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文学を学ぶことが「ネタバレ」の楽しみ方を教えてくれる

私は、ネタバレされたい人です。面白い作品があったら、ぜひネタバレと共に感想を教えてほしいと思うタイプです。

ただ、世の中では「ネタバレ」は絶対悪のように語られることがあります。ネタバレ許容派である私は、ネタバレしないように、そして、ネタバレを求めていることを悟られないように気をつけながら生活しています。
夫と映画を見る前に、私がせっせとネタバレを調べているのを見て、夫にいつも責められていましたが、私にとってその作品を味わうために必要な作業の一つなのです。

おそらく、文学を本格的に学んだ人ほど、似たような人が多いのではないでしょうか。それは、ストーリーラインが事前にわかっていても、それが作品を楽しむことに大きな影響を与えることはないからです。

ストーリーラインを知らずに、展開される物語を新鮮な気持ちで楽しむことも一つの楽しみ方です。もちろん、この楽しみ方を否定することはしませんし、ネタバレを許してほしいと思っているわけでもありません。

ストーリーを知ることで得られる解釈の深さ

あらすじを知っていても、キャラクターたちがどのようにそのあらすじを辿っていくのかということは実際に作品自体を見なければ分かりません。

結末を知った状態で物語を読むと、ストーリーの細部やキャラクターの心理描写により深く注目することができます。ネタバレを知っていることで、セリフ一つ、シーン一つとっても、自分なりの味わいが増えるんです。ストーリーをパッと見てみた時と、実際に作品を観たり読んだりし終えた時に、違った解釈を持っていることの方が多いです。

私は、これがライブで音楽を聴く感覚と似ていると思っています。

多くの人がライブに行くとき、すでに曲のメロディや歌詞は知っていますよね。それでも、ライブパフォーマンスのその場限りのアレンジや演奏の雰囲気、その場の空気感を楽しむことができます。

同じ曲でも、何度も聴いても新たな発見や感動を味わえるように、ネタバレを知ったうえでの読書もまた、作品の別の面白さを発見する体験になるのです。

ライブの観客が、その瞬間ごとの演奏に耳を傾けるように、私もまた、物語の細部に注目しているのです。

文学が与えてくれた視点の広がり

文学研究においては、物語の結末やプロットを知っていることが前提です。

研究者たちは作品を解釈するときに、物語の展開そのものではなく、その背後にあるテーマやメッセージ、キャラクターの動機を探ることを重視します。これは、結末を知った状態でも、その過程にこそ価値があると考えているからです。

聖書やシェイクスピア、ドストエフスキーなど、長くたくさんの人に読まれてきた作品たち。手垢だらけのこの作品を、今でも研究している人たちがたくさんいるのもそのためです。

ストーリーラインを知っていても、はたまた、作者がどのような意図を持って作ったと知っていたとしても、受け手によって新たな解釈が生まれてくる。これが文学研究の面白い点でもあります。

この視点は、ネタバレが作品の楽しみを損なうのではなく、むしろその深みを増す手助けをしてくれるという考え方に通じています。

結末を知っていることが、物語の中で「なぜその展開が起こったのか」や「どのようにそれが描かれているのか」により深く注目させてくれるのです。

コンテンツが多すぎる問題

そして、もう一つ。世の中に楽しみたいコンテンツが溢れすぎているというのも問題の一つです。世界中にたくさんの作品が日々産まれています。Netflixの新作も見たいし、noteで面白い記事も読みたければ、新作の映画も、過去の名作も全部楽しみたいのに時間がない。

本当に好きな作品であれば、何度も同じ作品を味わうための時間は惜しみませんが、そうじゃなかった時、わざわざもう一度見ようとは思えないのが現実です。

自分にとって「面白くない作品」にも、それならそれを楽しむための方法があるものです。生理的に無理といった、どうしても楽しめない理由が限り、単に「つまらなかった」と作品を投げ捨ててしまうのは、私の主義に反しています。

そういったことを避けるためにも、予習が必要なのです。

ミステリなど、「結末」が大切な作品ではどうしてるのか

これに関しては、ちょっと難しく感じています。私はミステリでも楽しめますが、ミステリ特有の緊張感などは損なわれてしまっている気がします。

前置きとして、私がミステリというジャンルを読み始めたのは、ミステリの作品を大学の講義で扱ってからで、普段からたくさん読むタイプではありません。

その講義は、有名な作品のレトリックについて解説したり議論するもので、参加しているだけでネタバレの嵐でした。

たとえば、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』や『アクロイド殺し』、さらには『オリエント急行殺人事件』など、名作が続々と。

正直に言うと、ネタバレを読んだ段階で「ええ! そんな!」と驚くことが多かった作品たちですが、何も知らずに読んだ時の物語のテンションを楽しむドキドキ感は少なかったかもしれません。しかし、これらの作品はレトリックが楽しめるため、ネタバレを知った状態でも楽しむことができました。

私は本格的な推理物のミステリよりも、叙述トリックが面白いミステリが好きなので、結末を知っていても楽しめる作品を選んでいるのかもしれません。たとえば、『十角館の殺人』や『ハサミ男』、そして『インシテミル』など、構造や仕掛けに興味を惹かれる作品であれば楽しめると思います。

ネタバレも使いようで楽しみ方が広がる

いかがでしょうか?正直、ネタバレ許容派って少数派だという自覚はあるので、いつも身を隠していたのですが、「結末を知っても楽しんでるんだよ!」というのを少しでも伝えられたら嬉しいです。

ちなみに、映画の「リング」とっても怖いですが、小説のリングシリーズを読むと全然怖くなくなりますよ!私は原作のおかげで、映画のリングを最後まで目を覆わずに楽しむことができるようになりました。

ホラー映画は何気に奥深いものがあるので、私は怖がりであらすじを見ないと見れません。ネタバレを知ることであえて本来の楽しみ方を否定するという方法もあります。

ただし、グロテスクな映画、これだけはネタバレではどうにもなりませんので悪しからず。

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