一輪の福
雨あがりの早朝、水分を含んだ清らかな空気を纏い春の忘れ物を探しに行きました。
職場の周辺は以前からもっと知りたいと思っていて、休日のこの日も4時台の始発で出発。
電車は早番の日のいつもの顔ぶれでした。
乗り換えを挟み1時間ほど揺られるのもいつもとなにも変わらない。
いつもなら、なにも考えなくても駅から職場に勝手に向かう足だけれど、この日はルートを早々に外れる。
どちらにしようか迷うのも楽しい。
きっと違う方を選べは出会いも思い出も変わる。そんなことを考えると分岐点に立つ度にわくわくした。
見たことのなかった新鮮な街並みや景色、新たな発見もありました。
行き止まりの桜並木やくねくねの急な坂、緩やかに続く森の広い階段にも出会いました。
いつもの職場への道にもお気に入りのポイントがあって、ひとつは丸い葉の大きなユーカリの樹と、もうひとつは昭和初期に植えられたという、天を突くほどの高さの3本のヒマラヤ杉のある場所。
大きなユーカリの木は、幹も葉もなんとも言えないスモーキーな色をしていて、足を止めて眺める人も多い。
高く聳えるヒマラヤ杉は、風の少しでもある日には葉と葉がこすれて太くて低い唸りをあげる。
その真ん中の幹が最近元気がないようで、かなり心配しているところだ。
自然豊かな閑静な住宅街には、広いお庭のお屋敷やおしゃれな邸宅が整って並んでいます。植わっているものだって、なにもかもがセンス良い。
洋館も和館も四季折々の花や木に潤い、毎日同じ道を通っていても飽きることがない。
ちょっと体調を崩していた間に春の花々は競うように次々と咲いて、季節はずいぶんと駒を進めていた。
桜も藤も木蓮も菖蒲もハナミズキも美しい瞬間を見逃してしまって、どこか今年はおいてけぼりの私。
するりと春だけが抜け落ち、
ヤマボウシのまだ青い花に初夏を観る。
私達ももうすぐ次の季節にバトンを渡すよと、小さな水滴を乗せたシロツメクサがしゃがむ私を慰めてくれる。
誰もいない、湿潤の緑萌ゆる公園。
人に例えると中学生くらいかな…?
反抗期を知らない竹の子。
『マッチ1本火事のもと』
なんて防災のポスターを、毎年小学校の図工の時間に描いていたな〜!…なんてことを急に思い出す。
同時に、地域を練り歩く自治会の方々の「火の用心」の掛け声と共に響く拍子木の乾いた音を包んだ、だいぶ遠いいつかの冬の夜の香りも蘇った。
嗅覚と記憶の密接な関係を、食事やお散歩の時に感じることが多い。
重なる葉も美しい。
春の忘れ物を探しに来たはずが、
いつの間にか『今』を観ていた。
ゴミ拾いは、福拾い。
福をたくさん拾いました。
こんな写真を撮っている横では駅へと急ぎ足で向かう通勤の方々が連なって靴音をたてている。
小学校のグラウンドでは鉄棒の下にできた水たまりで水浴びをするセグロセキレイ。
これも春の忘れ物でしょうか…?
🌼
さらに電車に乗って黄色い木蓮の花を観に行きました。
自信はなかったけれど、白と紫が咲き終わった頃に咲いていた数年前の記憶だけを頼りに。
木蓮の花に黄色があるのを知ったのは3年前。
とても驚き感動したのを覚えています。
写真を撮っていると、
何を撮っているのかとよく話しかけられます。この日も。
会話から新たな知識や情報を得ることも多々あり、母よりも歳の上のお友達もできました。
🌼
藤棚のある公園にも立ち寄る。
もちろん、もう藤の時期は過ぎています。
ベンチには誰もいませんでした。
そして来る人もいませんでした。
もちろん枯れた藤を撮る人もいません。
きっとものすごく賑わっていたはずの少し前のベンチ。
想像の中のキラキラとした光景が浮かんで消えてゆきました。
今日のお天気は、
晴れでも雨でもなくて『藤』。
はらはらと藤の花が降ってきます。
激しく揺れる花、ピントも奥の枯れた房に持っていかれます。
落下を免れるたびほっとしながら、愛おしくてしばらく見守ってしまう。
『残り物には福がある』というのなら、一輪の藤もまた福でしょうか。
風に耐える一輪の藤に、様々な感情が重なって溢れ、私に春を違う角度からたくさん観せてくれました。
もとい、実際にはなにか食べ物でもくれないかと待っていただけかもしれません。笑
小学校低学年の頃、転校してきた学校の桜山で初めて覚えた野花です。
綿毛畑も幻想的でしたが、
“残っている春”の方を撮る。
黄色い嘴と黄色い脚がキュート!
ヒヨドリは番(つがい)でいますが、ツグミはたいてい一羽で行動しています。
ハルジオン?ヒメジョオン?の蕾を啄んでいました。
そう言えば…!
ハルジオンのピクルスが美味しいと聞きました。
ハルジオンって食べれるのですね!
調べると天ぷらやアヒージョ、胡麻和えにしている方もいらっしゃいました。
美味しいのは、蕾の部分なんだとか。
それよりなにより、毎年のようにこの時期になるとハルジオンとヒメジョオンの見分け方を検索する私。笑
こちらが1番わかりやすくておすすめです。
▼ハルジオンとヒメジョオンの見分け方
ありがたく何度も拝見させていただいております。
毎年毎年、本当にありがとうございます!!
だとするならば。
先ほどのツグミが啄んでいた花の蕾は、よく見ると葉が茎を包んでいるので間違いなくハルジオンです。
ツグミはグルメですね!ちゃんと美味しい部分を知っています。
既視感を覚え、もやもや…
お気に入りの便箋だと判明。
遠からず近からず…!悪しからず!笑
一輪の福。
残ったものも大切に思う、寧ろそれを美しいと考える日本の尊麗たる部分と言葉だと思います。時には哀しみを伴うことも知りました。
最後に撮った1枚のように、
我先にという世界ではなくみんな横並びに手を取り合って仲良く。
決して福を取り合うのではなく、独り占めするのでもなく、あまりものでいい。福をみんなと分け合える人間でいたいです。
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