東京路地紀行 65 品川港南
品川駅を高輪口とは反対方向に進むとそれが港南口。
大昔、仕事の用事で品川駅を降りて港南口へ出たことがあった。その時の記憶はひと気のない灰色一色の通路をひたすらいつまでも歩いてやっと日の下にでたら、外には何もない殺風景な風景がひろがっていたものだった。その記憶が正しいのか、いまとなっては確かめるすべはない。というのもすっかり街の様子が変わってしまったからだ。
いまは電車がまるまるはいりそうなおおきな空間通路になって、多くの人が行き交っていた。港南口側も大規模再開発で超高層ビルが立ち並ぶ街に大変貌。
再開発される前の港南口はどんな様子だったのだろうか。その名残をとどめているのが港南口の駅前広場の先にある横丁。
超高層ビルの切れ目に突然現れる古い雑居ビル、年季のはいった店舗。建物の隙間から入っていくと、そこは紛れもない昭和だった。
雨上がりの横丁路地にはところどころに水たまり。それを避けながら目指す店へと路地をさらに奥へ。
夜が更けていくにつれて、路地からは人の姿が消えていった。そろそろお開きの時か、表通りへ出てみようと初めて訪れた夜の迷路となった路地をさまよう。どう行けば、表へ出られるのか。
行き止まりを戻り、もう一本の脇道を進みなおし、横丁の路地を出ると表にはまだ人通りがあった。