雪のカーテン
今年秋の個展を終えてから、あまり人とも会わず、創作の探求に分け入っていました。何かを語らず、発信もせず、自分の中に滞留させておける時間というのは至福ですね。他人の評価や批評を気にせず、ああでもないこうでもないと表現を更新していける自由と気楽さがあります。でも分け入れば分け入るほど、時に「自分はどんな感情を持って絵に向き合っていたのか」がわからなくなり、目指す方角が定められなくなることも。
収拾がつかなくなりかけた最中、地元で今年の初雪が観測されました。11月7日の夜遅くの観測だったらしく、翌日のニュースで知りましたが、あたらしい季節の到来にふと気が緩みました。なぜなら今年は雪かきの大変さを脇に置いて、暑すぎた夏や初秋からの移ろいを喜んでいたからです。そうしているうち、絵が生まれました。
Snow Curtain (2024) と名づけた絵。今年の冬を静かに迎え入れる、初雪のカーテンを思い描きました。
たくさんの雪のかけらは、途方もないひとかたまりの何かを砕き、断片にしたものが自分のもとに降ってきているように感じることがあります。抱えきれない大きな物事も、小さな断片の集まりでしかなく、どの断片からでも向き合うことができるということを、比喩的に思わせてくれるのです。そんな風に、物事は無数の接点で溢れているのに、細分化できない巨大な何かと錯覚してしまう人の苦悩を考えます。
降り始めの雪のように、その苦悩が地面に落ちてはどんどん溶けて消えていくさまを想像したくなります。そして静かになびく雪のカーテンが、苦悩で煮詰まった脳を冷ます風として象徴できたらと思います。