近畿地方のある場所につい
■ 感想
「見つけてくださってありがとうございます。」
不穏な帯の一文に吸い寄せられるように手に取った瞬間からもう何かは始まっている。
友人が消息を絶ってしまったので、情報をお持ちの方はご連絡くださいと語りかけてくる語り手。昔あったテレビ番組「TVのチカラ」に似ているなあと思っていたらそっくりな「TVの力」という番組まで本文中に登場し、本の中と現実の壁はゆらゆらと曖昧になりながら都市伝説の類や怪異などと超現実と思われる世界が混然となり、不気味な引力で読者を惹き込んでいく。
「うちにきませんか。かきもあります」
「お山にきませんか。かきもあります。」
とにかく頻発する「かき」が不気味で、どの「かき」を意味するのか後半まで判然としないのも矢鱈と恐ろしい。調べていく怪異譚は全て近畿地方の●●●●●に集約されていくが、伏字がまた恐怖を掻き立てる。雑誌の掲載をまとめ読みしながら事件を追う感覚が楽しいが、巻末の黒い袋綴じは怖すぎて開けられず。
怪異譚は好きだけど、心霊写真やお化け屋敷は拒絶派なので、袋綴じは「見つけていないので、ごめんなさい。かきはいりません」ということで、そっとこのまま閉じておこう。
■ 漂流図書
噂の流布により勝手に増殖していく実態のない恐怖「件」を扱った、小松左京さんの「牛の首」。
長く積んでしまっているけれど、件好きとしては今度こそ読もう。