山下陽子作品集 未踏の星空
■ 感想
コラージュ作品を写真製版して銅版画作品へと昇華した山下陽子さんの記念碑的作品「OPÉRA AITHER」を起点に、独自の世界観であるコラージュ・フォトプレート・グラヴュールを更に追求し生まれた作品たち。
エッチングとコラージュがひとつに結ばれ昇華された世界は、当然の帰結として一切の齟齬なくモチーフを密に結び、より一層鮮やかに精神のディティールを感じさせ、目の前に広がる世界の遠近を反転させることで新たな視点へと思考は開かれていく。
宇宙空間を自在に移動するアルネブ(兎)の傍で、うさぎ座の最も明るい恒星に寄りかかり午睡に微睡むアリス。花束のように集まり咲く散開星団、宙を縦横無尽に飛び回る精霊シルフ。
詩情溢れる山下陽子さんの世界は幾重にも物語を紡ぎ出す示唆に富み、無数の煌めきに満ちている。
つま先に想いを託す少女の夢は未踏の星空を跳躍し、掌で瞬く。
■ 漂流図書
■改造版 少年アリス|長野まゆみ
宇宙空間を自在に移動する野兎のアルネブと、うさぎ座の一番明るい恒星に寄りかかり午睡に微睡むアリスを見ていたら、群青天鵞絨の天幕の空に星を縫いつける少年アリスに会いたくなった。