吾輩はMである。
私はMだ。
多分、本物のドMの方々に言わせればヒヨっ子程度のMだろう。
しかし、M歴で言ったら(ここでは自分がMであると自認した期間とする)齢23の人間にしては長いだろうと自負している。
ーー少し時を遡る。
俺は友人と共にKUMONに通っていた。
2人で色んな悪いことをしてきた悪ガキ友達である。
ふと、隣でペンを走らせることに飽きた友人がこんなことを言ってきた。
「これの裏表紙知ってるか?ヤバいんだぜ」
彼は『ひぐらしのなく頃に』のコミックを見せてくれた。
当時、彼の中では『ひぐらしのなく頃に』がブームとなっていた。
「?」
何がやばいのか、検討もつかなかった。
なぜなら、俺はそもそも『ひぐらしのなく頃に』を怖い話だと思っていたため裏表紙どころか話全部がヤバいと思っていたからだ。
彼が続ける
「すげえエロいんだ」
小学校低学年の頃から家のパソコンで「えろ」と検索していた俺の口からは自然と
「マジで?」
と発せられていた。
「マジで」
彼が答える。
彼は先生の目を盗み、机下に隠したコミックスの表紙を捲り、裏表紙を見せた。
そこには亀甲縛りされている女体があった。
コミックスの詳細を思い出せないのが悔しい。ネットで調べてみたものの著作物である上にコミックスを買った人のみがみれる限定絵みたいなところがあるため、なかなか見つからなかった。似た構図……ではないが、イメージだと『メイドインアビス』2巻の裏表紙を参照されたい。
「うお……!」
ペンは止まり、その絵に釘付けになる。
「やべーだろ?」
2人だけの秘密だぜと言わんばかりの表情でこちらを見る。彼はさらに続ける。
「縛られる方と縛る方ならどっちがいい?」
俺は刹那の間、フリーズした。
そして、その間に悩んだ。
どちらを言うべきなのだろうか……と。
察しのいい方や悩む側の人間では無い方は分かっているだろうが、ここでの一般的な回答は、「いやまだ縛るほうだろ(笑)」である。しかし、当時の俺は違った回答を出した。
「うー……ん、しば……られる方かな」
「嘘だろ!?俺だったら絶対縛るほうだわ(笑)」
(マズったあ……!)
当時の無垢な俺は嘘は良くないと思ったのだろうか、あろう事か本心を言ったのである。
この時、小学校4年生(10歳)である。
彼は先生に見つからないように笑いを堪えながら単行本を鞄へしまった。
……誰かが、ほんの少し優しければ俺は−−学校に通い、友達を作って、質問上手く答えることが出来ただろう。でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ、ロック。だから−−この話はここでお終いなんだ
ブラックラグーン #15「 Bloodsport Fairy tale PT.5」より引用
私の人生は始まったばかりである。
ありとあらゆる恥辱を、陵辱を受けてみたいと密かに思っている。
私は自分がマゾヒストである事に誇りを持っている。今までも、そして、これからも。