【箱男】石井監督トークショー この世に残すべき原体験
こんにちは。
福岡でテレビショッピングを中心に映像ディレクターをしている別府です。3児の母、共働きのフリーランスです。
去る8/31(土)、JR箱崎駅近くのブックスキューブリック箱崎店にて行われた映画「箱男」の石井岳龍(旧名、石井聰亙)監督トークイベントに参加してきました。
募集わずか2週間のスピード開催、台風で開催が危うい日程にも関わらず定員60人が満員。石井監督とブックスキューブリックのオーナー大井さんは地元が同じ福岡、同じ高校ということで同窓生も多く温かい雰囲気でした。
これまでの作品8割、そして「箱男」2割ほどについて語る地元で貴重なトークショー。これはその感想です。
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謙虚さと秘めた情熱
まずは石井監督、小柄でスマートでとても謙虚。
声も控えめだけど通る、朴訥とした落ち着いた印象でした。
しかしお話が進むにつれて映画について話すとその身体から発する情熱と丁寧でクレバーなお話の意外性がとても惹きつけられる素敵な方。
国内外で様々な現場や多くの俳優さんとお仕事されただけあり説得力がある、でも気さくで偉ぶってない。
映画や音楽に対する純粋な姿勢などに好感が持てました。
誰しもが持つ原体験と"プンクトゥム"
今回は地元福岡。
「この話わかりますかね?」とかなりローカルネタに花が咲きました。
石井監督の初期作品が地元福岡、特に千代や東区あたりで撮影が行われたこともあり「あのへんの〜」みたいな家族の家や街中での撮影話がとっても親近感!
そんなお話の中でおっしゃっていて残ったのが
「この景色を俺が残さないで誰が残す」という強い気持ち。
「自分がここにいるこの街、自分のこの感覚や体験を残す」
自分や家族が生きた景色。バイクで風を来る感覚。山笠の勢い水(きよいみず)の光景。これを映画に残すんだ。そのことへの強い想いを感じました。
私も以前、映像制作を目指したきっかけは高校時代に同級生とやった自主制作。自宅や学校で、友人と撮影をして夜中まで編集した原体験がベースになっているのでその共通点に感激しました。
▼私が映像の仕事を目指すきっかけ▼
そして度々現れた「プンクトゥム」という概念?現象?
それはふと足元に咲く草花やガラスの光や逆光の髪の毛などの目で観て何か私たちの感情に強く訴える世界共通の普遍的な映像の力。
ノスタルジーでもない、デジャヴでもない、強い感傷的なモチーフ。
これは実はひとりひとりの原体験で培う大切な原石のように感じました。
(詳しくは著書に書かれていました)
どんな経験も無駄じゃない!
「孤絶」と政治と自分革命
トークショー中に何度も「孤絶」という言葉を使われた石井監督。
孤絶し混迷する政治の問題を多くは語らずとも端々で感じました。
やはり表現者はテーマと課題が大事だなと改めて認識。
「箱男」の原作者、安倍公房氏は現在の東大医学部に入学した秀才。
石井監督は生前の安倍公房氏に会い映画化版権を直接交渉するなか(その後製作中断、さらに某有名監督によるハリウッドへ版権譲渡、そして日本へ戻ってきた話はここで書けない!)石井監督がおっしゃっていた安倍氏の「人の心の穴が見える」という印象的な言葉。
安倍さんは医者にはならなかったけど(この辺は漫画の神様手塚治虫氏のよう)文章や演劇、写真などで孤絶された人々の心を治したい、石井監督も社会に対して映画創作によって何かを変えたいという思いがあるのでは、とよぎりました。
ひとりが大それたことを出来ないかもしれない(大変謙虚でいらっしゃる監督のお人柄がまた素晴らしい)、でも自分が変わらないと身近な人や社会は変わらないんじゃ無いか。
ぬくぬくとした箱から出て戦わなきゃいけない時がある、
そんな勇気と覚悟をもらいました。
自分が変わるためには強い自分の原体験から湧き出るものが大切だと言われていましたが、私は何だろう?と考えると今はただ「怒り」のような気がするなと思いました。
子育ての不自由の怒り。
男女不平等の怒り。
感情は前に進むモチベーション。
あなたの感情の源泉は何ですか?
それを深く深く追求することが大事だと本にも書かれています。
その熱い普遍的な不満や怒り、喜びや悲しみを誰か共感する人がいる限り芸術(映画は時間芸術!)は成り立つのだろうと思いました。
音楽とエネルギー
石井監督の映画で切っても切り離せないのが音楽。
過去作品「ELECTRIC DRAGON 80000V」や「爆裂都市 BURST CITY」などめんたいロックの影響から昇華させた映画についても語られました。
そして「箱男」でも音楽や音へのこだわりは素晴らしく、映画のリズム感、テンポ感のお話も大変興味深かったです。タルコフスキー監督はアンビエント音楽のような編集、とか…
先ほどの「伝えたい熱く湧き上がるもの」これは音楽にも通じるものがありそのあたり作風の決め手みたいなことを他の映画も例にお話されていてとっても面白かったです。
他にも永瀬正敏さんや役者さんについて、夢野久作さんの息子さん出演映画について様々あっという間の2時間でした!
一番の応援はお金!
さて。
映画製作には大金がかかります。
やりたい企画はいくつかあってもお金が出ない、映画文化を保護する海外を知るだけに石井監督の政治や自治体への思いも訴えられていたのが印象的でした。
監督はアートだけを極めるわけにはいかない、娯楽としていかに多くの人に見てもらうかということも苦心されているんだなと改めて思いました。
結局は映画館に行って映画を見て、そして次回作を作れるように。
まずは「箱男」観てくださいとおっしゃっていて、私も観ましたがもう一回必ず映画館で観ようと思いました。
しかもこの作品は映画館で見るべき視覚や聴覚の仕掛けが特徴的。
だからこそ打ち切られる前に是非とも観てほしいと思いました。
そして石井監督の著書も気になった方は是非。
私もテレビショッピング中心に映像ディレクターとして超広義な意味での映像制作に関わっていますが、企画の立て方から演技指導、カメラワークなどの技術的なことから映画の歴史など大変ためになります。
さらに、映画創作を通して自分自身の内面を見つめることについて、心理学や仏教、禅、また石井監督の幼少期エッセイ(西日本新聞掲載)まで載っており、ちょっとちょっと幅広すぎ〜な内容でお勧めです。
約10年間、長編映画を制作されなかった期間があるからこその精神的な深み、大学で学生達に教える経験を通した学びなども知ることができます。
やっぱり無駄な経験なんてひとつもない!
私も頑張るぞと気分を改めました。
まとめ
以上、映画「箱男」監督トークイベントの感想でした。
これでも2時間のうち2割くらいしか掬い取れてないのでは?というほど大変濃厚な時間でした。(キューブリックの大井さんの企画力に感謝)
地元福岡や映画製作のエピソードなど、興味深いお話が盛りだくさん!
石井監督の謙虚さや情熱に触れながら、作品への思いを知ることができました。
「箱男」は映画館での視覚や聴覚の仕掛けも特徴的、ぜひ一度映画館で観てみてください。今後の石井監督の活動にも注目です。
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