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ギリシア神話を知っていますか/阿刀田高
■ 感想
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「ギリシア神話を知っていますか」阿刀田高(新潮文庫)P266
ギリシア神話の大まかな流れを掴みながら其処此処に散りばめられた派生的話に高揚したり、より楽しむためのヒントとなる記述も多く更にギリシア神話熱が高まった。
阿刀田さんが仰るように「ギリシア神話は神聖に乏しいかもしれないが、それだけ人間臭く親しみやすい」とはまさに。神々しいばかりにオーラを放つ有名な名画たちの主人公は実はこんな神や英雄で、こんなエピソードも…と知れば知るほど多方面に愉しみは増え、より深掘りして知りたい推し神を調べるべくテンションは上がる一方。
映画や今までに読んだギリシア神話の本で大まかには知っているものの深い知識はまったくない「トロイア戦争」は知りたいことがありすぎてまずはどこから読んでいくか若干パニックになりつつも、まずはもっとしっかりと神々のことを知ってからトロイア物語へと進みたい。
「イーリアス物語」「オデッセイア物語」「神統記」の他にも、トロイア戦争の後日談となるラシーヌ「アンドロマク」は是非読みたい。勝利したギリシア軍のアキレウスの息子ピュロスは敵であったヘクトルの妻アンドロマケと息子を引き取り故郷へと連れて帰るが、ピュロスはアンドロマケを想い、アンドロマケは亡くなった夫を想い、ピュロスの婚約者ヘルミオネはピュロスを想い、勇者オレステスはヘルミオネを想うというハチクロ展開!ややこしい、非常にややこしくてもうこれは読むしかない。
一番心惹かれるのは、星や花に関連する神話たち。その中でも美しい少年アドニスと美と愛の女神アフロディテの話。若くして亡くなったアドニスをどうにか生き返らせてやってほしいと願うアフロディテ。
その願いを叶えることはできないが、せめて花の姿に託して一年のうち数カ月は地上に蘇らせてやろうと、アドニスの血が滲んだ大地から深紅のアネモネが咲き、それを見たアフロディテの涙から薔薇が咲いたという。花弁の命は短く、風(アネモス)の息に吹かれてたちまち散ってしまう。その儚い散りざまにちなんで風(アネモス)の花「アネモネ」と名付けられた。その花の花言葉は「はかない恋」。
キューピッドのちょっとしたミスや、アフロディテの色々問題ありな恋、アドニスの無鉄砲さと、突っ込みどころは山とあるけれど、美しく語ろうとすればどこまでも儚く美しい神話に、平たい族ながら身も心もギリシアどっぷり。
悲劇のオイディプス、父想いのアンティゴネ、無間地獄で岩石を永遠に押し上げては転げ落ちるシシュポス、アリアドネの糸、テセウスとディオニュソス、パンドラの箱と娘ピュラ、巨大船アルゴーの冒険譚、神話と絵画、神話と星座、沢山の点を結んでこれからじっくりと神話と歴史を学んでいきたい。
■ 漂流読書
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■世界の神話大図鑑
神話や聖書は世界の成り立ちや神々の個性ではみ出していく感の凄まじさが読む程に面白く、世界の見え方にも変化が起きてくる。
世界中の神話を掘り下げていけばまたどんな世界が見えてくるのかとても楽しみ。