"DIVIN" Vol.10
『DIVIN』(ダイヴィン)は、国内外の様々な記事や読んだ本、面白いinstagramアカウントなど、生活している中で得た「誰かに教えたい情報」をお伝えするニュースレターです。
Google Documentの新しい使い方
長らく、文章作成ツールとしてはマイクロソフトの「word」が市場を独占してきた。
手書きに変わり、使いやすく長文を書けるこのツールはIEが世界中で広まると同じように飛躍的に利用者が増えた。
そんな状況を変えたのが、Google documentだ。
そのクラウド性を活かし、オンライン・オフラインでの編集が可能であることに加え、同時に複数人が編集できることで作業の効率化とともに新しい使い方を可能にした。
素晴らしいテクノロジーはアイデア次第で、様々な使い方を生み出すことができるのだ。
たとえば十代の若者たちの間では、退屈な講義中にメモを交換するための方法として長い間このツールが使われてきた。
この世界にはもう、ノートの切れ端を破り、怖い先生の目をかいくぐって(文字通り、色々な人の手を借りながら)メモを回していく必要はない。
記事の原稿制作においても、校正を行う相手と電話をしながら同時に編集を行うことで作業時間と効率を大幅に変えた。
最近ではコロナウイルス感染症のパンデミックの期間中に、人々がロックダウンのストレスに対処しやすくなるようにと、google docsが活用された。
『ニューヨーク・タイムズ』のエディターやジャーナリストが、自分たちのGoogle Docsを公開。おすすめリストや隔離生活中に書かれた日記を広く公開した。
また、コミュニティ内で困っている人を助けるための「買い物リスト」に至るまで活用法は多岐にわたる。
そんなgoogle docsの新しい使い方を紹介。それは政治的な利用目的だ。
ジョージ・フロイド殺害事件に抗議する活動家たちの間で、情報を共有するためのツールとしてこのプラットフォームの人気が高まっている。
その理由の鍵は「匿名性」と「利便性」そして「即時性」だ。
FacebookやTwitterと異なり、サインイン無しで誰でもアクセスできることに加えて、匿名性を保持できる。
このプラットフォーム上では、自身の名前は「匿名キツネザル」や「匿名ゾウ」といった拍子抜けするほど可愛いものに変わる。
政治的なプラットフォームとしては数年前から実は利用されてきたが、今回更に利用が広がり、また使い方も多岐に渡るようになったのは、コロナウイルス感染症のパンデミックのタイミングによるものも大きいだろう。
人と直接会うことが難しくなった状況であっても、家からリアルタイムで情報を取得し、活動に参画し取り組みことができる。デモに行けなくてもその場で活動できるのだ。
いま、google docsは草の根運動のための重要なツールとなっている。
ここ最近発表されたものの中で、特に人気を集めたのは「説明責任と黒人の生命のためにできる行動についてのリソース」だ。
警察の残虐行為の被害者を支援するために人々が実行できる明確なステップを示したもので、まとめたのはジョージア州立大学でジャーナリズムを専攻する28歳の大学院生、カーリサ・ジョンソン。
FacebookやTwitterといったSNSはムーブメントの周知には最適だろう。いいね!やRTにより、認知を爆発的に広げることができる。
その一方で、繰り返しアクセスでき安定した情報の格納先を作ることには不向きである。有象無象の信憑性があいまいな情報が行き交い、情報が乱立してしまうことが多々ある。
「google docsが特に魅力的なのは、動的な性質と静的な性質を兼ね備えている点」だと、ニューヨーク大学のクレイ・シャーキー教授は言う。
編集可能であり、無数のユーザーが同時に見られる一方で、ツイートや投稿で簡単に共有できる。
前述したように、ただの1人の大学院生が作ったdocsが世界中に広まったのも、きちんと整理された情報の棚がTwitterという拡散プラットフォームに乗ったからだ。(女優ハル・ベリーがRTしたのも大きい)
今後もこのツールは、今まで「声なき声」だった一般人や、声を上げづらかった人々の味方となるだろう。
そしてテクノロジーの進化により、アイデア次第で無限の活用性が秘めていることも示している。
パブリックアートは単なる気晴らしなのか?
