何かあったら教⑨
だ、、、だ、、、、だ、、、、、
だから言ったのに!!!!!
ツモった上がり牌を雀卓に投げつけるように叫ぶと、心臓がバクバク音を立てて体中が小刻みに震えているのがわかった。
だから言ったのに!!!
何かあったらってあれほど言ったのに!!!!
息子は顔を真っ赤にしながらウーウーと言葉にならない声を発している。震える手で携帯を探し、番号を押そうとするのだが指がうまく動かずスクリーンにタッチできない。
「すぐに助けるから!!」
息子に向かって叫びながら、ナクサの番号を思い出す。ナクサが何だっけ、ナクサを? ナクサに? 落ち着こうとすればするほど、考えが出口を探して混乱した。
震える手で携帯を触りながら、この責任は誰が取ってくれるのかを考えた。
息子がキャンプに行きたいと言わなければ、夫が行ってくればなんて無責任なことを言わなければ、ニコちゃんママが川へ行こうなんて言わなければ、こんなことにはならなかったのに!
苛立ちながら、ニコちゃんのママを睨むと
「ナクサナクサ…」
と慌てた様子で、携帯を触っている。なんてこと! 彼女もナクサリアンだっただなんて! 驚く私の横で、ニコちゃんママのケータイからコール音が聞こえた。トゥルルルルル、トゥルルルルル、トゥルルルルル…と3回目のコールの後
「こちらはナックサービスです。ただいま、大変電話が混み合っております。恐れ入りますが、しばらく経ってからおかけ直しください」
というガイダンスが虚しく響いた。
(つづく)