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どん底は、暗闇と霧と羅針盤

「もう、どん底から這い上がるだけだから」

そんな言葉を残した、約1年前。もうこの苦しさは無いものだと思い込んでいた。

そんなの嘘だった。

どん底は、何度も何度も私の前に来た。

「さあ、頑張るぞ!」「これしたい!見つけた!」

そうやって感じて一歩を踏み出すと、なかなかの高確率で大きな霧がかった空間へと誘われる。前が見えない。どこを歩いてきたのか、その道さえも分からない。ただ、自分がそこにいることだけを認識できる空間へ連れていかれる。

1年前は暗闇だった「どん底」は、霧のかかった空間となって私の前に現れてきては、ここ数日その中で今の自分だけを見続けていた。

そうすると、過去の自分にすがることも、未来への夢や希望や妄想に自分の舵を託すこともできない。

今ここの自分だけと向き合う時間は、孤独で、もやがかかっていて、揺らぐ感情に振り回されるものだった。そんな霧がかった空間の中で、私の足元の今ここにすっと光を灯したものがある。

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1,046字

かみつれ

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