東京路地紀行 49 赤坂 福吉坂
ここは階段というべきか、この細さは路地というべきか…
両方いいとこ取りで「階段路地」にしよう。
とわざわざ宣言するほどではないが、東京はその地形にそって通路ができると階段路地が誕生する。
訪れたのは、福吉坂。
かつての溜池跡に広がっていた黒塀に象徴される料亭、韓国料理店、クラブ、呑み屋のある低地と赤坂の台地の境に位置するのがこの坂。(階段ではあるが)
坂=サカとは境=サカイのことでもある。
日本神話にも出てくる地下に存在する黄泉の国と地上世界をつなぐのが黄泉平坂(よもつひらさか)。この世とあの世をつなぎ、また仕切るのが坂(境)だ。
そういう意味では、赤坂の歓楽街という俗界の低地と氷川神社という聖なる高台をつなぐ位置にあるのがこの福吉坂ともいえる。
この細い路が聖と俗をつないでいる一本の筋、現代の黄泉平坂。そう思いながら毎回上り下りしてみる。
ところで、この階段路地は某テレビ番組にも出てくる。それは警視庁のアウトロー的な警部が活躍する刑事ドラマ。その警部の行きつけの小料理屋がこの階段の近くにあるらしく、彼が店に向かう途中にこの階段が出演している。
その警部になった気持ちで私も階段を下りてみた。でもなんだか違うな、一人で歩いてもおもしろくない。やはり横に相棒がいてくれたほうがいい。