現代日本女性のふつう|「姑の遺品整理は、迷惑です」垣谷美雨
タイトルの通り、姑の遺品整理をする物語。
姑は、部屋中いたるところにモノをぎっしりと詰め込んで亡くなっていった。
対して15年前に亡くなった自分の母親は、生前に自分のモノはきっちり片付け、机の上に残されていたのは、指輪だけ。
主人公・望登子はひとりで片付けながら、姑に毒づき、自分の母親の立派さにあらためて感じ入る。
時間をかけて片付けをすすめていくと、生前は気づかなかった姑の別の顔が見えてくる。
では自分の母親はどうだったか、と振り返る場面が、せつない。
表紙カバーの著者紹介によると、垣谷美雨さんは、
「少子高齢化と介護、結婚難、熟年離婚、住宅問題など身近な題材を取り上げた作品で支持を集める」とあります。
垣谷作品ははじめてですが、たしかに、まわりでよく聞く身近な問題「実家の片付け」がリアルに描かれていて、読みやすい印象です。
個人的には、主人公・望登子の経歴が気になりました。
大学の同級生と結婚、出産。
専業主婦を経てジュエリーショップでパート勤務を約20年、現在50代。
子ども2人はすでに独立。
頻繁に連絡をとる友人・冬美も似たような経歴。
物語をよりリアルにする人物設定において、大学まで卒業してるのに、パート勤務なのか、という点。
つまり、それがいまの日本のリアルさ。
望登子や冬美が、活躍の場を職場に求めてきたか、それとも家庭に求めてきたか、作中には読み取れません。
ただし、現実は、確固とした本人の意思やライフプランがない限り(未来は予測できないから、ないほうが多数派だと思うが)、出産して会社を辞めたら、働きたいと思ったころにはすでに遅し、みたいなケースが多い。
私のまわりにも、同じような境遇の人がたくさんいる。
ちょっとメインテーマとは外れた部分が気になる読書となりました。
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