何故ブランド価値を自ら下げてしまうのか?
日経電子版の記事【ポケモンに学ぶ事業の広げ方 ブランド、収益より重視 奔流eビジネス】は、事業展開とブランド価値の関係をポケモンの事例を通して明快に論じており、とても参考になります。
そもそも、ブランド価値は、収益とは別の価値基準であって、収益の向上とブランド価値の向上が必ずしも相関関係にない事は明らかです――収益を向上させるような事業展開、施策であっても、ブランド価値を向上させるように働く場合もあれば、逆にブランド毀損になってしまう場合もある。そして、収益的な貢献のない施策であっても、ブランド価値を大きく向上させる場合がある――。
肝心な事は、ブランド価値が向上することは、長期的には収益の向上に繋がり、逆に毀損されれば、長期と言わず直ちに収益が悪化する場合もあり得るという事ではないでしょうか。ブランド価値の維持向上に気配りした経営を行う事が基本的に重要であることは間違いありません。
▶ブランド価値と収益
●収益の向上する施策⇨ブランド価値の向上する場合
⇨ブランド価値の毀損する場合
●収益に直結しない施策⇨ブランド価値の向上する場合
⇨ブランド価値の毀損する場合
にもかかわらず、往々にしてブランドを毀損するような施策が選択されてしまう理由は何なのでしょうか?――
▶ブランド毀損に繋がる施策が選択されてしまう理由
(1)『事業パートナーへの過信』・・・海外事業などでパートナーを過信、
ひどい場合は丸投げ状態になると、自社ブランドは到底守れない。
(2)『事業パートナーへの妥協』・・・例えば、ショッピングモール型EC
サイトでサイト運営企業の方針が自社の考え方と相容れないような
状況は、ブランド防衛の危機。
(3)『アライアンスの詰めの甘さ』・・・アライアンスなどで、自社
ブランドの取り扱いを細部まで詰めて、適切な提携事業をデザイン
しなかった付けが回ってくる。
(4)『経営環境悪化への妥協』・・・例えば原材料費の高騰、人件費の
高まりなどに直面した時、ブランド価値を毀損するようなサービス
の低下、値上げなどを実施してしまう。
(5)『軽率な広告手法の採用』・・・SNSが隆盛を極める時代に、広告の
影響は良くも悪くも大きく出る。自社の広告が不適切なサイトに
掲載されたり、意図せずステルスマーケティングに陥ったりする
様々なリスクへの危機管理不足。
(6)『短期の利益追求』・・・社内の競争、悪化する業績への危機感など、
様々な理由からブランド価値への配慮が欠落してしまう。
(7)『安易な伝統軽視』・・・顧客の支持基盤となっている伝統的な価値を
見誤り、革新(イノベーション)の名のもとに自社のプロダクト
(モノ・サービス)に変えてはならない変更を加えてしまう。
(8)『自社ブランドへの無理解』・・・経営トップ、従業員に自社ブランド
の価値がどこにあるのかの正しい認識が欠如している。
(9)『ESGの軽視』・・・ESGの社会的な高まりへの認識の不足から、
チェックの漏れが生じ、不適切な施策を採用してしまう。
など
ブランド毀損に繋がる施策が選択されてしまう理由は、他にもまだまだころがっているはずで、企業は、ブランドの存在目的『ブランドパーパス』を経営トップから個々の従業員に至るまでしっかりと共有し、ブランド毀損のリスクを常にチェックしながら、ブレない施策を打ち続ける必要がありそうです。