ああ、王国よ
ああ、惜しい。実に残念だ。
もし仮に『キングダム』が40巻くらいまでに秦の天下統一まで描いて完結していれば、世間での評価はもっと高かっただろうに。
50巻が出るタイミングで実写映画化が決まったのが公表されたのは、一見めでたい。しかし、それでも私は言いたい。
ヤングジャンプ編集部様、いくら雑誌の売り上げのためとは言え、『キングダム』を無理やり超スローペースで展開させるのはひど過ぎませんか? 作者の原泰久先生がお気の毒です。
…まあ、今さらそんな事言っても手遅れか…。ああ、王国よ、王国よ。
とはいえ、私は王欣太氏の『達人伝』の方が好きなので、別にいいや。
漫画家であれ、小説家であれ、役者さんやミュージシャンであれ、「代表作」が一つしかないというのは結構キツい状況ではないかと、私は思う。『こち亀』の秋本治氏は『ミスタークリス』というもう一つの代表作があるからまだ良いが、『コータローまかりとおる!』の蛭田達也氏は『コータロー』以外に代表作がない。『バスタード』の萩原一至氏に至っては、読者から「『バスタード』しか描けない」などと批判されるくらいだ。
要するに、私は原氏が蛭田氏や萩原氏のように「他に代表作がない」状態になってしまう可能性があるのが残念なのだ。せっかくの漫画家としてのキャリアが「それしかない」というのは、表現者として致命的弱点になり得るのではなかろうか? たった一曲のヒット曲だけで細々とご飯を食べている演歌歌手みたいな悲哀をかもし出すような事態になるのは、何だか嫌だなぁと思うのだ。もし私がプロの漫画家ならば、色々な作品をどんどん描いて世間に認められたいと思うだろう。
『ゴールデンカムイ』の作者、野田サトル氏は前作『スピナマラダ!』のリメイク『ドッグスレッド』の新連載のために、『金カム』を適度な長さでキレイに終わらせる必要があった。そう、『キングダム』の轍を踏むような事態に陥るのを避けるべきだ。いくら人気があるからと言って、安易に長々と続ければいいってもんじゃないんだよ。
さて、我が心の師である永野護氏はどうなのかというツッコミがあるかもしれないが、永野氏はあくまでも「デザイナー」であり、『ファイブスター物語』という漫画はそのデザイナーとしての成果を発表する場であるのが、他の漫画家さんたちと一線を画する点である。つまり、他の漫画家と同じ基準で論じられるような存在ではないのだ。同じ事は多分、荒木飛呂彦氏にも言えるだろう。
デザイナーとしての永野氏の代表作やその他成果はFSSだけではないから、蛭田達也氏や萩原一至氏と一緒くたにするのは乱暴だと思うのね。
【Kingdom Come - Get It On】
ロンリー・チャップリンならぬ、なんちゃってツェッペリン。