仄暗い空の下で生きる小さな生き物たち(ムーミン展@六本木森アーツギャラリーに行ってきた備忘録)
六月某日、六本木森アーツギャラリーで開催のムーミン展に行ってきました。平日夕方、けっこうな土砂降りの日でしたが、思っていたよりたくさんの人が訪れていました。もっと空いているのを期待していたのですが、期間終了一週間を切っていたので、まぁ混みますよね。
展示の雑感
まずは原画の展示数の多さに興奮! です。そして原画のなんと小さいこと。手のひらサイズで描かれたキャラクターたち。ペン画が主で、その他に鉛筆、水彩など。
ほんとにもう、めちゃくちゃ小さいんですよ。心の中で何度「ハズキルーペ!!!!!」と叫んだか。見えない。見えないよ……となりながらも、その小ささが愛おしい。
そして、キャラクターのユーモラスで個性的な様子や可愛らしさのイメージが先行していますが、トーベ・ヤンソンさんの確かな画力にため息。素描のさささっとした線が生き生きとしていて、そこに心地よい風が吹いているのがわかる。風景や植物の繊密な描写もとても素晴らしかったです。
意外だったのは、トーベ・ヤンソン装画のホビットの冒険があったこと。知らなかった。その他にもムーミン以外の本の表紙、風刺雑誌に掲載された絵も展示されていて、これがなかなか興味深かったです。時間があれば添えられた文章全部読みたかった……。
展示終盤には、トーベ・ヤンソンさんのお写真もいくつか展示されていて、水着でポーズをとったり、泳いでいる姿がとってもチャーミング!
人形などの立体物の展示もありました。陶器でできたフィギュアはとても可愛らしかった。
あと、テキスタルがとても美しかった。色合いや風合いが、今の布とはまた違って、よい雰囲気なのです。
最後に写真撮影OKエリアがあり、パシャパシャ。
めずらしいにこにこなスナフキンがとっても可愛かった! この原画も展示されていましたよ。
好きなキャラクター
展示を見ながら、ああ、こんなキャラクターもいたなぁ、と思いを巡らせつつ、わたしは誰が好きなのだろうなーと考えました。
ミィかな。彼女の生き方が好き。好き嫌いがはっきりしていて、自分のやりたいことしか基本やらないという感じ、憧れる。あんなに小さいのに、とても勇敢。
苦手なのは……、あれ、苦手なキャラクター、多いな。
実はムーミンに出てくるキャラクター、絵に書いたような善人ばかりではないのです。ずる賢い、自分勝手、悲観的、厭世的、などなど。ちょっと煙たい人(?)が多いのです。
スナフキンはとても魅力的なキャラクターですが、わたし、ふらりと旅をするようなやつにろくな男はいないと思っております。惚れたらあかんやつです。
最近、改めて好きだなと思うのはモランかな。触れるものを凍らせてしまうけれど、彼女自身は光や暖かいものに惹かれて近づいていく。だけど凍ってしまう。孤独で悲しい魔物。
モランとムーミンが交流するエピソードはとても胸を打たれました。
展示ではモランの絵は残念ながら少なかったです。まぁ、登場も少ないですものね。
可愛いだけじゃないムーミンのお話
小説版を読んだのはもうずいぶん昔で、読み返そうにもたぶん押入れの奥の方なので容易には出せない……ので、ざっくりとした記憶で語ります。なおかつトゥーティッキとホムサの区別がわからない程度の知識なのですが……。
アニメやキャラクターグッズの絵の愛らしさからは想像できないくらい、彼らはシビアな世界に生きています。お話はちょっとシニカルというか、可愛らしさを求めて読むと「ひっ……」ってなるところもあります。
わたしにとってはそこがとても魅力的でした。
氷姫の姿を見た子りすは凍って死んでしまうのだけど、最期に美しい氷姫の姿を見られて幸せだった――とか。すごく突き放したような感じで、だけどとても惹かれる。
「春になったら一番に君の部屋の窓を叩くよ」(うろ覚え)
たぶんムーミン谷の冬だと思います。ムーミンたちは冬眠し、スナフキンは旅に出るシーン。お別れを悲しむムーミンに対してスナフキンが放った言葉です。えー。これ口説いてないですか。
あとは、キャラクターのところで書いたモランのエピソードも大好きです。
ばばーんと明るい太陽の下の物語というわけではなく、仄暗い中にいるからこそ小さな灯火が温かく感じるというか、わたしにとってのムーミンはそんな感じなのです。
まぁこれは記念ということで
鑑賞のあと、空いていたのでミュージアムカフェでコラボメニューを。
甘いものいきたかったけど、仕事終わりで行ったので空腹に耐えかねてパスタ。
うん。まぁ……。可愛いです。
美食家の方はこの予算でお土産をもうひとつかふたつ、購入することをおすすめしたい……。
テーブルもムーミンでした。可愛いなぁ。
グッズも少しだけ買ってきた。便箋とメモとポストカード何枚か。ノートも買えばよかったな。食器も欲しかったけど、迷い過ぎて疲れて断念。
左下は図録です。とても可愛らしい装丁で、印刷はエンボスになっています。展示品すべて網羅していて、この可愛らしさで2200円。ぜったい買ったほうがいいです。
というわけで、ムーミン展は本当に行ってよかった! できれば二回くらいは行きたかったな。
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