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ポシェット付きのお洋服がほしいの

子育ての中で、反省はつきものだ。
だけど、あの日のことは、反省を通り越して、
思い出すだけで、胸がギュッと苦しくなる。

ことの発端は、次女の誕生日プレゼントだ。
間も無く5歳になる次女は、日々、誕生日プレゼントに何をもらうかを考えて過ごしていた。

おもちゃ屋さんで配っていた、おもちゃのチラシを広げたり、
子供用の雑誌の巻末に載っている最新おもちゃの広告をみたり、
とにかく、自分が知りうる、おもちゃの情報を片っ端からかき集めて、
誕生日プレゼントにピッタリのおもちゃを見つけることだけをしていた。

夜になり、ベッドに入ると、真っ暗な部屋の中で
「ママはどう思う?プリキュアの変身のパクトは一番欲しいからママからもらおうと思うの。じゃあ、バァバからは何にするのがいいかな?バァバは、働いていないから、少し安いものがいいと思うの。」
と、大人の懐事情まで、考えた上で、
その中で最も欲しいものを、私と、バァバと、私の妹に振り分けてお願いする予定だった。

因みにもう1人の祖父祖母からは、すでに誕生日プレゼントをもらっていて、それもおもちゃだ。

ちょっと甘やかしすぎじゃない?
と言われてしまうと、まぁそうなんだけど、
我が家は誕生日とクリスマス以外で、おもちゃを買わない。欲しいと言われても絶対に買わない。
たまにガチャガチャをしたり、お祭りでクジをやってもいいよ!ということはあれど、
本当にその程度だ。

だから、欲しいおもちゃを誕生日にもらわなくては!と、4歳なりに必死なのだ。

何のプレゼントにするか、何となく決めつつあったある日、次女が
「保育所で、ポシェット付きのお洋服が人気があるんだー」
と、話し出した。
「どういうやつ?」
と聞くと、つまりは、こういうデザインのものだった↓


「◯ちゃんも、♡ちゃんも着てたわ。あとは、△ちゃんは、長袖じゃないけど半袖のそういうやつを着てた。人気あるんだなぁ。」

と、言いながらニヤニヤする。

次女の思惑は、こうだ。

「私もめちゃくちゃ欲しいけど、誕生日プレゼントにはしたくない。洋服って必要経費じゃん?」
だ。
いや、4歳だからここまで明確じゃないのだけど。
そして、おもちゃを買って!は、通用しないけど、
服ならいけるんじゃないか?と、考えあぐねた結果の、おねだりだ。(厳密にいうとおねだりをしてもいけるか!?を見計ってる段階だったけども)

で、ママである私のアンサーも
確かに!服ならまぁいいよ!買お!だった。

何せ、次女は次女の宿命として、長女のお下がりばかり着ているし。
しかも、長女のことを愛してやまない次女は、
「おさがりぃ!?」ということもなく
「ねぇねが着てた服なら着るわ!」という感じで、袖をとおしてくれていたし。

そんな次女が珍しく、欲しい!と思ったポシェット付きのお洋服なのだ。
買ってあげようということで、子供服店の聖地、アリオ札幌へ向かって、隅から隅まで探した。すぐ見つかるはずだった。だって子供服にありがちなデザインで、その服を着てる子を私も何人もみかけていたから。
なのに、ポシェット付きのお洋服をみつけることはできなかった。

セール品で一点だけ、似たようなものを見つけたけれど、ポシェットの部分がエビフライの形になっていて、
「エビフライポシェットのお洋服ならあるわ。これにする?」
と聞くと、
ううん、と首を振り、
「なんか、もっと、リボンとかハートとかの可愛いやつなんだよ。エビフライならいらないの」
というのだった。
そりゃ、そうだ。なんでエビフライにしたんだよ、このブランドは。と、ちょっと怒りすら覚えて、仕方なくその日は諦めて帰宅した。

ネットで探しても、思っていたものが見つからず、
これにしとくー?というものも、
次女のお眼鏡にかなわない。
次女の中に明確なイメージがあるようで、
妥協はできないのだ。

「ないものは仕方ないからさ、見つけた時に買えるといいね」

と言って、数週間が過ぎてしまった。

で、私はすっかり忘れてた。ポシェット付きのお洋服のことを。
忘れて次女には他の可愛い服を買い与えてしまっていた。次女も満足して、ポシェット付きお洋服のことを話したりしなくなっていた。

