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動物福祉のニュース、まとめてみます(2025年1月)
こんにちは。大牟田市動物園を勝手に応援するフリーペーパー『KEMONOTE(ケモノート)』を制作しております、キノシタアヤです。
2015年に創刊し、スローペースな活動ではありますが、今年で10周年(!)。このケモノートをつくったことによって、大牟田市動物園さんが長年、積極的に取り組んできた動物福祉(アニマルウェルフェア)について知ることになりました。けれども、社会のなかで「動物福祉」という言葉や考え方がなかなか広まっていかないなあ…と感じています。
動物福祉って…?
動物福祉とは、かんたんに言えば「動物のしあわせ」。しかし、動物は人間の言葉をしゃべることはできませんから、人間たちが、この動物はしあわせであるのかどうか、調べて試してを繰り返し、また勉強しつづけていく必要があります。そして、「動物のしあわせとは何か?」ということを、考えつづけることも必要になります。
そういったことを、この10年、大牟田市動物園に通い、飼育員さん、獣医さん、園長のお話を伺うなかでなんとなく理解してきました。ですが、よくよく考えてみれば、「動物福祉、広まっていかないなあ…」なんて言いながら、私自身、動物福祉について知らない方たちにお伝えできるほどの知識や情報を持っていないことに気づきました。
「では勉強しよう!」と思っても、書籍もすくなく、「動物福祉についての情報です!」(ばーーん!)とわかりやすい記事にもなかなか出会えない…
なぜ動物福祉が広まっていかないのか?それは、動物福祉についての(わかりやすい)情報が少ない、ということも一因ではないかと考えました。
ということで、自分自身の勉強のためにも、まずは最近の動物福祉関連のニュースやトピックをまとめてみることにしました。動物福祉にあまりピンときていない方にも、「ちょっと気になるかも」と思ってもらえるきっかけになれたらうれしいです。
動物福祉についての記事
家畜のストレス軽減に理解を 動物福祉を考えるシンポジウム
新村毅東京農工大教授(動物福祉学)は基調講演で「動物福祉は家畜を認めた上で、生存中の生活の質を高める考え方だ」と説明。日本で採卵鶏に用いる金網のケージは生産性こそ高いが、鶏が好む行動は制限されていると指摘した。世界的な関心の高まりを受け、今後動物福祉への対応は不可避だと総括した。
動物福祉という考えは、「劣悪な家畜の環境を改善させよう」というところから始まったそうです。(そんな基本的なことも、動物園取材から動物福祉を知った自分は最近まで知りませんでした。)
現在では、人間の飼育下にあるあらゆる動物について動物福祉の考えを適用させようという動きになっていますが、家畜の環境・生活の質を良くする、というのは動物福祉の基本だということ。わたしたちもそれを意識して、商品やサービスを選んでいく時代がいよいよ近づいているのを感じます。
動物を使わない動物実験、機械学習モデル開発に成功
動物福祉の観点から化粧品や医薬品の開発にともなう動物実験を減らそうと、世界の化粧品、医薬品メーカーは動物実験代替法を研究しているが、ロート製薬は、名古屋市立大学と共同で、コンピューターの中だけで完結するを動物を犠牲にしない機械学習モデルの開発に成功した。
実験動物のおかげで、わたしたちの健康が守られてきたという事実があります。このことは頭で理解していても、気持ちとしてはつらいものがありました。なので、動物を使わずに実験ができる、「動物実験代替法」の研究が進んでいるとのこのニュースがとても嬉しいです。今後もこの研究に注目していきたいですね。
【オーストラリア】【農業通信】プレミアム牛をどう育てる? 豪州レンジャーズバレー・肥育場リポート
オーストラリア・ニューサウスウェールズ(NSW)州の北東部、人里離れた高原で4万頭もの牛が快適な環境で肥育されている。総合商社・丸紅の畜産子会社レンジャーズバレー・キャトル・ステーションでは、緻密に計画された肥育プログラム、厳密な動物福祉基準、そして厳格な環境保全への姿勢を基盤とし、高品質な牛肉を世界に供給する。気候や市場などの環境が激しく変動する中、高品質の畜牛肥育を追求するにはあらゆるリスクの芽を摘むことが必要だという。巨大肥育場を取材した。【オセアニア農業専門誌ウェルス編集部】
