見出し画像

最近の話題作が盛りだくさん!ー読書記録 2025年1月 全15冊ー

 1月は全15冊(14タイトル)読むことができました。話題作が中心なので、読書家の皆様ご存じのタイトルばかりが並んでいると思います。それぞれ簡単に振り返りをしたあと、1月のベスト3を発表します。

1月に読んだ本(読了日順)

評価は私の個人的な好みで5段階にしています。

 ★5ーめちゃくちゃ良かった!再読する可能性大。
 ★4ー再読はしないかもしれないが、かなり良かった。
 ★3ー面白くなくはない。
 ★2ー部分的には良いところもあった。
 ★1ー私には良さがわからなかった。

1/6 『小説(講談社)』野﨑まど

評価:★5
 読書初めに選んだのはこの話題作。野﨑まどさんは初めて読みました。読み終わった直後は、何が良かったのか言葉にならず、ただただ涙があふれて自分でも不思議な気持ちになりました。たぶん、わたしも主人公の内海君と同じで、小説を読むことは好きだけど書くことはできないから、彼に共感し、そして彼と一緒にこの作品に救われたのだと思います。
 とにかく読んでもらえればわかってもらえると思いますので、あまり余計なことは言わないでおきます。この作品は「小説は読むだけではダメなのか?」に対する著者からのアンサーになっています。小説を読むすべての人に読んでほしい作品です。

1/7『禁忌の子(東京創元社)』山口未桜

評価:★4
 鮎川賞受賞の話題作。おもしろい!!!の一言です。めちゃくちゃしっかりミステリでした。タイトルの回収も圧巻。探偵役とワトソン役のいる、古典的なミステリです。デビュー作とは思えないほど完成度が高く、話題になるのも頷けます。
 ただ、個人的には結末にもやもやするところがあり、評価は少し下げています。映画のみで原作は読んだことがないのですが、東野圭吾の『容疑者Xの献身』と重なるところがあり、その結末と比較すると、わたしは後者の方が好きなのです。(ネタバレになりそうなので、これぐらいにしておきます。)
 それでも、今年二作目が出版されるようなのですが、絶対読みたいな〜と思えるほど、おもしろかったです!ぜひ、タイトルの意味を考えながら読んでみてください

1/7『婚活マエストロ(文藝春秋)』宮島未奈

評価:★4
 成瀬シリーズを二作とも読んだので、本作も間違いなくおもしろいだろうと思い、手に取りました。その期待を裏切らない、素敵な作品でした!成瀬シリーズとは違って、中年の男女が話のメインになっているので、学生よりも社会人の大人に刺さるのではないかと思います。宮島さんの作品はハッピーエンドだし、くすっと笑えて元気になるし、なにより読みやすいので、読書初心者の方にもオススメの作家さんです。
 わたしも一度だけ、小規模の婚活パーティーに参加したことがあるので、そのときのことを思い出しながら読みました。婚活パーティーの経験がない方は、これを読めば何となく雰囲気がわかるかも…?でも、この作品の魅力は、婚活云々よりも、成瀬シリーズと同様に登場人物たちのやり取りにほっこりできるところだと思います!

1/10『菜食主義者(クオン)』ハン・ガン

評価:★3
 読書会の課題図書となっていたので読みました(でも、その読書会はやむを得ない理由で中止になってしまいました…涙)。興味はあるけれど、なんか難しそうだな~と思っていたので、読書会というきっかけがあってよかったです。
 「精神疾患」や「希死念慮」がテーマというか、物語全体を通してずっとそこにあるように思います。ずーっと重低音で進む感じで、暗いです。
 主な感想は「気持ち悪い」になってしまいます。一編目はちょっと気味悪いぐらいなんですが、特に二編目が気持ち悪さマックスです。でも、気持ち悪いのに、なんか途中からだんだん理解できる気がしてきてしまうのですよね…それもまた気持ち悪い…正直、本作に登場する男性全員に嫌悪感を抱きました。
 その反動もあるのか、女性視点の最後の三編目はよかったです。特に「死にたい」と思ったことのある人は、共感できる部分が多いのではないかと思います。
 気持ち悪いので、オススメはしないのですが、考えさせられる何かがあることは確かです。

