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読書日記 2023/11/19

アナーキスト人類学のための断章
デヴィッド・グレーバー(高祖岩三郎 訳)

http://www.ibunsha.co.jp/books/978-4753102513/

 ここのところ、時間を見つけては図書館に行って読んでました(持っていないので)。日々の生活の合間に図書館までてくてく歩いてグレーバー先生の檄文に触れる日々は心身を健やかに保つのに持ってこいでした。
 今読むと「予言書か!」と思いもするのですが、前に読んだのがいつか忘れちゃったけど、当時より現在の方が読んでいて堪えたり刺さる部分が多いのは、日本がこのとき書かれていた欧米の状態に追いついちゃったからなのかなと思います。

 本書は、文化人類学者であるデヴィッド・グレーバー氏が、アナキズムと人類学の結合の必要性を訴えるステイトメントの為のメモ書きというか、思考実験が1冊の本になったもの。
 あぁ、これが「ブルシットジョブ」に繋がるのか〜、とか、「官僚制のユートピア」はこれを深掘りしたのか〜と、キラッキラの断片が混ざりこんだまさに断章という本です。その断片をその後ちゃんと研究しては上梓して、というところが本当に信頼できる。このサイクルがもう止まってしまったのが本当に悲しい。人類の損失。

※こちらは、ハンブルク大学で開催された国際会議「資本主義の近代性への挑戦」の中で、シリア北部のロジャワというクルド人自治区を訪問して、そこで実践されていたことと今まで氏が参加した過去の運動について語っています。言っていることは、本書に書かれていることとほぼ変わらないので(ブレない、最高)、未読の方はこちらを見てみてからあたっても良いかも。

 史上最大のジェノサイドが起きていて(今いたらどれだけ大騒ぎしてくれたであろうか)、止められないまま1ヶ月以上が過ぎ、グレーバー言うところの1%たちはそれを支持したり、指を加えて見てるだけのこの狂った状況は、コロナ禍で様々な問題や差別が起こったけど実は今まであったものが露呈しただけだった時のように、実は現代は近代と地続きのまま(ネタニヤフとバイデンの白人権力者によって暴かれた終わっていない植民地主義と
人種資本主義)だったということが露呈しただけとも言える。

 グレーバーの言葉が今も今までもこれからも必要であるのは、問題が起きている時や、解決しない課題に対して、単純化に抗うことを示し続けてくれるから、ということが大きい。人は自分の手に負えないことや目をそらしたいことが起きた時にすぐに単純化してわかったふりしてやり過ごしたり、自身を正当化する言い訳やすり替えを用意する。それをロジックを組み立てたうえで「バーカ」と言ってくれる先生。
 先進国と後進国という線引きどころか(本当に傲慢)、国境の撤廃を望み、世界に存在するボトムアップや合議(正しい意味で)によって意思決定がされる集落や民族を見習おうと教えてくれる先生。
 99%の我々がひーこら言って生き延びている中でも光を見失わないように、絶えず光を示し続けてくれた先生(こう書いてるとケイン樹里安氏とダブって泣けてくる。そう言えばケイン氏もグレーバーが亡くなった時に「グレーバー!?…」と投稿されていましたね)。
 結局、大きな戦争を何度経ても、文明が進化しても解決しないのは、従来のシステムが99%に資するものではないから、ということが良く分かりました。では、この99%が連帯してひっくり返すにはどうしたらいいか、ということを考えていきたい。そのうえで、グレーバーの言う「アナキズム」が重要になってくるのだと思います。「個」を失わないこと。99%が皆仲良く手をつなぐ必要はなくて、それぞれの「個」が「個」であるために自分と同じように他の「個」への侵害を認めないこと、それが連帯であり、アナキズムであるのだと思います。ここを間違えるとアナキズムと新自由主義(個人主義)の重なる部分もあり(あるよね?、この辺をまだうまくまとめられないのだけど)明後日の方向へ行ってしまう人もいると思うのだけど、属さず群れず個を貫いた果てに声を掛け合いたい感じです。

 また読もうかな、と思ったのは高島鈴氏の「布団の中から放棄せよ」を再読したことも大きかった。どちらも未読の方がいらっしゃったら併読をお薦めします。というか、どちらも未読でこれから併読できるって、既読者からするとむっちゃ羨ましい。

そんなところで以上!お腹減った!

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サトマキ
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