『新解さんの謎』 赤瀬川原平
辞書は『新明解国語辞典』に決めている。(以後『新解』)高校時代からの付き合いなので、これが当たり前なのだと思っていたが、どうもそうではないらしい…。
『新明解国語辞典』が普通ではないらしい、と、気が付いたのは十数年前(この記事自体が古いから実際は20年近くたってる気がするがそれはまた別の話。初版が1999年4月というから概ねそんなとこだろう)。
赤瀬川原平著『新解さんの謎』に触れてからだ。ここには『新解』がいかに優れて?明解であるかが説かれている。手元の辞書とぜひ比べてみて欲しい。
例えば、『世の中』という単語を引いてみると――
「成功者と失意・不遇の人とが構造上同居し、常に矛盾に満ちながら、一方には持ちつ持たれつの関係にある世間」ですよ? こんな明解でいいのかってくらい、明解に世の中を切り取ってみせてくれているではないか!
では明解な言葉にはできなさそうな『恋愛』はどうか?(笑)――
“出来るなら”合体したいという気持ち! それがかなえられないで、ひどく心を苦しめる(まれにかなえられて歓喜する)状態だと!? なんて明解なシモの方からの切り口で切り取ってくるのだこの辞書は!? と思わず拳を握りしめてしまうのは僕だけではないんじゃなかろうか(笑)
だが悔しいかな否定出来ない(笑)
で、意表を突いて『悪念』なんぞを引いてみると――
起こってはまた消える……ですよ? ね? ほんと、こんなに明解でいいのか? なんちゅうリアルな語訳だろう(笑)
でも新解さんがすごいのはそれだけじゃない。実は、語句の用例もすごい。
用例というより、もはや文学だろう。これは。
おい、どんな条件で受けたんだよ(笑)。
や、用例としては間違ってないんだけども。もう明解にするためならなんだってするな新解さんは(笑)
そして更に、新解さんは、美食家でもある!
そっか、うまいんだ(笑)赤貝や鴨、スズキ、あこう鯛など、どれも評価付きで載ってるからぜひお手持ちの方は調べてみてほしい。あるいは、他社の辞典があるなら比べてみてほしい。新解さんがどれだけ際立って明解かわかってくるんじゃないでしょうか(笑)現場からは以上です。
※注! 意味訳は版によって違います。僕のは第三版。第四版が欲しい…。
追記:今現在僕の新解さんが行方不明。どこかの段ボールの中で眠ってる。さがすとなると一日がかりになるので、やめている。しかし、たまにパラパラしたいんだよなあ。あーあ。豪邸に住んで、すべての本を書棚におさめられるくらいの部屋を持って、メイドの一人でも雇って本や資料の整理に従事してもらいたいくらいじゃ。金持ちになろう。