エシカル商品は「これがないとヒットしない」 、日本エシカル推進協議会・生駒芳子会長とFreewill・麻場俊行CEOが語る
エシカルとは、「倫理的な」という意味を持つ形容詞だ。環境や社会、人に配慮した製品を総称して、「エシカル商品」と呼ぶ。エシカルはチャリティー文化が根付く英国で生まれた概念だが、2010年ごろから日本でも広がりだした。
日本エシカル推進協議会でも、エシカルコンシューマーのように、日本初の「エシカル基準」を策定しました。その基準は、「環境」や「人権」「動物福祉」など大別すると8分野に分けられます。
上記の2つのニュースは、「動物福祉についての取り組みを行っている商品を選ぶ」(その逆の商品は選ばない)という消費者の行動に影響をあたえるものだと感じました。
個人的には、これが大げさなことではなく、普通のこととして浸透していくことを願います。
そのほか動物についての記事
日本郵便、爬虫類の配達終了 3月末、小型鳥類も
日本郵便は20日、郵便やゆうパックを含む全ての配達で、生きた爬虫(はちゅう)類と小型鳥類の引き受けを3月末に終了すると発表した。動物愛護に関する機運の高まりを受けた措置で、総務省が同日、約款変更を認可した。
「当然のこと」「逆になぜ今までこれができていたのか」という反応が多く見られました。こういった感覚が普通になっていることに、時代の変化を感じます。
青木さやか「保護猫活動10年で思うこと。努力してもなかなか成果が…。超絶大金持ちになったとして、2億寄付する自分でいられるか?」
「10年前と何か変わってる感じがしないですね体感では。むしろこちらが年を重ねて、ボランティアスタッフも先輩も多くて、5年後に同じ労力、寄付が続けられると思えないですよ」
「そうだね、努力しても成果が出ない、出てる感じはしないね」
記事の中に出てくる杉本彩さんの活動は知っていましたが、青木さやかさんが保護活動をされていることは知りませんでした。動物の保護活動は動物福祉とはまた違ったものにはなりますが、「しあわせな動物を増やしたい」という思いは同じものなのかなと。わたしも保護猫を飼っていることもあり、親近感をおぼえました。
二階堂ふみと考える「動物園のあり方」。京都市動物園の挑戦
朝の情報番組である動物園が紹介された時に、ゲストとしてスタジオにいた二階堂ふみさんが「その展示は動物福祉に配慮されているのか」とコメントしたことがSNSで話題となりました。
これをきっかけに、二階堂さんが動物福祉についてかなり勉強されていることを知りました。いつどのようにして動物福祉と出会われたのか、どうやって勉強されたのか、いつか取材させていただきたいなと妄想しています。ケモノートも、いつか手にとっていただけたらいいな…
昨年10月の記事ですが、ELLEのようなセンスが良く感度の高い読者が多いメディアに、動物福祉についての記事が掲載されたのがほくほくと嬉しく、ここに紹介させていただきます。
動物関連の番組など
石田ゆり子 世界の犬と猫を抱きしめる〜台湾編
石田ゆり子さんが大大大好きなので紹介。この番組はなんとかして観たい……(趣旨がずれ始めている…?)
おすすめの書籍
動物園を考える
とってもおもしろくてわかりやすい本です。開いた瞬間大牟田市動物園が登場してびっくりしました。著者の佐渡友陽一さんは福岡(大牟田)に来られることもあるそうで、わたしもいつかお会いしたいです。
以上です。次回はまた来月にまとめる予定です。まだ動物福祉という視点に出会っていない方にも、見つけてもらえますように。
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木下 綾 キノシタアヤ
大牟田市生まれ、福岡市在住。
フリーでライティング、ウェブ制作などを行う。
2015年より大牟田市動物園を勝手に応援するフリーペーパー『KEMONOTE(ケモノート)』を制作。NPO法人にこりのウェブコラム「にこりの物語」執筆・『Neverland Diner 二度と行けない福岡のあの店で』寄稿・2023年「かみさま、わすれない」発刊
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