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利家のまつの実ソースで頂く焼き太刀魚

太刀魚、塩焼きもいいけど他の食べ方を考えて、松の実がアクセントになったソースを掛けてみることに。
そういえば昔、『利家とまつ』という大河ドラマがあった。(一回も観てないけど)
ということで戦國の世を生き抜き、無事に家を遺した女傑を妄想しながら料理した記録。


材料

太刀魚 1尾
松の実 30g
塩   小匙半分
醤油  大匙2
酒   大匙2
蜂蜜  大匙半分
バター 20g

天文十六年(1547)織田家の家臣、篠原一計の娘として尾張に生まれたまつ。
天文十九年というから満三歳の時に父が戦死。更に母が再婚すると叔母の許で養育されることに。
叔母の夫が前田利昌。その息子の一人が利家。

つまり利家とまつは従兄弟同士。
数え年十二歳で十歳近く年上の利家に嫁ぐ。
まだ幼いので形だけの結婚、という訳ではなく翌年には長女を出産している。早熟?それとも利家はロリコン?



太刀魚に切り込み。

ところがこの年に夫妻にとって大事件発生。
夫の利家が主君、信長お気に入りの同胞衆、十阿弥を斬ってしまう。これにより織田家から追放。
子供抱えていきなり無職。
困っていた間、近所に住んでいた秀吉とおね夫妻が助けてくれたとも。これが羽柴、前田両家の繋がりの始まり。


塩を振って暫く放置。

利家は追放されたにも関わらず勝手に桶狭間に参戰。その後も織田家の戰に許可なく参陣。他家に仕官ということはまったく頭になかった。
目出度く帰参が叶うと柴田勝家の下で北陸方面で戰う。
そこで能登國の国主となり、まつも大名夫人に。


水氣を拭いた太刀魚をグリルへ。

信長がいなくなった後、寄親であった柴田勝家は秀吉と対立。
友である秀吉と上司である勝家の板挟み。
賤ヶ岳の合戦で勝家方で出陣したが、途中で戰線離脱。
秀吉がやって来ると、まつが夫のために弁明。これにて勝家方だったことは不問に。というより前田勢が撤退したので勝てたと言えるので秀吉も上機嫌。
更に利家が秀吉について勝家の居城、北ノ庄城攻めに向かう時に秀吉は
「これから北ノ庄城を攻めるが、跡継ぎの利長は母と共に残ればよい」
ところが、
「いいえ、母のことは氣にせず、共に出陣しなさい」と息子を送り出した。
これからは秀吉が天下人になることを予見して、息子にも秀吉派であることを徹底させ、前田家の立場を盤石にという配慮。


松の実を乾煎り。

戰後、能登と加賀を治めることになった前田家でしたが、この二國の境にある末森城へ佐々成政が侵攻。
能登と加賀の連絡を絶って前田家を弱体化させようという戦略。
佐々勢は一万五千、末森城を守るのは奥村助右ヱ門率いる三百人。すぐに援軍を送るべきですが、利家はなかなか動かず。
秀吉の援軍が来るのを待っていたとも言われますが、この頃の利家は蓄財に熱心で報酬を出し渋っていたので兵が集まらなかったとも。
漫画『花の慶次』では、この時にまつが女中衆を率いて
「私達女が援軍に向かいますから、男衆は金澤城を守って下さい」
と薙刀を持って馬に跨る。
幾ら何でもそういう訳にはいかないとして、利家もようやく重い腰を上げるという展開。

砕いた松の実をバターで炒める。

これは漫画らしいデフォルメ。
『川角太閤記』によると、まつは金銀が入った袋を利家の前に放り出して、
「そんなに金銀が大事なら、金銀に槍を持たせて出陣させればよいでしょう」
ここまで言われて利家も発奮。蓄財を投げ打って兵を集めて末森城の救援に向かった。
以前、どこかで読んだ記憶がうっすらとあるのですが、著者の川角三郎衛門は前田家に世話になっていて、パトロンである前田家へのサーヴィスとして秀吉は直接、関わっていない末森城の戦いを挿入したとか。
となると、もしかしたらこの逸話も創作?
しかし、まつという女性が肝が据わった女性だったと形を変えて伝えているのかも?


煮えてきた。

最終的には利家とまつの間には二男九女と合計十一人の子宝。
四女の豪は秀吉の養女、六女の摩阿は秀吉の側室に。
こうして豊臣家と強い絆。
花見の時、名門、京極家出身の松の丸殿と淀殿という側室達が席次を巡って揉めるとおねと共に調停。秀吉の正室並の発言権がまつにあったことを示している。

焼けた。

秀吉の死後、徳川家康が急速に薹頭してきた。
豊臣家を守るべく利家は奮闘していましたが、寿命が尽きる。それを待っていたかのように家康は前田家に謀反の兆しありと因縁。
誰に対しての謀反?
前田家は秀吉との関係からして、豊臣家に謀反する筈はない。
要は誰でもいいから挑発して大きな戰を起こして、実力行使で天下取りを狙っていた。
家督を継いだ利長は受けて立とうとするが、
「なりませぬ」
夫の死後、出家して芳春院と名乗っていたまつは制止。
「母が人質として江戸へ下ります」
江戸幕府は大名の妻子を人質として江戸に留め置く政策を続けましたが、その第一号がまつだったという訳。


利家のまつの実ソースで頂く焼き太刀魚

切り込みを入れたのでよく火が通っている。しかも切れ目からソースがよく沁みる。
バターと醤油は黄金の組み合わせ。そこに蜂蜜が甘さのコクを加える。
香ばしい松の実が良いアクセント。
松の実はビタミンEを含み、抗酸化作用。
軽く塩で下味が付いている太刀魚に甘めのソースがベストマッチ。

東軍に付いた利長の働きで加増されたことで、前田家の身代は百萬石に達した。
因みに次男の利政は西軍。家康の挑発に耐え切れなかったのか、東西どちらが勝っても家を遺すための戦略か?

人質として江戸に居ること十四年。利長が亡くなったことで、まつはようやく金澤に帰還。
まつが前田家を守るために奔走したのは、幼少期に父母共にいなくなったことが原因ではないかと妄想。
だからこそ、利家と共に作った自分の家はしっかりと守り、遺していきたいと願ったのではないか。
加賀百萬石の前田家を守った肝っ玉母さんとでも呼ぶべき女性を妄想しながら、利家のまつの実ソースで頂く焼き太刀魚をご馳走様でした。

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