"DIVIN" Vol.18
『DIVIN』(ダイヴィン)は、国内外の様々な記事や読んだ本、面白いinstagramアカウントなど、生活している中で得た「誰かに教えたい情報」をお伝えするニュースレターです。
テクノロジーは宗教の壁を壊すか
インドのスタートアップ、Kalpnikが提供するのは VR Devotee(”VR信者”)というサービスだ。
9億人を越えるヒンドゥー教徒を抱える大国インド。3月のロックダウン以降、ヒンドゥー教の寺院は閉鎖されている状況だ。
コロナウイルス感染症が世界中で、そしてインド中で猛威を奮う前に始まったこのサービス。
DLしたアプリでは、ヒンドゥー教の寺院でのライブストリーミングや様々なコンテンツを見ることができる。人気のコンテンツは9000万回以上の再生回数を誇る。
基本的にはサブスクでの収益を得ており、コンテンツを持つ他企業との連携を進め、サービス内のコンテンツを増やしている。
200万以上の寺院があり、10億人を越える人々が暮らすインド。近い将来には中国を抜いて世界最大の人口を持つ大国になるとされている。
3名のファウンダーたちはそれぞれの悩みから、このサービスを始めることを思いついた。
高齢の母が1km離れた寺院に通うことが難しいこと。大切な会議があっても礼拝のためにキャンセルしなくてはいけなかったこと。
「自宅で宗教行為が出来たら、全ての悩みを解決できるんじゃないか?」その思いで始めたこのサービス。
インドでは9億人以上のヒンドゥー教徒の他にも2億人ものイスラム教徒、3000万人弱のキリスト教徒が生活している。
宗教関連のビジネスはもちろん存在する。アイテムを売る商店はもちろん、礼拝のためのロウソクを売るECサイトなど多岐に渡るものの、コンテンツを配信するサービスは中々なかった。
VRを装着してライブストリーミングを鑑賞する。360℃を他の信者に囲まれ、花びらが空中を舞う。煙が漂い、本当にそこにいるかのような高揚感が生まれる。
その高揚感こそが寺院に足を運ぶ重要性であると言い、それを提供できるのであれば大きな価値があるとファウンダーたちは話す。
一方でこのサービスに対する意見はそこまで良いものではなかった。
寺院に行くのは礼拝のためでもあるが、「人に会うこと」も大切な1つのことであり、それはバーチャル体験では果たせない価値があるというのが多い意見だった。
しかし、ロックダウンが続き人々が寺院に足を運べなくなると、司祭たちは信者たちにこのアプリをDLすることを薦め始めている。
彼ら信者と一番結びつきが強いのは司祭だ。その彼らの”お墨付き”を得られたことで飛躍的にユーザーも増えている。
ロックダウン中であっても、寺院の中では今日も礼拝が行われており、人々と宗教をつなげるため、信者が”神”にアクセスする方法が必要となる。
2010年に一人旅で訪れた2回目のインド。
そこで12年に一度開催される世界最大の宗教祭「Mela」に参加したことがある。インド中から人々が集まるこの一大イベント。
聖地ガンジス川には歩けないほどの人々が集まり、沐浴をし、礼拝をする。
高齢の人、障がいや怪我、病気の人、そして疫病・感染症により足を運べない人々への新しい宗教のアクセスになるのかもしれない。
簡単で楽しい、新しい習慣へ
Colgateの歯磨き粉といえば海外ではおなじみの商品。アメリカでも東南アジアでも見かける定番商品。
日本では使えない強い研磨剤(ホワイトニング成分)を含んだCrestはアメリカ旅行のお土産だ。
そんなColgateがミレニアル世代向けにD2Cブランドを展開。
消費財、特に歯磨きや歯ブラシを長年扱ってきたColgateブランドが発表するのはやはり歯ブラシだ。
Hum by Colgateと名付けられたスマート電動歯ブラシ。テクノロジーを駆使し、ユーザーのブラッシングの頻度、持続時間、および範囲を追跡するスマートセンサーが含まれている。
このスマート歯ブラシには、「より良いブラッシングのためのおすすめ機能」を提供するアプリが含まれており、アプリ内ショップでポイントを交換できる。
