《神話-5》太陽神アポロン
こんにちは。
Ayaです。
《神話》の第3回で紹介した『オリュンポスの12神』でまだ取り上げていない神々について書こうと思います。トップバッターはアポロンです。
アポロン
アポロンはゼウスとレートーという女神の息子で、アルテミスの双子の兄です。へーラーの嫉妬によって地上でこどもを出産できなくなったレートーは神々の助けでなんとか出産します。アポロンとアルテミスが生まれた瞬間、世界は光に満ちあふれたとされています。
さて、アポロンは太陽神とされます。しかし、太陽自体にはヘリオスという別の神がいます。ギリシア神話では、太陽はこのヘリオスが運転する馬車とされています。では、アポロンはどんな神なのかというと、『光明』を司る神とされています。元々アポロンは北方民族の神であり、その文化圏を取り込むためにこのように重なってしまったと考えられます。ローマ神話では1人の神として祀られており、同じようなことが妹のアルテミスでも起こっています。
その北方民族では流行病をもたらす疫病神として畏怖されていましたが、ギリシア神話では180度変わって『医学の神』とされ、さらに転じて『芸術の神』ともされています。
しかし、古代ギリシアで最も崇拝されたのは、『予言の神』としてでした。彼の聖地デルホイでは巫女たちを通して語られる彼の信託、つまり『予言』を求めて参拝者が絶えませんでした。
さて、そんな彼はギリシア神話中一・ニを争うイケメンでした。しかし彼の恋愛エピソードは悲しい話ばかり伝わっています。
ダフネ
北方民族では弓矢で流行病を撒き散らす神として恐れられていたためか、アポロンは弓矢の名手とされます。そんな彼は愛の神エロスが弓を構えているのを見て、小馬鹿にします。
このエロス、脇役として何回か登場していますが、見た目は子ども(名探偵コ○ンみたいな)ですが、アポロンより古い神なので、当然面白くありません。そこで、あるイタズラを思いつきます。アポロンに誰にでも恋に落ちる黄金の矢、相手には誰でも嫌悪する鉛の矢を射ることにしたのです。そのとき、たまたまニンフのダフネが通りかかったので、そのターゲットとされてしまいました。
エロスのイタズラによって、アポロンはダフネに一目惚れし、ダフネはアポロンに嫌悪感を抱きました。アポロンはダフネを追いかけ、懸命に口説きますが、相手にされません。ダフネは必死に逃げまどいますが、アポロンに抱きすくめられてしまい、河の神である父に助けを求めます。最高神のひとりであるアポロンに歯向かうわけにも行かず、河の神はなくなく娘を月桂樹に変身させました。
この『アポロンとダフネ』のエピソードもたくさん絵画化されていますが、一番有名なのはベルニーニによるこの彫刻でしょう。
前回紹介した『ペルセフォネーの略奪』より技巧が冴え渡り、彼の最高傑作とされています。
アポロンはダフネをいつまでも悼むため、月桂樹を自らの聖樹(象徴する木)としました。
ピュアキントス
アポロンの悲恋エピソードはこれだけではありません。
古代ギリシア神話では同性愛が一般的だったという話はゼウスの稿でも触れましたが、アポロンにも同性の恋人がいました。彼はピュアキントスといい、二人はよく円盤投げをしてあそんでいました。
この二人に嫉妬したのが、西風の神ゼピュロスです。ゼピュロスはピュアキントスに思いを寄せていましたが相手にされなかったので、二人の仲に嫉妬したのです。嫉妬にかられたゼピュロスは、アポロンの投げた円盤を、ピュアキントスの頭に直撃させました。アポロンは必死に手当てしましたが、さすがに助けることはできず、ピュアキントスは死んでしまいました。アポロンは彼の死を悼み、彼の血を『ヒヤシンス』に変えました。ヒヤシンスの花言葉は『悲しみを超えた愛』です。
さて、アポロン本人についてはとりあげたので、その息子たちについてです。彼らも悲しい結果となっております。
アスクレーピオス
