"DIVIN" Vol.13
『DIVIN』(ダイヴィン)は、国内外の様々な記事や読んだ本、面白いinstagramアカウントなど、生活している中で得た「誰かに教えたい情報」をお伝えするニュースレターです。
メジャーリーグの開幕に見る大型イベントの未来
いよいよ今月末に開幕を迎える、アメリカのメジャーリーグ。予定を3ヶ月遅れ、待望のシーズンが始まろうとしている。
日本のプロ野球のように、最初は無観客でのスタートとなる見込みだ。
しかし、未だアメリカ国内ではコロナウイルス感染症の感染者数の推移は落ち着く様子は見れず、選手たちの陽性診断のケースも次々と出ている。
そんな中、有観客になった際のガイドラインについての議論が始まっている。
メジャーリーグでも屈指の人気球団であるヤンキースのスタインブレナー球団オーナーは、そのキャパシティについて20〜30%を目安として考えていると述べた。
テキサスの球団は異なる見方をしている。テキサス州知事は、MLBのような屋外のスポーツは50%のキャパシティを許容する予定であると述べた。
シカゴの人気球団、カブスやホワイトソックスは20%を最大とする予定。
これらのように有観客試合に向けてのガイドラインは各州ごとで異なることもあり、議論が続いている。
著名な数学者であるCappell氏はヤンキースの本拠地、ヤンキースタジアムでの「6フィートのソーシャルディスタンス」のガイドラインに沿ったものでの算出を発表。
それは縦横3席ずつの9席の中央に人が座るというもの。つまり1/9に1人が座る計算となるため、スタジアムの収容人数に対してたった9%の入場者数となる計算だ。
スタジアムの構造に適して考えると、少しだけ比率は多くなり11%となる。
ヤンキースタジアムの収容人数は46,537人。去年まではチケットを得ることも難しく満席の試合が続いていたが、今年はスタンドの景色が大きく変わってきそうだ。
先述したスタインブレナー球団オーナーの数字にあてはめると、20%だと9,307人。 最も高い数値である30%だと13,961人がこのNYの人気球団に足を運ぶことになる。11%だとたった5,119人だ。
アウトドアイベントはインドアイベントに比べて安全性は高く、収容人数は高めの設定がされると見込まれている。
が、Cappell氏はもちろん、他の論者が指摘するのは「収容人数はいいが、トイレや駐車場、チケット売り場などはどうなるのか」という点だ。
誰もが7回の終わりにトイレに駆け込み、フードやお気に入りの選手を応援するためにショップに急ぐ。
アメリカでは近郊にスタジアムがあることが多く、車で向かう人も多い。巨大な駐車場を持つ球団が多く、駐車場からスタジアムまで歩く導線は混雑しているのが今までの常識だ。
収容人数の議論が終わった後はこういった細かいオペレーション設計のフェーズとなる。
5万人がほぼ毎日集まる大型イベント。課題が山積みで頭を悩ましている各球団だが、彼らの言葉は現実的で辛いものだ。
「メインの売上であったチケット収入とグッズ収入が無い今、どうすればいいんだ?」
ヨーロッパの有名サッカーチームでも破産に追い込まれたり、破産に近い状況になっているクラブは多い。
中々始まらないシーズンと見込めないチケット売上。その間も発生する選手やスタッフへの給与と施設や管理費。
不安を抱えながらも開幕へ向け、議論が進んでいる。
中国とインドの攻防と”デジタル植民地主義”
6月16日に起きたインドと中国の国境で起きた衝突。
中国側の声明と異なっているものの、インド当局はインド兵が少なくとも20人死亡したと発表した。
両国軍の衝突で死者が出たのは、過去45年以上で初めて。発砲はなく、主に石と棍棒による争いと見られ、双方に死傷者が出たとされる。
※武器を使わないのは、双方が核保有国であるため、エスカレートを避けるためであると言われている。
この中国とインドの国境紛争。政治的にも緊張感が生まれ、その後の展開は興味深かった。
インド政府は59の中国のモバイルアプリを禁止。
この中には日本でも人気だったり、聞き馴染みのあるTik Tok(インド内のユーザー数はなんと1億2,000万人)やWeChatがある。
これはセキュリティとプライバシーの問題のためとされているが、明白な動機は6月に起きたこの紛争による政治的なものである。
インド当局はこれらのアプリへのアクセスを禁止するようにインターネットサービスプロバイダーに命令。
つまり、すでにアプリがインストールされているユーザーでも強制的に使用ができなくなってしまうのだ。
中国はグレート・ファイアウォールと呼ばれるサイバーセキュリティを構築・ポリシーを持っている。中国ではgoogleもtwitterもFacebookも使えないことを誰もが知っている。
中国とロシアはインターネットのアクセスにおいて中央国家がそのパワーを強く保持し、国民をコントールしてきた。
インドもその傾向があるとも言われている。それは、時折インド政府が今回の措置のようにインターネットアクセスに介入してきた歴史があるからだ。
最も長い”閉鎖”はパキスタンとの紛争地域であるカシミールであった。それは7ヶ月あまり、204日間も続いた。
教育、政府のプラットフォーム、オンラインバンキングなどの特定のWebサイトを登録し、アクセスできないようにしたものだった。
しかし、国民の対応は中国とは異なるものだった。人々は法廷でインターネットの閉鎖に異議を唱えたのだ。
「インドのような民主主義ではファイアウォールを構築することは常に困難である」と言われる。
またTikTokは2019年にインドで1週間禁止された過去もある。このアプリが暴力とポルノを助長する、という裁判所の判断によるものだった。
