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ほっとけない神様図鑑


■ 感想

「ほっとけない神様図鑑」(監修)椙山林継(あいうえお館)P160

個性的な神々を面白いエピソードとともに紹介してくれるので、古事記で読んだ情報を記憶として重ねながら、また新しい知識も得られる楽しい図鑑。そして本当にほっとけない神様の多さになんだか癒される。

巻頭には「古事記」上巻の神代の流れを大まかに紹介してくれていて、ここを日々読んでいくと古事記の重点や神様の名前をある程度記憶できるんじゃないかと思うのでこれから繰り返し読んでみよう。古事記では兄弟姉妹が多く登場するけれど、大抵の場合長男や長女と末っ子が活躍することへの言及も興味深かった。

三貴子では長女・天照大神と末っ子・須佐之男命はエピソードにも事欠かず、三貴子に相応しい特別感のある存在だけど、月読命はこれといった逸話もなく、夜の世界を統べる神という漠然としたイメージのみ。もっとひどいのは、天照大神の天孫である邇邇芸命と木花之佐久夜毘売の三つ子たち。

炎の中で出産した長男・日照命こと海佐知毘古と、三男・火遠命こと山佐知毘古はその後、浦島太郎や数々の昔話の素のような要素を沢山含むエピソードや、人間としての天皇の祖となる神武天皇へと繋がっていくけれど、次男である火須勢理命だけ何も特筆されることなく通り過ぎてしまう。燃え盛る炎が最盛期の時に生まれた火須勢理命こそ情熱的なエピソードで描かれそうなものなのに、語られることなく存在するのみ。

末っ子が活躍する話が多い法則については、古代の日本では最後に生まれた子が家や財産などを相続する「末子相続」の習慣かあったことが関係しているのではないかと言われているとか。古典の裏には後の人々では驚くような文化や習慣もあり、当時の思想が色濃く反映されていることを発見できることも面白く、意義深い。

あまりに長い歴史と、八百万と言われるだけあって膨大な数の神様たちなので、一気に覚えることも細かに掘り下げていくのも大変だけれど、これからゆっくりと沢山の神様を覚えながら、ひとつひとつのエピソードに古代日本を感じていけたらいいなと、更に古事記への愛が深まった。

でもひとつ古事記の様々な本や資料を読むたびに思うのは、本によって神様の呼び方や漢字が違うところへのとまどい…。どれも正解ではあるだろうし、古事記と日本書紀の兼ね合いで難しいところもあるだろうけれど、せめて古事記の中ではこの漢字とか統一感があると嬉しいなあ…と。

海外の著名人でもハンマースホイからハマスホイとか、日本語ではないものを無理に日本語発音にすることの難しさは分かるけれど途中で変えないでほしい…と毎回思ってしまう。時代に合わせてネイティブにとかも分かるけれど、慣れ親しんだものからするとTwitterからXに近い違和感が長く感じられて戸惑ってしまう。

古事記も海幸彦表記と海佐知毘古、正式には火照命。火照命から海佐知毘古は、エピソードからの名前の変化だったり、オオナムジから試練を経てスサノオにもらったオオクニヌシは分かるけれど、オオナムジとオオアナムジ表記もあったりで細かいところではあるけれど、古事記の中だけでも統一してもらえませんか?と。

海外の愛称の法則が分からず、突然想像の及ばない愛称で説明もなく表記されるシーンで「誰!?」と戸惑うのにも近い戸惑いがまだ拭えず。これが正式だ!というものはあるんだろうか。それも含めて、これから更に古事記に慣れ親しんでいきたい。

■ 漂流図書

ほっとけない神様図鑑▶️漂流図書

■古事記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集01)

いよいよ本格的な古事記を。前回は目は滑る、文字は怒涛のように右から左に抜けていく状態だったけれど、今回はしっかりと楽しみながら古典の世界の魅力をしっかりと感じられるといいな。

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