漱石とジェイン・エア
河出書房新社の全集から阿部知二訳の『ジェイン・エア』を図書館から借りてきたのは訳を比べてみたかったからなのだが、気がつくとそんなことはすっかり忘れて文字を追うことを止められない。
阿部知二訳はハードカバー二段組、525頁。
大変に長い。
吉田健一訳は文庫635頁。
吉田健一訳はおそらく特に短いんだろうけど、阿部知二訳は特に長いように思える。全集の525頁で、ハードカバーでもあり、重量もたっぷりである。ではあるんだが、全集の場合、小説以外の情報もちらちらとあったりする。この河出書房の場合にも『河出世界文学大系月報29 C・ブロンテ』なる小冊子がついている。そしてその中に、次のようなものがあった。
瀬沼茂樹『漱石ジェイン・エアを読み・・・』
そうか。漱石は英国に留学もしていて、英文学者でもあったのだった。そして『ジェイン・エア』も読んでいたらしい。しかもページの端にいろいろ書き込んでいるらしい。
「残酷すぎる、読むに堪えない」とか
「なんということだ」とか
「悪い、悪い、悪い男だ」とか
「当然だ、俺だってそうする」とか
ど、どこに書き込んだんだろう。
小冊子には『どんな箇所か、指摘できないのは残念であるが』となっていて、どこに書き込みをされていたのかさっぱりわからない。故に、「あそこか?」「はたまたここか?」などと妄想だけはたくましくなる。
むぅ。
『漱石山房の蔵書目録を見ると』とあるので、この『漱石山房』なるものにてご覧になったのであろうか。というわけでネットで『漱石山房』を訪ねてみた。
図書室もあるらしい。
https://soseki-museum.jp/blog/blog_other/1603/
だが、「漱石の蔵書」については記載がない。
うーむ。
『漱石山房』の図書については新宿区立図書館のOPACで検察できるそう。
確かに『漱石山房』がある。
なので探してみたんだが。
キーワード『ジェイン・エア』『エア』『jane』『Eyre』、著者『シャーロット・ブロンテ』『Charlotte』『Brontë』などなどで検索してもそのようなものはなく。
そもそも、漱石の蔵書をほいほい手に取れるのかという気もする。漱石の書き込みがあるとするとなおさらである。ジェイン・エアはたくさんあっても、漱石直筆書き込み付きとなると世界にただ一つである。持ち出しを禁止したとしてもたくさんの人たちが触れば紙は汚れ折れ破れする。今の時代、どう考えたってデジタル化した方がいいに決まってる。
う、う。
国立国会図書館デジタルコレクション
というわけで「国立国会図書館デジタルライブラリ」を探してみたんだが。
見つからん。
私の探しかたが悪いのか。
国立国会図書館のデジタルコレクションにはないのか。
いったいぜんたい、この世にこの日本にあるのやら。
いやいや、瀬沼茂樹氏はご覧になった・・・はず。
どこにあるぞな。
✴️
漱石が余白に書き込んだのとは別に、『文学論』にてはシャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』とオースティンの『高慢と偏見』との対比もある由。
にわかに漱石の『文学論』を読んでみたくなった。
残念なことに、まだ青空文庫には在らず。
まだ青空文庫にないということも意外ではある。
もしや、作業中とか?
では、なかった。
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