1/12『なぜ働いていると本が読めなくなるのか(集英社新書)』三宅香帆

評価:★5
 めちゃくちゃおもしろかったです!!!ほんとうに。どれくらいおもしろかったかというと、読んだ後に興奮冷めやらず、本作未読(しかも一日しっかり仕事をして疲れている状態)の夫に、ニ時間ぐらい熱弁してしまったくらいです。「学生時代は読書家だったのに、社会人になってから本を読めなくなったなあ」と思っている方にはぜひぜひ読んでほしいです!というか、その経験がなくても、興味深い内容だと思いますので、もう全人類に読んでほしいです!笑
 知的好奇心を刺激されまくり、熱くなりすぎて、次に挙げている本もあわせて、noteも書いちゃってます。

 昨年の11月に『「好き」を言語化する技術』も読んでいて、その感想も書いています。

 そのとき、三宅香帆さんっておもしろいことを書かれるなあ、勉強になるなあ、とファンになっていたのですが、『なぜ働』を読んでますます好きになってしまいました。YouTubeも見て、Xもフォローして、noteのマガジンも購読し始めました。最近読んだものだと以下の記事がおもしろかったです!

 さらに、三宅さんが講師を務めるオンラインの有料講座にも参加したり、実は上の中止になった読書会も三宅さんが司会だったり、めちゃくちゃ推しになっています。三宅さんは94年生まれで、わたしは93年生まれなのですが、同学年なこともあり、もう完全にファンです。最近のわたしのXは、本の話か三宅さんの話しかしていないのでは?って感じです。
 本の振り返りから脱線していることはわかっています。でも、あとこれだけ言わせてください。三宅さんの本の紹介が魅力的過ぎて、全部読みたくなってしまいます。三宅さん自身がほんとうにおもしろい!と思って紹介していることが伝わるので、読みたくなっちゃうんですよね…読書好きの同志の皆さん、ぜひYouTubeも見てみてください。

 とにかく、これからも追い続けたい方です。同じ時代に生まれててよかった!!!

1/13『ネガティヴ・ケイパビリティで生きる 答えを急がず立ち止まる力(さくら舎)』谷川嘉浩、朱喜哲、杉谷和哉

評価:★5
 上の『なぜ働』を読んで、勝手に「ネガティブ・ケイパビリティ」と関係があるのではないかと思い、そうは思ったものの、「ネガティブ・ケイパビリティ」について詳しく知らなかったので読んでみました。『なぜ働』との関連については、先ほども紹介した記事を読んでもらえるとうれしいです。

 上の記事には書き切れなかったのですが、パソコンやスマホの普及により「現代社会は仕事がどこまでも追ってくる環境」であるという指摘が本作でされています。その点についても『なぜ働』で三宅さんが言う「半身(はんみ)」で働けない要因だなと理解が深まりました。
 また、新自由主義の浸透により、会社が中間集団(社会と個人の間にある集団)的な役割を担えなくなってきていて、SNSがその溝を埋めているという指摘もかなり興味深かったです。現代社会についての鋭い指摘がたくさんあり、大変興味深いので、『なぜ働』がおもしろかった人にはオススメです!

1/15『ようやくカナダに行きまして(文藝春秋)』光浦靖子

評価:★4
 元高校の英語教師ということもあり、実はTOEIC900なんですが、スピーキングがてんでダメなんですよね…それで英検1級は落ちているのです(夫と一緒に受けて、RもLも私のほうができたのに、夫だけ受かってだいぶ悔しい思いをしました)。留学経験がないこともコンプレックスで、やっぱり英語がペラペラな人や留学に対してずっと憧れがあります。教師を続けられなかった要因の一つに、この話せないことへのコンプレックスがあった、と今となっては思います。
 光浦さんは50歳でカナダに留学されています。やりたいと思ったら、いつからでも始められるんだな、と勇気をもらえました。芸人さんということもあり、語り口もおもしろく読みやすいです。留学に興味がある方だけではなく、これから新しい挑戦をしたいと考えている方にもおすすめのエッセイです!