だが、この時は既にアプリをダウンロードしていたユーザーは利用できたものの、締め出しを受けたことでTiltokhは1日あたりでなんと50万ドル(約5400万円)の売上損失となったと言われている。
今回の措置により、大幅のダメージを受けるとされている。
インターネットアクセスをより細かく管理することを国が求めるもう1つの論点として、”デジタル植民地主義”(Digital Colonisim)との闘いがある。
インターネットサービスやSNSが人々のインフラとなっていくにつれ、そのサービスを提供する大手企業に個人データが集中するという懸念だ。
これらの企業はアメリカか中国の2国となっている。
FacebookやGoogle、その他の多くのシリコンバレーの企業たちは、データを収集し、サービス・プロダクトを改善するために使用している。
”デジタル植民地主義”を唱える人々の主張は、これを事実上の独占と指摘している。利用者の増加とともに唯一無二の貴重な個人データを保持することで、更にそのアドバンテージが強くなり、ローカル企業が成長することを難しくする、という趣旨だ。
この”デジタル植民地化”のアイデア・コンセプトは、2015年にインドで最初に浮上した。それ以来、途上国やテック後発国でこの論調は強くなっている。
大国に侵略され、ローカルのサービスが中々伸びない現状に対しての長年の強い反発と、過去の歴史から来る恐れが招いていると言える。
この紛争の前からインドの人々があるアプリをスマホに入れる行動が注目を集めた。
それは中国製アプリを検出する「Chinese App Detector」というアプリ。
「Chinese App Detector」をダウンロードすると、利用者のスマホにインストールされている中国アプリを検出。そのアプリを削除するかどうかは利用者自身で判断できるというもの。
一方、5月に公開された「Remove China Apps」は中国製アプリを検出するうえ、自動的に削除する。
公開日からの2週間でダウンロード回数は100万回を上回った。ユーザーのレビューで星5つ中の4.9を獲得。
しかし、Google Playは「アプリケーションが、第三者アプリケーションの削除や無効化をユーザーに奨励し、誘導することを禁止する」とのポリシーに違反したとして「Remove China Apps」を取り下げた。
「Chinese App Detector」は7月10日現在、50万回のダウンロードを超え、9557件のレビューで星5つ中の4.5となっている。インド企業、Workholics InfoCorpが同アプリを設計・開発したという。
今回の59アプリの禁止措置のように中国アプリの締め出しは政府が主導していると言えるが、元々燻っていた中国に対する反発、そして”デジタル植民地主義”に対する恐れが集まって生まれた行動であったかもしれない。
2つの大国のもう一方、アメリカでも先週同じような動きが見られた。
アメリカが「安全保障上の懸念」を理由に、TilTok等の使用を禁止することを検討しているというもの。
ポンペオ国務長官は「アプリを使うことで中国政府に利用者の個人情報やデータが渡る恐れがある」と述べ、TikTokも含めた中国企業製のアプリの使用禁止の検討を発表したのだ。
米FOXニュースに出演したポンペオ国務長官は「人々に中国製アプリのダウンロードを勧めるか」と尋ねられると「中国共産党に個人情報を渡したい人にはお勧めだ」という辛辣な言葉さえ吐いている。
フランスの石鹸ブランド:unbottled
プラスチックフリーやエコフレンドリーを謳うスキンケアブランド、コスメブランドが増えたきたが、プラスチックをボトルとして必要としないプロダクト。
固体石鹸のボディウォッシュやシャンプーを販売するunbottled。
今年6月の正式ローンチながら、プロダクトの質の高さと洗練されたクリエイティブにより早くも注目を集めている。
そもそもそのプロダクト自体がエコフレンドリーというスキンケアブランドは以前紹介したFORGOに似た領域であると言える。
FORGOは北欧発のブランドで、粉末を溶かし作るハンドウォッシュ。初回はボトルが付いたセットを購入するが、その後は小さい袋を購入するだけ。
粉末が入った袋もプラスチックフリーで、かつ配送に使われるパッケージも紙が使われている。何より軽いため配送費も抑えられ、ユーザーにも嬉しい。(配送に掛かる二酸化炭素排出量も抑えられる)
Shopifyで構築されたと思われるサイトは写真が多く、商品説明にもアイコンが多用されていたり、ライティングも可愛らしく、サイト全体からポジティブな印象を受ける。
FORGOが北欧らしさを感じるクールな印象であるのに対し、unbottledは単価の安さもあり、より親しみが湧き、一度購入してみたくなる世界観だ。
自然素材にこだわっており、成分にはナッツやブロッコリーといったものが使われ、そのクリエイティブも秀逸。
英語表記に対応し始めたら、もっとサイトやSNSをチェックして深く情報を掴みたいところだ。
こういったクリエイティブにもとことんこだわったD2Cブランドがもっと日本に出てくればと本当に思う。
日常使いするプロダクトだからこそ、1つ1つに愛着が湧く思い入れのあるプロダクトを揃えたらどんなに毎日が楽しくなるだろう。
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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edited by Ayumu Kurashima
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