ショップでは、新しいブラシヘッドなどのHum by Colgate製品は勿論や、ヘルスケア関連のパートナーブランドとの結びつきもある。そして、このアプリはApple Healthと統合されている。
「消費者にとって、良い習慣は幸せで健康を保つための鍵であり、彼らは簡単かつ楽しい方法でその習慣を構築するブランドを好みます。」と北米のマーケティング担当副社長、ビル・ファン・デ・グラーフ氏は語る。
1日2回〜3回は行う歯磨き。”生涯続く習慣”であるこの行為をどうすれば、Humで行ってもらえるか、ミレニアル世代に対しSNSやインフルエンサー、ペイドメディアを用いてデジタルマーケティングを進めている。
生涯続く習慣であるからこそ、LTVは計り知れない。今までなにも考えずに選んでいた歯ブラシをこのスマート歯ブラシにスイッチできればColgateにとってはまたしても無い新しいビジネスチャンスとなる。
ひげ剃りのD2Cとして大成功を収めたDollar Shave ClubやHarry'sと同じ、LTVに可能性を大きく持つプロダクトだ。
このスマート電動歯ブラシは、Colgateのアクセラレータイノベーショングループから生まれた最初のブランド。
コロナウイルス感染症のパンデミックを受け、ECとデジタルメディアの消費が飛躍的に伸びている今、デジタルファーストの戦略を取り、大手企業であるColgateもD2C戦略を進めている。
デザインコンペから見るアイデンティティ
台湾で現在募集中のデザインコンペ。
ある政党が主宰するコンペなのだが、そのテーマは台湾のパスポート。
9月中旬まで応募を受け付けており、サイトでは気に入ったデザインへの投票もできる。各デザインのページにはコメント欄があり、人気のデザインにはコメントも多い。(もちろん読めないが)
現在使用されているパスポートはこちら。
中国政府の”One China Policy”を受け、台湾も「中華民国」という国名を入れている。表紙のデザインはシンプルなものだ。
一方、このデザインコンペに応募されている作品たちはユニークなものばかり。昨今の中国政府への反発もあり、中華民国ではなく「台湾」とのみ大きく載せる案ばかりだ。(というか、それしか見当たらない)
どんな色が自分の国を表現しているのか。
どんな要素、モチーフがいいのか、各デザイナーごとにアイデアを凝らしている。中には世界中でブームになりつつあり、「boba」や「バブルティー」という名で欧米でも人気のタピオカをモチーフにした案も。
現在サイトで人気を集めるのはこのデザイン。
緑とゴールドのシンプルな色使いの中に、台湾の島に熊や鹿、鳥や花など様々なモチーフが加わっている。
自分が好きだなと思ったのがこの案。こんなパスポートだったら、空港で出すのも楽しくなりそう。
食べ物をメインにした案を製作したグラフィックデザイナーはそのアイデアの理由について、
「食文化は政治や経済に影響されない、一番根幹のカルチャー。より深く台湾を表しているのは食文化だと思うのです。」
と語る。
中国を中心とした各国からの影響を長く大きく受けてきたからこそ出てきた想いとコンセプトだ。
パスポートというと遠い昔にデザインされ、政府から渡されるモノという印象がある。
このコンテストでは若い、次の世代のデザイナーとデザインを見たオーディションに向けて、自国について考えさせ(reimagination)、アイデンティティを深く考えるキッカケを与えている。
もしあなたが、日本のパスポートをデザインして。と言われたら、どんなデザインにするだろう。どんな色にして、どんな表記にして、どんなモチーフを使うだろう。
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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edited by Ayumu Kurashima
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