金時金平
『修羅の刻』新作連載開始記念。
もはや漫画を読むような年齢ではなくなったものの、昔から読んでいる漫画をたまに立ち読み。
先日、書店で月刊少年マガジンにて『修羅の刻』新作が始まったのを偶然、知りました。
『修羅の門』という格闘漫画のスピンオフとして始まった漫画。
『修羅の門』主人公が使うのが素手で人を殺す拳法、陸奥圓明流。
日本に古くから伝わる一子相伝の拳法。歴代の伝承者達が歴史上の有名人と関わりを持つという内容。
『修羅の刻』とそれに関連するであろう人物を妄想しながら、伝統的な家庭料理を作った記録。
金時人参 1/2本
牛蒡 1/2
唐辛子 1本
水あめ 小匙1
醤油 大匙2
味醂 大匙1
酢 適量
胡麻油 適量
白摺り胡麻 たっぷり
歴代の陸奥がこれまで関わった人物は宮本武蔵、坂本龍馬、ワイアットアープ、柳生十兵衛、源義経、織田信長等々。
今回の新作に登場している、陸奥であろう人物は庚(かのえ)。関わる人物は源頼光。
酒呑童子とか土蜘蛛を退治したという伝説に彩られた平安時代の武士。
作中、二人の郎党と共に山中に分け入った頼光、熊と人が戦っているのを見る。
「人が熊に襲われている」と思いきや、実は人が熊を狩っていた。
熊を素手で倒そうとしている人物が庚。
どうやら、作者の川原正敏氏は庚を頼光四天王の一人に擬そうとしている模様。それも坂田金時、つまり金太郎。
作中で頼光が庚にその名前を与えている場面。ちょっと強引な感じ。
まあ、それでも坂田金時こと金太郎について妄想。
鉞担いだ金太郎、熊に跨り、お馬の稽古。という童謡で知られる金太郎。
しかし、この話ってオチがない。
桃太郎とか浦島太郎という御伽噺と違って、山姥に育てられた金太郎が熊と相撲を取っていて、その怪力を見込まれて源頼光の家来としてスカウトされる。それだけの話。御伽噺としてはそこで終わっている。一体、この話が意味することって何?
金太郎は赤い肌で赤い前掛けをしていることから、山中で製鉄に携わっていた人々の象徴ではないかと読む人もいます。
真っ赤に焼けた鉄を彷彿させる肌、仕事をする時に着ていた前掛けがその象徴ということ。鉞という鉄器を担いでいるのも製鉄を示している。
御伽噺から伝説の域まで広げてみると、坂田金時となった後の金太郎は頼光の四天王の一人となり、酒呑童子等の怪物退治。
今昔物語には、頼光と金時をはじめとする郎党達が慣れない牛車に乗ったために車酔いのような状態になり、醜態を晒したという話がある。
九州の賊徒討伐に向かう途上、美作(岡山県)で熱病に罹り、金時は頼光達に看取られながら亡くなったとされています。
坂田金時が実在したのかよくわかりませんが、モデルになったのではないかと思われる人物が下毛野公時。
こちらは藤原道長の日記に名前が出てくることから実在したのは間違いない。
長保二年(1000)誕生。宮中の年中行事だった相撲を司る相撲使として活動。その仕事として赴いた筑紫にて死去した時はまだ18歳。
筑紫がある九州へ行く途中で亡くなった坂田金時と似た運命。
夭折した公時を惜しんで、坂田金時という人物が造形された?
私は妄想する。
金太郎、そして坂田金時伝説が裏に抱えている意味は人にはそれぞれ合った場所があるということではないか。
山で動物達と暮らしていた金太郎は坂田金時となり、武士となったために怪物や賊徒退治に追い使われる。そればかりか慣れない乗り物で酷いメに遭ったことを笑われる始末。
熱病で亡くなったとなっているけれど、精神が参りつつあったために罹患したのではないか。精神と肉体は密接に関係していますから。
もしかしたら死んだということにして、役目から解き放たれたのではないか。そして本来、自分が伸び伸びと生きられる山へと帰った?
熱病で死んだよりも、そうだった方がいいなあ。
お伽話の金太郎が、山で熊と相撲を取っていた以外のことを語らず、そこで終わっているのは一番よかった時代や場所のみを描いたということか。
出来上がり直後よりも冷まして味が沁み込んでから食べた方がいいので、暫く放置してから食べるべし。
金時人参は普通の人参よりも鮮やかな赤。正に金太郎を彷彿。
牛蒡も金時人参も根菜。シャキシャキとした歯応えが素晴らしい。食物繊維やβカロチンをたっぷり補給。
水あめ使用で控えめな甘味が醤油とよく合う。優れた抗酸化食品である胡麻の風味が食欲を増してくれる。唐辛子の辛みがアクセント。
金太郎こと金時には息子がいたという伝説。その名が金平。
父譲りの怪力で、それに因んで歯応えある強い根菜料理をきんぴらと呼ぶようになった。
令和五年も間もなく暮れる。恐らくこれが今年最後の記事。
今年も多くの方々にお越し頂き、たくさんのスキやコメント、フォローを頂きました。本当に感謝しています。新たな意欲が湧いてきます。
あまり知られていない歴史を料理しながら語るというスタイルがすっかり定着しました。歴史好きな人にも料理好きな人にも楽しんでいただけるように今後も精進致します。
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