No1『海をあげる』上間陽子
「うらやましい」
この本を読んだ感想だ。
『海をあげる』上間陽子
Yahoo!ニュース|本屋大賞2021 ノンフィクション本大賞
第7回沖縄書店大賞 沖縄部門大賞
第14回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞
「海が赤くにごった日から、私は言葉を失った」
おびやかされる、沖縄での美しく優しい生活。
幼い娘のかたわらで、自らの声を聞き取るようにその日々を、強く、静かに描いた衝撃作。
https://www.chikumashobo.co.jp/special/umiwoageru/
表紙を見た瞬間から、なぜかわからないけど、絶対に読もうと思った本。
鳥肌が立った。
この感覚は外したことがない。
本を読み進めていくと著者のふつふつとした感情が入ってきた。
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傷つくとわかりながら風俗で働く女の子たちへの想い
青い海がどんどん汚されていくやるせなさ
嫌いだけど手を離すことはできない家族への絡み合った愛
幼くして米軍たちに強姦され命を落とした少女への想い
それをエンタメとして扱う都心の人への怒り
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リアルな感情。
どれも等身大で、まだ答えが見つかっていないから、
胸が打たれる。
著者は、
米軍基地を沖縄に押し付けたのにそんなことも忘れて、
「沖縄はいいよね」という人が腹立たしい
と言った。
胸がざわついた。
私もきっと沖縄で出会った人々に
使ったことのある言葉だろう。
あの時、彼ら彼女らは、どんな想いを抱いたのだろうか。
きっとこの言葉だけじゃない。
本当に人を想える人でありたい、と強く願った。
そして、最後にこう書かれていた。
「私もまた、いつか娘に海を渡すのでしょう。
その海には絶望が織り込まれていないようにと、私はそう願っています。
この本を読んでくださる方に、私は私の絶望を託しました。
だからあとに残ったのはただの海、どこまでも広がる青い海です。」
この言葉を見て、
「うらやましい」と思った。
なんて表現をするんだろう、と。
そのまんまの、憤りも喜びもやるせなさも全部そのまんま。
読み終わった瞬間「ああ、表現したい」と想いがあふれ出て、
すぐに心の中を文字にして放出した。
それでも足りず、アクリル絵の具を棚から持ってきて、
ケント紙に思い思いの色を運んだ。
まだまだ足りず、川へ行った。
家の近くに流れる隅田川だ。
水の流れと風が最後に残った、
溢れたものを運んでくれて、
何事もなかったかのようにすっきりして家に帰った。
本当の表現者は自分だけが表現するだけでは飽き足らず、
受け取った者にも表現をさせてしまうのかもしれない。