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【読書日記】シヴォーン・ダウドのデビュー作が良すぎた 2025/1/26


シヴォーン・ダウドのデビュー作が良すぎた

すばやい澄んだ叫び/シヴォーン・ダウド

この作者をご存知ですか?

イギリスの作家、シヴォーン・ダウドを知ってますか?人権擁護活動の他、少年少女の権利や生活向上のため尽力したという思いやりのある女性。活動の合間に子どもたちに物語を書き、その経緯の中で作家になられました。数々の児童文学賞を受賞し、『ボグ・チャイルド』ではカーネギー賞を受賞しています。

これまで未訳だったデビュー作『すばやい澄んだ叫び』が2024年12月に発売され、この度じっくりと読ませていただきました。彼女の作品を読むと、いつも心が浄化されるんですよ… 今回も素敵な作品でした。

現代にもあるヤングケアラーや格差社会の問題を描いており、重みのある作品です。見て見ぬふりをしたり、ごまかしたりして生きていませんかと指摘されている気がするのです。

シヴォーン・ダウドですが、実は既に乳がんで他界されているのです。47歳だったそうで、本当に残念でなりません。こんなにも胸をうつ作品を世に出してくれて、ありがとうございました。

イチ推し作品『ロンドン・アイの謎』必読

アスペルガー症候群の少年テッドと姉カットの物語。遊びに来たいとこのサリムがひとりで観覧車ロンドン・アイに乗り込むも、1周して帰って来たら消えてしまったというミステリー。サリムを見つけるため姉弟がロンドンの街を奔走します。

もはや全国の学校の図書館に配布したいレベルで大好き。主人公テッドが可愛いすぎてきゅんきゅんが止まらない、もう抱きしめたい!

子供たちの成長ぶり素敵すぎるのです。つらい現実、人間関係の悩み、ストレスを抱えているのは大人たちだけでなく、子供たちも一緒。決して広くはない世界ではあるけども、思い悩み苦しんで一歩踏み出す勇気がカッコ良いんですよ。

そして謎解きの真相も切れ味鋭く、ラストにむけては超爽快!子どもたちだけでなく、全世代にオススメできる一冊。

続編『グッケンハイムの謎』も愛せる

ニューヨークのグッケンハイム美術館、火事の騒動に紛れて貴重な絵が盗まれてしまった! 容疑者になってしまった叔母を救うため、可愛いテッドたちが少年探偵団となり捜査に奔走する物語。

ダウト亡き後、ロビン・スティーヴンスが魂を受け継いで手掛けた続編。主人公テッド、姉カット、いとこサリムが再び魅力を放ちます。不器用ながらも人を思いやるテッドの成長や、繊細な子どもたちの葛藤と勇気に心打たれます。

さらに今回のミステリーはより本格的にバージョンアップ。容疑者リストを整理し、論理で事件を解き明かす展開は児童書の枠を超えています。情報がつながる興奮と感動に、一気読み必至です。

ロンドン・アイの謎、グッケンハイムの謎 装画も可愛い!

新しく出会った本たち

すばやい澄んだ叫び/シヴォーン・ダウド(東京創元社 2024/12/25 発売)【今週イチ推し】

働かない父、病死した母、幼い弟妹の世話をしながら生きるヤングケアラー15歳少女の物語。

物語が進むにつれ試練がどんどん酷くなっていく。衝撃的なミステリー展開にもなり、胸を抉られる真相にどうしようもない無力感が襲われます。それでもシェルの希望を信じて前を向く姿に心が浄化されるんですよね。

人生どんな苦難があってもきっと乗り越えられるって、魂まるごと癒してくれる作品です。

僕たちの青春はちょっとだけ特別/雨井湖音(東京創元社 2024/12/11 発売)

特別支援学校を舞台にした本作、軽度の知的障害を持つ少年少女たちの成長を描く、心温まる青春ミステリーです。主人公の架月は無類の素直さを持ち、疑問を突き詰める性格で、学園で起きるゴミ散乱事件や学友失踪事件などの謎に挑んでいく。

登場人物たちの純粋さに胸が打たれるんです。煩悩がなく、素直で正直な彼らを見ていると、その無垢な心に涙が自然とこぼれちゃいますね。私のイチ推しは莉音ちゃん。もう彼女の幸せを願わずにはいられない。

心が疲れたとき、ピュアな物語に癒されたい方におすすめ。日常の中で忘れがちな優しさを思い出させてくれる作品でした。

秋葉断層/佐々木譲(文藝春秋 2024/11/25 発売)

30年前の未解決事件が再び動き出す…そんな秋葉原を舞台にした本作は、街の文化と歴史が丁寧に描かれた警察小説。かつての電気街から、アニメやゲーム文化の象徴へと変貌を遂げた秋葉原の風景に、親近感や新たな発見を得られます。

地道でリアルな警察捜査にめっちゃ惹かれる!じっくりと紡がれる会話や地味な作業の中に、警察小説ならではの深いリアリティと緊張感が詰まっています。まさしくプロの刑事としての鋭さが光りますね。

秋葉原好きや警察ドラマが好きな方に、ぜひ読んでほしい一冊でした。

その嘘を、なかったことには/水生大海(双葉社 2024/11/20 発売)

嘘をテーマにしたミステリー短編集。何処にでもありそうな日常を切り取った物語ばかりで、妙に身近なところが怖かった! どの作品にも意外な真相が組み込まれていて、そのままショートドラマになりそうですね。

嘘をつく理由って、何か醜い欲望を隠すためなんですよね。隠し事、虚栄心、保身、独占欲、復讐など、嘘の本質を見事に描いてます。自分にも身に覚えがあって寒々しい気持ちになりました。


各作品の詳しいレビュー


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