「それを歯の矯正と呼ばないで」じゃあナニを矯正と呼ぶ?
幻冬舎社長・見城徹氏は言ったそうな。
表現とは 究極の自己救済だと。
こんにちは、不正咬合研究所・所長の ayataro です。
不正咬合(ふせいこうごう)とは、歯並び・かみ合わせが悪い状態の総称を指しまして、その治療方法が歯科矯正です。
僕の創作のきっかけは学会誌でした。
書いて投稿することで、確かに自分が癒されていた。
だが読者はごく限られた、その筋の人。
〈いいね〉も無ければ、〈スキ〉も無い。
自己を救済はしているが、読まれたい欲望は満たされない。
いつしか僕は学会誌から離れ、歯科矯正をいかに面白く伝えるかをテーマに、医療情報サイトでコラムを書きはじめました。
それから約1年。物には時節があるんですね。
そのコラムを基に本を出すことになりました。
歯の矯正への注目度は、新型コロナウイルスの感染拡大を機に増しており、5類に移行した現在も続いています。
しかし、それに伴い解決しなくてはならない問題が二つ、表面化してきました。
「歯並びがいい」=「よいかみ合わせ」ではない⁈
歯の矯正には、歯並びがいい=かみ合わせがいい
というイメージが定着していますが、実際は別物です。
イケメン=性格がいい。
これもそうあってほしい願望であって、別物ですよね。
この誤ったイメージが定着したことによる弊害が徐々に現れてきています。
「歯並びがいい」=「よいかみ合わせ」ではないのです。
〈歯並びがいい〉は、でこぼこが無く並んでいる様。
〈かみ合わせがいい〉は、
・前歯と奥歯の役割分担ができる
・顆頭安定位と咬頭嵌合位がほぼ一致している
・左右バランスのいい咀嚼運動ができる。
これらが備わっているものと言えます。
歯並びがいいことは美容、かみ合わせがいいことは機能なのです。
矯正さえ受ければ、両方が手に入ると思いがちですが、違います。
広い意味で形を変えることを矯正と呼ぶならば、矯正には種類があります。
その中で、歯科矯正を受けないと両方は手に入らないのです。
歯科ちんれつブームがやってきた!
今、歯並びだけ治す 歯科ちんれつ がブームです。
入れ歯、差し歯をつくる歯科補綴(しかほてつ)、
抜歯をする歯科口腔外科、
子供の歯科治療を担う小児歯科 などの診療科は認知されていますが、
歯科ちんれつ ⁈ など聞いたことが無い。
そりゃそうです。これは僕の造語だからです。
だから広辞苑にも掲載されていません。
人に見せるために前歯を「陳列」はしているが、機能であるかみ合わせは治していない状態です。
とりあえず見えている部分を良くすることが目的なので、
陳列して見た目を良くすることが、かみ合わせにどういった影響を与えるのか?
陳列してきれいにした形はいつまで維持できるのか?
といった予測や評価の必要のない作業です。
こういった歯科ちんれつが増えてきた中で、再治療も増えてきていますし、〈矯正歯科〉を掲げる歯科医院が増えている現状では、今後も再治療は更に増えてくるでしょう。
蔓延する矯正都市伝説
もう一つの問題は、子供をターゲットにした都市伝説です。
我々は、お医者さんから治療を勧められたら、何か理由や裏付けがあると思います。それが医療だと思っています。
ところが歯科矯正にはそれが非常に少ないのです。
そのため、
早く始めないと酷くなる、
あごを拡げておけば、将来でこぼこにならない などの、
科学的根拠があるとは言えない都市伝説が蔓延しています。
子供の治療開始時期は昔から早いほどよいとは言われてきました。
しかし近年の研究により、早く始めても歯の生え変わりとともに元に戻ってしまう症例があることや、一時的な効果しか認められない装置もあることが分かってきました。
そろそろ早ければよいという考え方を見直す時期でしょう。
本書のコンセプト
本書のコンセプトは、
「美容の一環としての歯並び本ではなく、歯科矯正を考える手順を記した実用書」です。
歯並びもかみ合わせも両方治したいけど、どう考えていいか分からない人、陳列はしたけど、機能という忘れ物をした人に向けて、歯科矯正の考え方をまとめてみました。
学会内でしか知られていない知識、現在は効果が薄いと考えられている治療法、陥りやすい注意点などを知ってもらえればと思います。
内容は思想編と治療編に分かれています。
思想編では、歯科矯正の概論を熱くならない程度に少々真面目に語っています。
治療編では、歯科矯正の基本的な考え方や進め方、小学生特有の事情、こうすれば効率のいい治療が出来るのではないかという僕の取り組みなどをまとめてあります。
教科書的にならないよう、手に取りやすいよう、グラフや写真を多めに使用していますので、歯科医院に相談に行く前の予備知識を入れるつもりで読んでください。
あなたの歯科矯正ライフに幸あれ!
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