アポロンはコロニースという女性に惹かれ、関係を結びます。コロニースとの連絡係には人語を話す純白のカラスを使わしていましたが、そのカラスがコロニースの浮気を知らせました。アポロンはこの報告に怒り、コロニースを殺してしまいます。コロニースの妊娠を知らされていたため、アポロンはお腹のなかから赤ん坊を取り出しました。この子どもがアスクレーピオスです。(ちなみにウソを告げ口したカラスは真っ黒に焼かれてしまったので、我々の知る黒いカラスになりました)
アポロンはアスクレーピオスをケイロンという賢者に預け、養育させました。アスクレーピオスは幼いときから医学を学び、有能な医者となりました。そしてついには死者を蘇生させる医術も身につけました。すぐにその噂は広がり、世界各地から彼の治療を求めて人々がやってきます。そのたびにアスクレーピオは彼らを甦らせますが、この状況を苦々しく思っていた神がいました。冥界の王・ハーデスです。ハーデスは『このままでは人間が死なず、冥界と地上の人口のバランスが崩れてしまう』とゼウスに苦言を呈しました。この苦言を聞き入れたゼウスは、雷を落として、アスクレーピオスを殺してしまいます。
息子を殺されたアポロンは嘆き悲しみました。実際に手を下したのはゼウスですが、最高神ゼウスに叛逆することはできません。なので、凶器となった雷をゼウスに献上した巨人を殺してしまいました。ゼウスはアポロンをオリュンポスから追放し、アッシリアの王に一定期間仕えるように命じました。
こうして命を落としてしまったアスクレーピオスでしたが、死後『医学の神』として崇拝され、神殿は病院として機能していました。彼がよく持っていた『ヘビのまきついた杖』は現在でもWHOのシンボルに使われています。
オルフェウス
アポロンの息子としてもうひとり有名な人物がいます。竪琴の名手だったオルフェウスです。実は別の神の子でしたが、『芸術の神』であるアポロンが彼の演奏に惚れ込んで、養子とし愛用の竪琴を授けたという説もあります。
さて、このオルフェウスには愛妻エウリュディーケがいました。しかし、エウリュディーケはヘビに噛まれ死んでしまいます。愛妻の死に嘆き悲しんだオルフェウスは、エウリュディーケを取り戻そうと冥界に下りました。冥界で彼が演奏を披露すると、冥界の神々は彼の竪琴の音色に魅了されました。またペルセフォネーの懇願もあり、ハーデスはオルフェウスの願いを聞き入れました。オルフェウスの後をエウリュディーケに歩かせることとし、『地上に出るまで後ろを振り返ってはならない』と命じました。愛妻を取り戻し意気揚々と歩くオルフェウスでしたが、本当にエウリュディーケがついてきているのか心配になります。そして地上へあと一歩となったところで、不安に駆られ振り返ってしまいます。その為、エウリュディーケは冥界に連れ戻されてしまいました。
愛妻を取り戻せなかったオルフェウスは絶望して、女性との関わりを断ちました。彼に相手にされなかった女性たちはディオニュソスの祭りでトランス状態となり、オルフェウスを八つ裂きにして殺してしまいました。八つ裂きにされたオルフェウスの遺体は海に投げ込まれ、首はレスボス島にまで流されます。首を発見したレスボス島の女性たちは拾い上げ、埋葬しました。こうして、オルフェウスは愛妻エウリュディーケと再会できたのです。レスボス島は彼の聖地となり、サッフォーをはじめたくさんの芸術家を輩出しました。
アポロンはオルフェウスの死を悼み、彼の竪琴を天空に上げ、琴座としました。
『太陽神アポロン』、以上です。たまたま通りかかっただけなのにターゲットにされてしまったダフネ、可哀想ですね。その上ストーカーのアポロンの聖樹にされるって、気の毒すぎです‥。アッシリア王に仕えている間は、頼まれて妹のアルテミスに頭をさげるなど、苦労もしております。アポロンのエピソードは他にもあるので、また取り上げたいです。次回は妹のアルテミスについて取り上げる予定です。