52ヘルツのクジラたち
1月20日。
本屋大賞2022年のノミネート作品、10作品が発表されました。
本屋大賞とは、新刊を扱う書店の店員さんの投票によってノミネート作品、受賞作品が決定されます。
昨年は、町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」が大賞でした。
今日はその「52ヘルツのクジラたち」を紹介したいと思います。
あらすじ
一般的な鯨の鳴き声は、15~25ヘルツ程度。
しかし、ただ1頭だけ、52ヘルツの鳴き声を出す鯨がいる。
鯨たちは、鳴き声で存在を確認し合うが、52ヘルツのクジラの鳴き声だけは、周波数が高いため、仲間に届くことはない。
そのことから、52ヘルツのクジラは「世界一孤独な鯨」と言われている。
主人公・三島貴瑚。26歳。
貴瑚は、幼い頃から母親から虐待を受けていた。
高校卒業後、母親の再婚相手である血のつながらない父親の介護を押しつけられ、その父親からも馬頭され、心身ともに疲弊していた。
貴瑚は、誰にも届かない声を上げていた。それはまるで52ヘルツのクジラのようだった。
そんな貴瑚の声に気づき、家族から助け出してくれたのは、親友の美晴と“アン”さんだった。
美晴とアンさんのおかげで家族から独立することができた貴瑚は、東京から大分の海辺の町に越してた。
貴瑚はそこで、自分と同じように母親から虐待を受け、同じように誰にも届かない声を上げていた13歳の少年・愛(いとし)と出会い、共鳴しあい、絆を紡いでいく。
感想
町田そのこさんの作品を読むのははじめてでした。
今まで読んだことのない方の作品を読むと、文字が流れていくリズムが掴めず、なかなか物語に入っていくことができません。
「52ヘルツのクジラたち」もはじめはそうでしたが、気づけば私は物語の中にいました。
久しぶりに主人公の貴瑚に感情移入をしていました。
というのも、主人公の貴瑚が、母親や父親からぶつけられた言葉が、昔の自分と重なったからです。
「あんたは性格が悪い」
「偽善者」
「あんたなんか死んでしまえ」
などとまあ驚くことを母親から言われてきました。
「あんたは性格が悪い」「偽善者」は、幼い頃から言われ続けていたため、親なんてそんなのものなのだと思っていましたが、「52ヘルツのクジラたち」を読んで、言われて当たり前でいい言葉ではなかったのだと、改めて気づかされました。
私は幼い頃から体も心も弱く、小学生の時にはいじめにあい、そのうえ母親が毒親だったため、自分の存在を認められず、何度も自ら命を落とそうとしました。
自分は生きるに値するのだろうかと何度も思って生きてきました。
だけど、「52ヘルツのクジラたち」を読み終える頃には、「私は生きていていいんだ。生きているだけでいいんだ」と再確認をすることができました。
「52ヘルツのクジラたち」の中には暴力的なシーンがあるので、読む際には要注意ですが、読み終わったあとには、「生きている、それだけでいい」と、きっとあなたも思えることができると思います。
本屋大賞2022の発表は4月6日。
本屋大賞2022年にも町田その子さんの作品がエントリーされていますが、その前に昨年の大賞作品を読んでみてはいかがでしょうか。