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マイ・ブロークン・マリコ

私が母親と喧嘩をして家を飛び出した夜、即座に親友に電話を掛けた。その日、彼女は「マイ・ブロークン・マリコ」という映画を視聴していた。

彼女は嗚咽しながら泣く私の話を電話越しに静かに聞いて、「そういえば私は今日マイ・ブロークン・マリコという映画を見たんだよね。(私の名前)、死なないでね、」と口にした。

彼女がそのように口にしたのは、「マイ・ブロークン・マリコ」という映画が、1人の親友を無くした主人公が、親元から遺骨を盗んで旅に出る話だからだ。

無論、私は死ぬつもりなんてこれっぽっちも無いし、彼女にもそんな気持ちは微塵も存在しないだろう。

しかし少なくともそのような意識が無いことには、彼女の口から“死”という単語は出てこなかったように思う。

私はきっと彼女が死んでも、親元から遺骨を持ち去ったりしないだろうし、もし持ち去ったとしても、いつも私の行きたいところに付いてきてくれていた彼女が行きたい場所を思い付く気がしない。

数回に1度は彼女との厭う記憶をふと思い出して、彼女の存在する世界を夢に見て、1人で寂しくなるのだろうと思う。

私はそんな彼女の存在の大きさを、今も十分知っている。居なくなってから、泣き叫ぶようなことはしない。

でも、もっと伝えるべき言葉あったのでは無いかと後悔する気はする。



映画を見終わって、ぼーっとそんなことを考えた。

「私の親友、死なないでね。」

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