だけど、探し物っていうのはいつだって、探してない時に急に見つかる。

いつもは入らないお洋服屋さんに、たまたま次女と2人で入店したときのこと。

大きなテーブルに、真っ白のチュニック型のお洋服が並んでいて、
そのチュニック型のお洋服には、ハート型のポシェットにさくらんぼがついたデザインが施されていた。

「ま、ま、ママ!あった!あった!」

と、喜び
「あったじゃん!!!!やったね!」

と、言った後に、我に帰ってしまった。
誰が?私が。それで、問いかける。

「でもさ、こないだ他のお洋服買っちゃったじゃん?だから、これ買えなくない?」

一瞬にして固まる次女。

「あー確かに」
と言いながら、ヘラヘラ笑う。
会話は、続く。

「これはさ、バァバの誕生日プレゼントにしないの?」と、私。

「んー。でも、他のものお願いしちゃった」と次女。
この辺までは次女もニヤニヤしていた。
あのニヤニヤは、どういう心境だったんだろう。
あぁ、もう、書いててこの辺から胸が痛い。

私が、
「でもさ、この服も欲しいんだよね?もう他のお洋服買っちゃったけど、これは何のプレゼントになるのかな?誕生日?」
と聞いた時に、次女の表情から笑顔がなくなった。
「うん。そうだね。…何のプレゼントにもならないね。」
と、いい、大きな瞳で私のことを見つめて

「だから、がまんするね。」

と言った。
その、瞬間に、次女の目から、大粒の涙が、ポロンとひとつこぼれ落ちた。

次女は続ける。
「ねぇねも、お洋服買ってもらってないし、誕生日にはおもちゃが欲しいから。がまんする。」

と、一息で言い切ると口を一文字に結んで、
駄々をこねることもなく、ぎゅっと私の手を握り、
もう一粒、涙をこぼした。


胸が張り裂けるかと思った。
あんなに欲しかったポシェット付きお洋服。
ハートのポシェットにさくらんぼ付き!
次女が思い描いていた通りのお洋服を目の前して、
それでも、ガマンする。と4歳の娘に言わせてしまった、自分の愚かさよ。
好きな時に好きな服を買ってる私は、
子供にだけ我慢を強いてしまっているように思って、苦しくなってしまった。
かと言って、何でもない日のおねだりに、
買ってあげることが正しいのかも、わからない。

だけど、やっと見つけた、欲しかったものを目の前にして
「我慢するね」
と言う4歳児は、あまりにも聞き分けが良すぎるんじゃないかなと思って、

胸が張り裂けそうになったのだ。

私、何やってんだよ。って、思ってしまったのだ。

それで、
「そっか、でもわかった。今回だけは次女ちゃんがいい子にしてたし、このお洋服買おう!ガマンするって言えたの偉かったね。」
と伝えた。
見かねた夫が
「当然だわ!!お前のニットキャップより安いぞ!!!!!!!」
と、泣いた次女をフォローした。

ポロ、ポロと、涙が溢れた次女は、
もみじくらいの小さな手で、それを拭うと
ニコッと笑って
「ありがとう!!」
と言った。


………
こういうことを書く時に、私は世界の中で自分だけが、ダメな母親なのではないかと思う。
こういう日常の中で起きたことを、書き留める作業をすることも含め、酷い親なのではないかと、震える。
震えながら、激しく反省をして、いまこの瞬間も、私は子供達を心の底から愛していると思う。

なのに、あの日、泣かせてしまったことや、
結局、だけど、何のプレゼントでもないのに、なぜ買ってもらえたのか、
その辺のルールがあやふやであることも、
全部込みで、ダメな親だなぁと、猛省するのだ。


次女は、買ってもらった、ポシェット付きお洋服を、帰宅後すぐに着て
大きな鏡の前でウットリしていた。

「大事な時に着ていく!」
と言って、自分で畳んで引き出しにしまった。

ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ、胸が張り裂けそうだった。

「そうだね!すごく似合ってるよ!」
と伝えたけど、心の中では、ごめんね、と言い続ける。

ごめんね、ごめんね、ごめんね。

何度伝えても、足りないし、
次女は買ってもらえたことを喜ぶばかりで、
その無邪気さが、より切ない。

甘やかしすぎだろと言われても仕方ない。
今現在、これを書いてて、何に謝ってるのかもよくわからない。
ただただ、胸が痛い。

君を泣かせてしまったことも
君を甘やかしてしまったことも、
君の行動の全てが愛しいことも。

苦しいくらいに、
胸が張り裂けてしまいそうなのだ。

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