くなった今でさえそうだ。
あるとき、なぜ母親と結婚したのか、
家族でその馴初めを訊いたことがあった。
「尻が一番でかかった」
父は確かにそう言った。
母の尻を見て一緒になったと。
それを聞いた瞬間、ある種の生理的な嫌悪を感じるとともに
どうしようもなくその血が流れていることを受け止めざるを得ず
行くことも戻ることもできないような
尻の持っていきようのない狭間で
私はこれからも尻を愛していくしかないのだと
ひとり思い定めて、こんにちを生きている。
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