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東京路地紀行 72 練馬区北町
前回の路地紀行の記事で呑み屋の横丁を書いたことで今回の場所を思い出した。それは練馬区北町にある「北町楽天地」。
入口からの風景はこんな感じ。
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立地は東武東上線東武練馬駅南口を出て5分もかからない距離。旧川越街道沿いにある。
東武東上線といえば、池袋を発車して板橋区を西北方向へ走り埼玉県へ、そして寄居を終点とする私鉄。練馬区とは縁がないように思えるが、ほぼその通り。ただ駅名に練馬を冠する東武練馬駅があるくらい。でも駅名は「練馬」と名乗りながらもホームの住所は板橋区徳丸。南口を下りてすぐの道の上に立つと練馬区北町という区境に位置している。
北町楽天地も板橋区に接するように存在する練馬区側の楽天地なわけだ。
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ここの客層は?
呑み屋街の常連客というと職場が近くというのが一番ぴったりだが、東武練馬駅のある一帯は住宅地が駅前から広がり、工場が企業の建物は見当たらない。では地元に住んでいる会社員のお父さんが仕事帰り、家に帰る前にここで一杯ひっかけていくのか…そのような感じはしない。
では主な客層は誰なんだろう。
さて、北町楽天地はその名称とは異にして行き止まりの短い路地の両側にいくつもスナック、料理屋がびっしり並んでいる小さな横丁だ。そして写真で見る通り古い。昭和も30年代頃からあるのだろうか、という印象。
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話は戻って常連さんは誰?
ここからは想像だが、北町楽天地からほど近い場所に陸上自衛隊の駐屯地、練馬駐屯地がある。ここの歴史を振り返ってみると戦前は陸軍造兵廠の資材置き場だった。戦後ここに警察予備隊、つまり自衛隊の前身が駐屯。そして自衛隊として編成されてから第1師団の司令部であり、隷下の部隊が駐屯している。つまり、自衛隊の隊員(昔風にいえば、陸軍の軍人さんたち)が上得意のお客さんではないのだろうか。こういっては失礼だが、大企業や大工場のないこの町でこのスナック街を維持することができる客層というとそれくらいしか思いつかない。
スナックの店名はどれも女性の名前。
おかえりなさい、一日お仕事、お疲れ様♪
という感じで隊員たち(お客さん)を迎えてくれていたのだろう。
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横丁の裏側にもまわってみると長屋構造になっていることがわかる。1階が店で2階が住居として使われているのかもしれない(または昔はそうだったのかも)。
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でもこの寂れ方を目にすると、もう自衛隊も上得意ではなくなってきているのだろうと思われる。むしろ地元のサラリーマンをリタイアした人々の憩いの場所として生き続けているのかもしれない。そして店のママたちも確実に高齢化しているだろう(店の外見からは世代交代が進んでいるとは考えにくい)。どのような形であるにしろ、これからも長くこの姿をとどめてほしいと願うばかりである。
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