1/21『いい音がする文章 あなたの感性が爆発する書き方(ダイヤモンド社)』高橋久美子

評価:★5
 中学生のときに2ndアルバム『生命力』をウォークマンで何度も何度も聞いた。そう思うと、私が最初に触れたバンド音楽はチャットモンチーだったのかもしれない、と思う。そんなチャットモンチーの元ドラム高橋久美子さんによる文章論。もちろん文章の書き方についてではあるのだけれど、エッセイのような感じもあって、読みやすかったです。
 「予測変換のせいで、これまで漢字にしてこなかった言葉も漢字にしてしまっている」という指摘がぶっ刺さりました。わたしも「烏滸がましい」とか「我儘」とか、たぶん手書きならひらがなにするところを漢字にしてしまっていたな~と。漢字を使うのか、ひらがなにするのか、はたまたカタカナにするのか、与える印象が違ってくるので、しっかり考えて選びたいなと思いました。それがきっと、自分の文章の「音」を大事にすることにもつながるのでしょう。
 チャットモンチー時代の歌詞についても少し触れられているので、ファンの方も楽しめると思います。文章を書いている人も、音楽が好きな人も、どちらも楽しめる作品だと思います。

1/22『そういうふうにできている(新潮文庫)』さくらももこ

評価:★5
 『なぜ働』で少しだけ引用されていて気になったので読んでみました。妊娠・出産エッセイで、三十年ほど前の出来事が書かれているはずなのに、令和にも通ずることがたくさん書いてあって、かなりおもしろいです!
 三宅さんも書いておられたように、スピリチュアルな部分もあるのですが、わたしはそこにも得心しました。さくらさんは出産が帝王切開になったのですが、その麻酔時に「魂と脳と意識の関係」について理解できたそうで、それをなんとか言語化してくださっています。
 スピリチュアルな部分を置いておいたとしても、とにかくエッセイとしてめちゃくちゃおもしろいです。どうやってこのようなエピソードを覚えておられて、さらに人に読んでもらえる文章に起こせるのだろうか?と考えずにはいられませんでした。たぶん、メモとかされていたのかな?『いい音がする文章』でも、「自分のオリジナリティは日記など人に見せない文章にこそある」というようなことが書かれていました。この2冊を読んだ後から「引き出し日記」というアプリをインストールして、日々の考えたことや思いついたことをメモしたり、三行日記を書くようにしています。きっとそこからエッセイのネタが拾えるはず!
 また自分が妊娠・出産する際に読み返したい作品です。

1/22、23『蜜蜂と遠雷 上下(幻冬舎文庫)』恩田陸

評価:★4.5
 恩田陸さんは、高校生の時に『夜のピクニック』を読んだのですが、あまり刺さらず、それ以来遠ざかっていました(『Q&A』だけはあらすじに惹かれて読みました)。しかし、先ほど紹介した三宅香帆さんのYouTubeで恩田陸特集をされていて、それがめちゃくちゃおもしろかったんです。そこで『チョコレートコスモス』を読みたいなと思ったのですが、それなら先に『蜜蜂と遠雷』を読むべきだろうと思い、手に取りました。

 さすが直木賞と本屋大賞W受賞の作品。久しぶりに物語の世界に没入して読み、ページをめくる時に胸がドキドキしたりしました。続きが気になって、朝早く起きて読んだほどです。なんか、小説って「書き手の影をひしひしと感じる作品」と「書き手の影を感じず、登場人物が自ら物語を動かしているように感じる作品」の大きく二つあると思うのですが、これは後者でした。どちらが良い悪いというわけではないのですが、後者の方が物語の世界に入り込めるな~ということを考えたりしました。
 わたしは全くピアノ経験がないのですが、本作を読んでから、たまにクラシックピアノ曲を聴いたりしてます。ほかの恩田陸作品も、いまなら楽しく読めるかもしれないので、どんどん挑戦していきたいなと思います。

1/25『クスノキの番人(実業之日本社文庫)』東野圭吾

評価:★4
 実は初 東野圭吾です。読まず嫌いというか、有名だけど読んだことのない作家さんがわりといるのですよね。村上春樹もその一人… そんな初 東野圭吾作品でしたが、ちょっと泣きそうにもなったし、読んで良かったです。ほかの作品も読みたいなと思えました。
 主人公や佐治家の話で血のつながりのある家族の絆のようなものを描きつつ、一方で血のつながりだけではない絆についても大場家の話で感じました。そういう意味でもバランスの取れた作品だと感じました。
 ただ、正直、主人公の性格が最初の印象と違いすぎて、それが成長と言えば成長なのかもしれないのですが、若干違和感は残りました。

