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西郷吉之助惣鱈キムチチゲ

またもや呪文みたいな題名。
魚屋にて助惣鱈のぶつ切りを購入。これを具にしてキムチチゲを作る。


材料

葱           1本
木綿豆腐        1丁
ジャガイモ       1個
スケソウダラのぶつ切り 1尾
自家製キムチ      好きなだけ
味噌          大匙2
コチジャン       小匙2
蜂蜜          小匙1
炒り子         二つまみ程

助で終わる名前ということで、西郷吉之助を妄想しながら料理開始。
西郷さんとかせごどんと呼ばれて、親しまれている維新三傑の一人、西郷隆盛と呼ばれている人物。よく知られているようでいて、実はそうでもない。というのも、西郷隆盛という名前自体が正確ではない。
幕末の志士達の名前って実は通称。実名ではないことが多い。例えば坂本龍馬の龍馬は通称。実名は直柔。土方歳三も同様、実名は義豊。
幕末には通称の吉之助で呼ばれていましたが、明治になり、通称を廃して実名を用いることに。その時に不在だった西郷の実名がわからず、確か隆盛だったと誰かが言い出し、西郷隆盛と登録。
実は隆盛とは、吉之助の父親の実名。
西郷吉之助の実名は正しくは隆永でした。
実名とは諱とも呼ばれ、普段は用いない習慣。そのため実名が知られていないことが多かった。


ジャガイモを輪切りにして5分、水に漬けて澱粉を抜く。

知られていないのは名前だけではない。実は顔も。
多くの人々が西郷隆盛と聞いてイメージするのは、目が大きくふくよかな顔。しかし、実はそれは写真ではなく絵。甥の大山巌や弟の西郷従道をモデルに描かれた。その絵にそっくりな風貌の上野公園の西郷像ですが、除幕式にて、まだ生存していた西郷の妻、イトさんが
「うちの人はこんな人ではなかった」と言ったのは割と有名。
写真嫌いで生涯、撮影することはなかったと言われていますが、時々、西郷の写真ではないかと言われる物が出てくることがあります。


炒り子を鍋に入れて出汁取りのため、沸騰させる。

薩摩の下級武士として生まれ、島津斉彬に見出されて出世。薩摩を維新の主役として引っ張り、維新後も政治家、軍人として活躍。明治六年の政変で下野。薩摩で私学校を開設。私学校の設立は謀反のためではと疑われ、やがて西南戦争に発展。敗死。というのは本当に大まかな経歴。
敬天愛人というスローガンもよく知られていますが、西郷が愛したのは薩摩やそれに与する人だけでは?
例えば、薩摩御用盗という盗賊が大政奉還後の江戸市中に跋扈。商家に強盗に入ったり、あちこちで暴行。幕府の武士達がそれを見かねて攻撃してくれば、それを口実に戦端を開くというのが狙い。
相楽総三という人物、赤報隊を結成。官軍の魁として年貢半減の政策を掲げて中山道を江戸へと進む。しかし本当に年貢半減を実行してしまうと、新政府の財源が確保出来ない。そこで中止して謝罪とか訂正はせず、赤報隊は偽官軍として、相楽を捕らえて、有無を言わさず処刑して口封じ。
これらのことに西郷は関与。
また、武力倒幕派であり、徳川慶喜を殺せと言っていた西郷、新政府側についた山内容堂が慶喜にも何らかの役を与えるべきと主張すると、短刀を用いた脅し。
薩摩以外の者や自分の目的の邪魔になると見た人物には容赦ない一面。
政治家とは、そうした者かもしれませんが。


出汁が出てき鱈、いやたら、鱈、ぶつ切りの葱、豆腐を投入。再沸騰させる。その後、味噌、コチジャン、蜂蜜投入。

明治六年の政変というのは所謂、征韓論にまつわること。
幕藩体制が崩壊し、不満を抱いている武士が多くいました。幕府を倒すために働いた武士達は、幕府がなくなると武士自体が不要に。明治政府は国民皆兵を打ち出して、徴兵制を導入したので、いよいよ武士の出番はなし。
そうした武士達の活用と救済の意味合い。ただ、西郷はまずは自分が朝鮮半島に出向いて李氏朝鮮政府と交渉。それが決裂した場合に出兵ということを考えていたとか。つまり自分が殺される覚悟で乗り込む?
冷徹な面はあっても、いざとなれば国家や人のために命を投げ出すことも辞さずという気概。
大久保利通や岩倉具視らは対外戦争は時期尚早ということで賛同せず、西郷ら征韓派は政府を去る。


韓国の話が出たということで、キムチ投入。更に煮る。

そして明治十年の西南戦争に向かうことになります。
敗死したのですが、実は生存説があり、ロシアに逃れたという噂が信じられていて、ロシアの皇太子が来日する時に、一緒に帰国すると信じていた者が少なからず存在。
その話を真に受けて、巡査の津田三蔵がロシアの皇太子に斬り付けた事件が大津事件。
死して尚、影響を与えていた大人物だったのは間違いない所。


西郷吉之助惣鱈キムチチゲ

自家製キムチには昆布や干し海老を使って漬け込んでいるので、鱈から出た出汁と相まって玄妙なよい味。煮崩れた鱈も辛美味い。豆腐と共に良質なタンパク質を摂取。唐辛子のカプサイシン効果で温まる。

フルベッキ写真という物が存在。西郷を始め、勝海舟、坂本龍馬、高杉晋作等々、幕末の志士と呼ばれる人達が一同に会したと言われる写真。ここに写っている西郷、一般的なイメージとはかなり違う顔。細長く精悍な顔付、目も細く吊り上がっている。
作家の加治将一先生、「西郷の貌」という著書にて、更によく顔が見える「十三人撮り」と呼ばれる薩摩武士達の写真を公開。右端の大男が西郷ではないかと推理。西郷の顔は意図的に隠されている。その背後には明治天皇すり替えの陰謀がちらつくと結論。興味ある方はご一読を。
昔の大河ドラマ、「八重の桜」で吉川晃司が西郷を演じましたが、写真の人物、そのイメージに近いなと私は感じました。
何となく親しみがあり、いい人そうに思われている西郷隆盛ですが、そうではない面もある。人間とは多面体。西郷の本当の顔を想像しながら、西郷吉之助惣鱈キムチチゲをご馳走様でした。


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