アメリカの首都ワシントンのホワイトハウスに向かって延びる大通りに、今月始めに黒人差別の解消を求めるスローガン「BLACK LIVES MATTER」が巨大な黄色の文字で描かれた。
アーティストのジョーンズ氏は、6月最初の木曜日の夜に仲間のアーティストから電話を受け、壁画のプロジェクトについて話を聞いた。
その時点では何をどこに描くのかは彼女は分からなかったが、故郷のワシントンD.C.のどこかの壁画になるということだけを知った。
その日の夜、他の7人のアーティストとのZoom会議でそのペインティングはホワイトハウスの前の数ブロックにわたる「BLACK LIVES MATTER」になることを知った。
そして、依頼主はなんとワシントンD.C市長のMuriel Bowserだった。
それは午前3時30分に開始し、スローガンを描くというもの。その大きさは衛星写真でもくっきり見れるほどのサイズとなった。
アートを描く場となった”キャンバス”は、6月1日にトランプ大統領が近くの教会で写真撮影をするため、平和的に集まったデモ隊に対してペッパースプレーを打ち込んだ場所だった。
市長は、「芸術を使って彼らに対して声明を出したかった」と言う。
大統領への抗議の意味も含め、デモが更に拡大することが予想されていたタイミングであったからこそ、「安全な場所であることを集結する人々に示す」ためにチームに指示し、今回のアートを描くプロジェクトを始めることにしたそうだ。
ジョーンズを含むペインティングを行ったチームは、朝早くに作業を予定通り開始した。
しかし、思ったよりも塗料が必要となり、2文字目の「L」が終わる前に用意していた塗料が終わってしまったそう。
しかも追加で準備された『黄色」の塗料は、僅かに色が異なり、また「B」から塗り直す羽目になった。
そんな様子を眺めていた見物人たち。プロジェクトの内容を知った市民たちは、何か助けることはないか尋ね始めた。更に多くのブラシと塗料が準備された。
7人のアーティストたちの役割は次第に、ペインターから多くのボランティアたちを統括するスーパーバイザーに変わった。
地元のニュースが現れ、それから全国ニュースが現れ、彼らの活動が取り上げられた。
市長は記者会見を行い、広場の名前が「BLACK LIVES MATTER PLAZA」に変更したことを告げた。
同様な壁画はシアトル、シャーロット、ブルックリン、ロサンゼルス、ダラス、デンバーなど他の都市にも製作された。
多くの人々は、この壁画が描かれた最初はその勇気と行動を賞賛した。
しかし、公開されて数時間も立たないうちにBlack Lives Matterのムーブメントのリーダーたちはこのアートの非難を始めた。
それは「ただのパフォーマンスで、実際の政策の変化を行っていない。」という指摘だった。企業がこの運動をSNS等で支持する際につきまとう批判と似たようなものだ。
単なる”芸術”でしかなく、実際の行動を伴っていないというものだ。
しかし、本当にそうなのだろうか。
スマホの画面上の意思表明ではなく、それが実際にパブリックアート(しかもホワイトハウスの前)として描かれたということ。
デモを行う活動家の人の家の壁(私有地)に描かれたのではなく、パブリックの場所に大きく描かれたことは大きな意味があるだろう。
デモに参加するある人は「時代が変わりつつあるという重要なシンボルになるかもしれない」と話した。
パブリックアートが単なる”芸術”(気晴らし)でしかないのか、それとも世界を変えるキッカケとなるのか。
パブリックアートが持つ可能性を含めて、その議論がアメリカ中でされている。
Is art a distraction from change or a catalyst? That’s the question at the heart of Black Lives Matter Plaza in D.C.—and across the United States.
Patternが始める小さなコミュニティ
以前のDIVINでも取り上げたPatternというチーム。
昔はGin Laneという名前で、多くのD2Cブランドのブランディングを行い、成功に導いてきた。
今は、Equal PartsというキッチンブランドとOpen Spacesというインテリアグッズのブランドを自身で取り組む事業会社へモデルチェンジをしている。
そんなPatternのInstagramのアカウントをフォローしているのだが、ある日彼らからDMが届いた。
それはコミュニティへの招待だった。
周りでもこのメッセージを受け取った人がいるので、フォロワーから無作為もしくは全てに行っているのかもしれない。
企業、特にD2Cブランドがコミュニティを形成するパターンは多い。
プロダクト開発時点においてコミュニケーションを深く取り、ブランドへのコミットメントを強くして、次第にコミュニティ化していく。関わる中で愛着が強くなり、ただの消費者でなくサポーターとしてそのブランドに関わるようになる。
多くの消費財と異なり、ニッチなプロダクトが多いD2Cブランドであること、そしてデジタル起点でコミュニケーションが取りやすいことも要因である。
「そのブランドやプロダクトを選ぶ」という時点で、サポーター同士は強い精神的な結びつきを持っている。それは仲間との安心感とも言える。
「わざわざ私たちはこれを選ぶよね」
「このデザイン、トーンが好きだよね」
「だから〇〇も好きだよね」
という趣味・思考に対する同調の安心感だ。
東京中に数多ある美容院の中で、同じ美容院をたまたま利用している人に出会ったときに
「あそこの〇〇が最高だよね!」
「〇〇さんのカットは本当にいいよね!」
と話している内に、何だか長年の親友を褒めてもらっているようで嬉しい気分になるのと似ている。
D2Cブランドでは、コアとなるアーリーアダプター・エバンジェリストたちをslackに招待したり、ニュースレターを配信したりしてコミュニティの結束を強めることが多い。
Patternではそのプラットフォームとして「Geneva」 を使っている。
Genavaはグループコミュニケーションツールだ。slackのようにスペースを作り、様々なチャンネルを作り、メッセージをやり取りできる。
slackの違いはビジネスライクではない、フレキシブルなコミュニティ形成に適しているとする。
実はこのGeneva、日本ではまだアプリ版を利用できない。
ちょっと面倒だが、ブラウザ版であれば利用できるのでサインアップして利用している。何でもまずは試してみることが大切だ。
Geneva is a flexible group chat app designed for organized, ongoing conversations with all your favorite people. Join or create a Home, set up text, audio, and video rooms for specific topics, and chat away.
Whether you're aimlessly hanging with best friends, keeping your club members on the same page, building a brand, or sharing opinions with peers across the country — there’s a place for everyone here.
コミュニティ内では、foodやhealth、D2Cブランドなど様々なチャンネルで会話が成されている。
現時点での参加人数は250人ちょっと。
見ず知らずの人たちが気さくに会話を始め、tipsや情報を交換してる様子は実に楽しい。
コミュニティは意図的に作るものでなく、結果としてできるものであると思うが、それをより効果的にするため、促進するためのツール・施策として参考にしようと思う。
Patternのミッションは「Find more enjoyment.」。
Geneva上でも彼らは今日も新しい”仲間たち”とともに、さらなる楽しみを探している。
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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edited by Ayumu Kurashima
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illustration : @mihirayuta