東京夜探偵 10 渋谷
東京夜探偵シリーズのエピソード7「ハロウィンを待つ恵比寿」、9「別所坂」、この夜は中目黒を出発して、別所坂を上り、恵比寿へ下りていき、代官山を越えて渋谷まで歩いていた。今回はその代官山から渋谷まで。
恵比寿の中心の飲食店街を抜けるとひと気のほとんどない坂道沿いの住宅地へとはいっていく。その中にわずかに残る路地の痕跡を歩き、代官山のてっぺんへたどり着く。
ここから先へ下りていくと一般的に代官山で知られているおしゃれな店舗が多く、若い人たちが多く歩き回るエリアへとつながる。
でも今晩はそれは避けて尾根道に沿って渋谷方向へ向かう。住宅ばかりで何もないかと思うとところどころしゃれたBarなどがあったり。ちょうどこの時も店員の女性が店を訪れた白人2人の写真をとってあげて会話しているところに遭遇した。
渋谷区鶯谷町へつながる坂道を下りていくと暗闇の中、目の前にごみ処理場の白い巨大煙突がぼんやりとそびえたつ。同じ白い塔でも団地の給水塔だとその素敵なフォルムに萌えるのだが、ごみ処理場の煙突は機能重視でまっすぐ高く天へ伸びている共通仕様。味気がない。
ここから渋谷区鶯谷町へ直線的に向かうために小さい丘へのぼっていく。すると目のまえに「の」…暗闇に突然白く現れるそれはまさにアニメの世界に見えた。「の」という店名なのかはわからないが、飲食店のようだ。店の前に立つと若者でいっぱい。表通りからも引っ込み、まわりはすべて一戸建て住宅。隠れ家的な店。いや、あまり隠れてないか。
さていよいよ鶯谷町へ。
「鶯谷」というと台東区には鶯谷駅がある。けれどもあちらは駅名しか残っておらず、町名は存在しない。一方渋谷区のほうは町名としてしっかり残っている。ただこちらの鶯谷はあまり知られていないかもしれない。台東区の鶯谷駅周辺といえば、都内有数のホテル街で夜ともなればディープな大人の世界。それにくらべて渋谷区のほうは同じディープでも川跡の谷地で窪んだディープな地形くらいしかない狭い谷地の住宅街。同じ谷でも渋谷の陰にすっかり隠れている存在。でもそれが街歩きにはまた良い。
夜、人々は屋根の下におさまり、外を徘徊するのは猫一匹いない…そんな表現が合いそうなくらい、渋谷の繁華街から10分程度の距離なのに。
ここは鉢山町方面から流れてきた小川が渋谷川へ向けて流れていた場所で狭い谷を形成している。その中に住宅が密集するように建っている空間だ。そしてその谷へのアクセスは上の表通りからの階段または坂道での接続となる。そのために狭いエリアながら階段がいくつもあるのがここの特徴であり、何回も訪れたくなる理由だ。
この谷間をもう少し上流部にさかのぼってみる。すると製図学校の横にこれまた深い谷と階段が現れる。階段の下には木造家屋。なんとも素敵な構図。階段の上から思わずうっとりと見とれてしまう。
上から見るだけでは飽き足らず下におりてもみる。
そしてこの夜のゴールは渋谷区桜丘町の再開発で出現したShibuya Sakura Stage。再開発された新しい街のイメージはさくら色。
道一本隔てると再開発されなかった旧市街地(とは大げさだけど)が隣接しており、どちらかというとSakura Stageのほうが何かのセットのようにも見えてしまう。
谷底に位置する渋谷は場所によって地面が1階だったり3階になっていたり、とすぐに変わりその高低差の激しさに惑わされる。ここはどちらかといえば一番の低地に建てられているので、それほどの高低差はないものの空中回廊をつくって向かいのビルへいったり、反対にJR渋谷駅に行けたりする。その回廊からの眺めがまた面白い。
新しいからか、渋谷駅に直結もしているからなのか、そして飲食店フロアがあるからだろうよく賑わっていた。昔は路面に出店していたであろうというような小店舗もあり、こんなところで呑むのもよきかなと思いながらビル内をうろうろしてみた。(写真はないので想像で)
地上へ降りる。ここから夜の渋谷風景を。
「食いだおれ」ならぬ「串だおれ」の金ピカのネオン。その前で道の真ん中に立つ二人。
何を考えているのか、何をしているのか、階段に座る男性の後ろ姿。
ビットヴァレーと呼ばれる渋谷桜丘周辺にはIT企業が多い。今の便利な生活を支えてくれているIT、そこで働く人々には多忙がつきもの。彼女たちも仕事の帰り道だろうか。
そして夜もふけ、戦利品を持って帰宅する後ろ姿、きっと充実の一日。