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nanadanaeko
何かあったら教⑧
「すごい荷物だったね〜」
荷物を降ろすのを手伝ってくれたニコちゃんママは、川辺にある大きな石の上で休んでいた。
「つい、何かあったらと思っちゃって」
「わかるわかる。ヒヤリハットって言葉もあるくらいだもんね。子どもの動きは予測できないよ〜」
帽子を脱ぐと暑そうに自分の顔を扇いでいる。私に「大丈夫」を押し付けてくる夫とは大違いだ。
「うちの子、胡桃のアレルギーがあるんだけど、こないだ市販のカボチャサラダを食べてさ。まさか胡桃が入ってるとは思わないじゃない? もう顔も体も真っ赤に腫れちゃって焦ったよ〜」
私だったらすぐナクサに電話してただろう。ニコちゃんママもナックに入るだけでそんな焦りとは無縁の生活を送れるのに、と思うとつい親切心が湧いて出て、「ねぇ、ナックって知ってる?」と聞こうとしたときだ。
ドーン!という地鳴りのような音とともに、耳をつんざくようなニコちゃんの叫び声が聞こえた。
すぐ音のした方に向かうと、直径50cmほどもあるだろう大木が、川を横断するようにこちら側に向かって倒れており、その根元で息子が下敷きになって呻いていた。
(つづく)