1/25『サンショウウオの四十九日(新潮社)』朝比奈秋

評価:★4.5
 同じ体を共有する二人の姉妹の物語ということもあり、二人の視点が基本的にはわかりやすく切り替わるのですが、予期せず替わるところがあったりするので、読みにくいと感じる人はいるかもしれません。
 先に紹介したさくらももこの『そういうふうにできている』で「魂と脳と意識の関係」について言及されていると書きましたが、この作品もそれがテーマなのかなと思いました。この作品を読んで、さくらさんの体験とそれを経て考えられたことも、あながち荒唐無稽な話ではないかもしれないと思いました。
 少し暗めの作品ではありますが、わたしは好きでした。

1/26『PRIZEープライズー(文藝春秋)』村山由佳

評価:★5
 めちゃくちゃおもしろかったです!!!村山由香さんも初だったのですが、絶対ほかの作品も読む!ってなりました。
 出版に関わる裏側事情がちょくちょく知れるのもおもしろいですし、なにより主人公の天羽カインのことを好きになってしまったんですよね。こういう作家さんもいるんだろうな~という、まあまあのパワハラ女性なので、そこだけ見ると好きになるわけないのですが、なんかそれも含めて人間らしい人だと思いました(決してパワハラを容認するわけではないですが)。
 ある場面で、自分が間違ったことを言ったと気付いた時に、涙ながらに謝るところがあるんですね。それは、いわゆる「マイクロ・アグレッション」で「無知ゆえの、意図的ではない言葉の暴力」だったわけですが、それに気づいたときにちゃんと謝れるというのはすごく大事なことだと思っているので、それができる彼女に好感を持ちました。
 三宅さんも本作についてのnoteを書いておられて、それも非常におもしろかったです。「賞」という他人からの評価を求める「承認欲求」は、あまりよくないものとして言及されることもありますが、人間としてあって当然のものなんだろうなと思いました。

1/28『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー(早川書房)』ガブリエル・ゼヴィン

評価:★3.5
 ゲームなどの仮想現実の良さ(現実では叶えられない苦しみが救われる部分があるということ)と、現実の「リアルさ」の両方を感じる作品でした。本作はご都合主義のない、かなり「リアル」な作品だと思うのですが、それでもやはり「フィクション」だからこその救いがありました。ゲームと現実の間に、小説があるのかもしれないなーなんて考えたりしました。
 翻訳ということでやはり若干読みづらいうえにボリュームがあり、読了に8時間半もかかってしまいました。はたして8時間半の価値があったのか?と問われると少し微妙な気がして、評価は低めです。ただ、心にとどめておきたい素敵な言葉がところどころありました。

1月のベスト3

 それではいつも通りさくっとベスト3を発表します。

第一位 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか(集英社新書)』三宅香帆

第二位 『PRIZEープライズー(文藝春秋)』村山由香

第三位 『小説(講談社)』野﨑まど

1月の振り返り&2月の展望

 先月14冊だったので、いい感じで読めていると思います。しかし、先月も書きましたが、これだけ読むと振り返るのが大変…そして、ベスト3も選ぶの結構悩みました~
 パートの勤務日がいい感じに空いたのと、夫の仕事が山場で土日どちらもいなかった週があったので、別にどこにも泊まりに行ってないけど、4日間「勝手に一人で読書合宿」をしたりもしました。本当はそのときにもっと読めるはずだったのですが、選んだ本がボリューミーだった(『トゥモロー・アンド…』のことです笑)ので、想定していたより読めませんでした~
 2月は28日間と短いですが、本屋大賞のノミネート作品が発表されるので、全作品読んで、勝手に大賞予想をしたいと思っています。昨年末に大賞予想をしようと決めてから、ノミネート作品の発表をめちゃくちゃ楽しみにしていたので、ドキドキわくわくです!!!いつも20日30日のお客様感謝デーのときに未来屋書店で買うことにしているので、来月全作品読むのは難しいと思いますが、4月の発表までに記事にする予定です。お楽しみにー!
 あと、隙間時間を活用すればもっと読めるのでは?と思ったので、Audibleを2月中試してみようと思っています。読書はもっぱら紙派のわたしが、しっかり試してレビューしようと思っていますので、紙派のみなさま待っていてください!